慢性硬膜下血腫
【症状】
典型的には軽微な頭部外傷の後,3週間から2,3ヶ月の期間で脳と頭蓋骨の間にゆっくりと血液が貯留してくる病気です。頭痛・精神活動の遅鈍・記憶障害・認知症様症状や片麻痺・失語・尿失禁などが起こってきます。60歳以上の男性(特に多飲家)に起こりやすいですが,全年齢層で発生します。
【原因と病態】
発生の原因については現在でも明らかではありませんが,古くは1851年にVirchowによって炎症性のものと報告されましたが,1914年にTrotterが外傷性であると主張し,現在でもこの説が最も有力です。しかし受傷直後には出血が無かったにも関わらず,なぜ徐々に出血し増大していくのかは,様々な研究にも関わらず現在でも解明されておりません。また外傷の既往が無い方が約20%存在します。
このことより以下のことが分かります。
①:受傷直後にCT scanを施行し出血が無くとも,1ヶ月後位に出血による症状が出現する事がある。
②:出血・増大の機序が不明な為,現時点では薬での治療が困難である。
その為手術による治療が必要となります。
スライド経過
受傷直後、6週間後、手術直後、3ヶ月後
【診断と治療】
CT scanを行うことで診断が可能です。構造の正確な把握や合併症の有無の検索の為,MRIを併用する場合があります。
スライドMRI
約3分の1の方で自然治癒がある為,症状が無く血腫量が少ない場合,外来で経過観察することがあります。
しかし症状が出現している場合,脳への悪影響がある為手術による外科治療を行います。多くの場合手術は局所麻酔下に約5cmの皮膚切開を行い,頭蓋骨に小さな穴を開けて硬膜下血腫を洗浄除去します。多くの施設では,血腫洗浄後にチューブを留置して治癒の促進を計りますが,再発率は10%前後で,約5%に急性硬膜下血腫等の合併による後遺症や死亡が報告されています。再発(再増大)は1ヶ月以内に起こりやすいとされます。
当施設では20年以上にわたって,チューブを留置しない方法と術後管理により,急性硬膜下血腫の合併は無く,また再発率も5%以下となっております。完全に治癒する期間は個人差があり,半年くらいかかることも稀ではありません。
実際の手術は,ほとんどの場合局所麻酔下で前頭から頭頂部に約5cmの皮膚切開を行い,15mm位の骨孔を開けて行います。硬膜(脳を包む膜)を切開すると硬膜とくも膜の間にある被膜に包まれた血腫があり,被膜を切開して血腫を除去し内部を暖めた生理食塩水で洗浄します。血腫が完全に除去された後,骨孔にはセラミックでできたボタンを入れて,穴をふさぎます。約30分で手術は終了しますが,その後3日間安静にしていただきます。脳の戻り具合によりますが、退院は1〜2週間後で,その後外来にて経過観察します。




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