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紺野医師 米国フィラデルフィア 留学記

こんしん便り’15 秋 〜アメリカ建国の地より〜

LOVEモニュメント

光陰矢の如し.日本をたってから早くも3カ月になろうとしている.ここフィラデルフィアは,連日35℃近くで強い日差しであった夏から,この町に特有の強い風で色づいた木々の葉が舞い散る秋へと変わった.すでにサマータイムも終了し,午後5時まえには夕暮れとなる.ただ幸いなことにまだ寒いと感じる日は少ない.昨年は史上一番の寒波が押し寄せたと聞いたが,今年は暖冬になるらしい.

‘Philadelphia’とはギリシャ語で兄弟愛の意味である.この地の歴史は1682年,Quaker教徒のWilliam Penn (1621-1670年)がイギリス領であった当時のアメリカに町を築きフィラデルフィアと名付けたことに始まる.1776年7月4日,イギリスからアメリカが独立を宣言し13州からなる新しい国家が誕生した.その日は,町中に独立宣言の採択を知らせる自由の鐘(Liberty Bell)の音が高らかに響き渡ったとされている.1970年ニューヨークに代わりこの町が首都となり,1980年ワシントンDCが首都として完成するまでの10年間に大統領府,最高裁判所,軍部,上下院両議会などが整備され置かれていた.

Thomas Jefferson University
フィラデルフィアはこのような歴史的な背景だけでも訪れる価値のある町だが,それ以外にも町中に点在する多くの美術館や博物館群は魅力の1つである.なかでも観光の目玉はフィラデルフィア美術館とバーンズ・コレクションである.フィラデルフィア美術館はアメリカ国内でも有数の所蔵数(22万7000点)を誇っているが.訪れたときは印象派展が開催されていた.Claude Monet(1840-1926年),Pierre-Auguste Renoir(1841-1919年),Edgar Degas (1834-1917年)など印象派を代表する作家たちの作品を鑑賞することができた.なかでもDegasの作品はバレエやサーカスの一瞬の演技を対象とし,周囲の光によって際立させる表現で際立って見えた.Vincent Willem van Gogh(1853-1890年)の作品「Sunflowers:ひまわり」(世界に7点あるひまわりのうちの1つ)もこの美術館の所蔵品の代表作であり.その鮮やかな色使い,1つ1つの筆跡が認識できる強いタッチには迫力があった.バーンズ・コレクションは個々の展示室自体がArtである.部屋中心の絵画を左右対称に取り囲む別の絵画,壁の金属装飾品と木製家具という構成(アッセンブル)の展示室がつづいている.混雑時には入場制限がかけられるほどの人気で要予約制であるが,フィラデルフィアを訪れた際にはぜひ立ち寄ってほしい美術館である.

Jefferson Hospital
フィラデルフィアでの文化・芸術に関しての話は尽きないが,現在の仕事についても触れておこう.小生はThomas Jefferson University,神経内科・神経免疫研究部門で働いている.本校は1825年にJefferson CollegeのMedical Departmentとして創立された歴史ある大学である.Thomas Jefferson(1743-1826年)は,日本人にはなじみが薄い人物であるが,アメリカ独立宣言の主要な執筆者でアメリカ独立の父の1人とされ,後に第3代アメリカ合衆国大統領に就任した人物である.建国から150年間の歴史に名を残す4人の大統領の1人としてダコダ州にあるThe Mount Rushmore National Memorial ParkのRushmore山に胸像になっており,さらには2ドル紙幣の肖像にもなっている.この2ドル札は正式に流通している紙幣であるが,アメリカ人であっても見かける機会が非常に少なく,この紙幣を手にした者は幸福もしくは不幸になるといった都市伝説的な話もあるくらいだ.アメリカ滞在中に1度くらいはお目にかかれるだろうか?(でも不幸はごめんだ).

Jefferson Hospital
話がそれたが,研究室ではAbdolmohamad RostamiGuang-Xian Zhang両先生の下,神経免疫疾患の病態の解明,治療法の開発について研鑽をつんでいる. Rostami A.M.教授が神経内科・神経免疫研究部門を統括する教授である.多くの日本人研究者を研究室に受け入れて指導した経験から日本人の性格を理解され,われわれにとても寛容に接してくださる.留学直前の小生の英語力は英会話教室の先生をして「アメリカの中学生レベル」(ガーン!)と言わしめたが,教授曰く“All Japanese researchers can't speak English in the first time .”だそうである.気持ちが救われたが,この言葉に甘んじていていけない思いインターネットを使った英会話レッスンを毎日25分間であるが受講している.

Zhang G.X.先生は研究部門の教授であり研究のテーマや方向性を指導してくださっている.研究のテーマは多発性硬化症の病態解明と治療法であり,疾患モデルマウスや患者検体を用いて研究をしている.自己免疫疾患の治療方針は,大きく分けると「病態のKeyとなる細胞や分子の抑制」,「障害組織の回復促進」,「免疫異常の寛解」になる.それぞれに研究プロジェクトが組まれ週に1回リサーチミーティングで活発な討議が行われている.このような環境で学べるということだけでも留学の意義は達成されたといってもよい.
まだまだ,研究に関しては見習い中であるが,1日も早く必要な技術と知識を吸収してこれらのプロジェクトに貢献したい.小生は,免疫異常の寛解をテーマとするチームに配属されているので,多発性硬化症だけでなく,他の免疫疾患の治療にもつながるようなヒントを得て帰国したいと考えている.
後に留学の機会を与えていただいた藤岡教授と,それぞれに業務多忙ながらも,快く留学へ送り出していただいた医局員の皆様に心から感謝を申しあげます.
Jefferson Hospital

Jefferson Hospital

Jefferson Hospital

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