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絨毛性疾患について

絨毛性疾患とは

絨毛性疾患は、妊娠時の胎盤をつくる絨毛細胞(栄養膜細胞またはトロホブラストと呼ぶ)から発生する病気の総称で、①胞状奇胎、②侵入胞状奇胎(侵入奇胎)、③絨毛がん、の主な3つの病気があります。

胞状奇胎とは

水ぶくれとなった絨毛細胞が子宮内に充満し、あたかも「いくら」や「ぶどうの房」の様相を呈す疾患です。約500妊娠に1回の割合で発生するといわれています。近年、妊娠数の低下に伴って減少傾向にあります。
胞状奇胎は精子と卵子の受精の異常によっておこり、母親の卵子由来の核(DNA)が消失し、父親の精子由来の核のみから発生(雄核発生)する全胞状奇胎と、父親からの精子2つと母親からの卵子1つが受精した3倍体から発生する部分胞状奇胎(胎児共存)とに分類されます。
胞状奇胎の肉眼像
胞状奇胎の肉眼像

胞状奇胎の診断と治療

胞状奇胎の診断は、経腟超音波検査と、血中または尿中hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)測定で行います。hCGは妊娠性ホルモンとも呼ばれ、正常妊娠でも上昇しますが、絨毛性疾患ではさらに高値を示します。確定診断は、子宮内容除去術後の病理検査によります。

胞状奇胎の治療は、まずは子宮内容除去術(胞状奇胎除去術)を行い、約1週間後にもう一度子宮内容除去手術を行い、胞状奇胎が完全に除去されたかを確認します。
手術後は定期的に外来通院していただき、基礎体温表や血中hCG値をフォローします。hCG値の下降が良好で、正常値まで下がった場合(経過順調型)であれば、次の妊娠や分娩に与える影響はありません。治療終了後は原則的に1年間避妊していただき、その間に異常がなければ妊娠を許可します。しかしhCGの下降が順調でない場合(経過非順調型)、後に述べる侵入奇胎や絨毛がんが続発している可能性があるので、精密検査が必要になります。

侵入奇胎・絨毛がんとは

非常にまれな病気でありますが、胞状奇胎のうちの約10%は侵入奇胎を、約1%は絨毛がんを続発すると言われています。妊娠性ホルモンであるhCG値が下がりきらない場合は、これらの病気である可能性があります。
多くの侵入奇胎は、胞状奇胎術後の6ヶ月以内に発生するので、定期的な外来通院と血中hCG測定で発見できます。絨毛がんは胞状奇胎後のみでならず、正常分娩・流産・人工妊娠中絶など様々な妊娠の後にも起こることがあるので、妊娠終了後に異常な性器出血が長期間持続する場合は、過去に治療を受けていた婦人科を受診することをお勧めします。

侵入奇胎・絨毛がんの診断

侵入奇胎は、子宮の壁(筋層)の中に胞状奇胎の細胞が侵入して腫瘍を形成するもので、いわば“前がん状態”です。これらのうちの約30%の症例は、血行性に肺に転移します。子宮筋層内の病変は、経腟超音波検査やMRI検査よって発見することが可能であり、肺病変はCT検査で見つかります。胞状奇胎後に子宮には病巣が認められないのに肺のみに病巣を認める場合(転移性奇胎と呼ぶ)や、hCG値が高値であるのに病巣がはっきりしない場合(奇胎後hCG存続症と呼ぶ)もありますが、基本的には侵入奇胎として扱われます。
絨毛がんも侵入奇胎と同様に子宮の筋層内に腫瘍を形成しますが、増殖や進展のスピードが侵入奇胎よりも早く、悪性度の高い腫瘍です。子宮病巣の検索には、超音波検査やMRI検査が用いられます。また絨毛がんは約30%の症例で多発性肺転移を伴うと言われており、さらには肺のみでならず肝臓や脳、腎臓など全身に転移する可能性があるので、全身のCT検査も必要です。
多発性肺転移の胸部CT像
多発性肺転移の胸部CT像

侵入奇胎・絨毛がんの治療

侵入奇胎・絨毛がんの治療は、化学療法(抗がん剤)を中心に行います。侵入奇胎・絨毛がんとも抗がん剤が非常によく効くので、抗がん剤で完治することが可能です。侵入奇胎や絨毛がんは20-30代の若い方に多いので、治療後の妊娠を希望される場合は、化学療法のみで治療を行います。
侵入奇胎の場合は1剤の抗癌剤(メソトレキセート、アクチノマイシンD)あるいは2剤の併用による化学療法、絨毛がんの場合は強力な多剤併用化学療法(メソトレキセート、アクチノマイシンD、エトポシドの3剤が中心)を行い、難治例には子宮摘出術や転移病巣の摘出を含めた集学的治療を行います。
妊娠希望がある場合は、治療終了後の1年間は避妊および厳重な経過観察を行い、再発徴候がなければ妊娠を許可します。