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排尿障害

排尿にいたる過程は、まず腎臓で作られた尿が膀胱に蓄えられ(蓄尿)、溜まった尿を体外へ排出されることである。このいずれかの機能に問題が生じると排尿障害が生じます。蓄尿に異常を来すと頻尿(夜間頻尿)、尿失禁、尿意切迫感、残尿感といった症状が出現します。排出異常は、注射器を例えると理解しやすい。出口を塞ぐといくらシリンジをおしても、注射液は排出できません(前立腺肥大症状や尿道狭窄などの下部尿路閉塞)。一方カテーテルチップのように出口が広くてもシリンジを押さなければ、うまく排出できません(低緊張性膀胱など膀胱収縮力の低下)。

LUTS:Lower urinary tract symptoms

最近はこれら排尿障害の諸症状の概念としてLUTS(Lower urinary tract symptoms、下部尿路症状)があります。LUTSは刺激症状と閉塞症状とにわけられる。おおむね前者は蓄尿障害、後者は排出障害と同義です。刺激症状の代表的な訴えである頻尿もその原因は多岐に及びます。閉塞症状は主にBOO(Bladder output obstruction、膀胱排出閉塞)が原因です。LUTSを訴えて来院した患者さんの、これらの障害を鑑別する必要があります。

LUTSの評価

LUTSの客観的評価に国際前立腺症状スコア−(International prostatic symptom score: IPSS)とQOL indexを用いることができます。IPSSは刺激症状と閉塞症状の程度を評価する7項目の質問から構成されています。IPSSの合計スコア−が0~7点を軽症、8~19点を中等症、20~35点を重症と判定します。検尿は、排尿症状診断の基本的検査であるのでぜひ行って頂きたい。膿尿は肉眼的にも十分確認可能で、意義としては尿路感染の存在が示唆されます。残尿を伴ったり、悪性腫瘍や結石に伴う複雑性尿路感染の可能性も考える必要があります。
さらに可能であれば超音波検査により残尿を確認することをお勧めします。超音波検査では、非侵襲的に残尿と前立腺体積を同様な方法で概算できます。水平断で得た膀胱または前立腺の縦径と横径、矢状断での前後径をcm単位でかけ合わせ、この1/2が残尿量または前立腺体積とみなしています。尿流の測定は尿流測定器がなくても、排尿量と排尿時間が分かれば平均尿流量は把握できます。頻尿の訴えに対しては排尿日誌をつけてもらうことで客観的な評価が可能になります。
前立腺癌の存在にも留意すべきです。前立腺癌は血中前立腺特異抗原(Prostate specific antigen:PSA)の測定と触診によりスクリーニングできます。前立腺癌は直腸診により、骨あるいは石様の硬結として触知できます。

注意すべき患者さんの訴え

問診は診断の上で最も重要な事項である。外来診療で、まぎらわしい訴えもあるので紹介します。

おしっこが出ない

尿閉の場合は下腹部を触診すれば膨隆し、苦悶表情を認めます。しかし、無尿を同様に表現してくる事もあります。この場合は浮腫の有無が診断の上で重要です。また膀胱炎症状をこのように訴える事もあります。「すぐいきたくなるがでない」と訴えるのである。これも排尿痛の存在や混濁尿を確認して鑑別できます。

おしっこが近い

夜間の頻尿であれば前立腺肥大症をまず念頭におきます。また、多尿による頻尿や膀胱炎などの刺激症状の訴えもあるが、まれに腹圧性尿失禁をこのように表現してくる事があります。これは意図的に、頻回に排尿して失禁を防いでいるのをあたかも切迫性尿失禁のように表現しているのです。

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