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対象疾患

虚血性心疾患

心臓は1日に約10万回動いています。常に動いていると多くの酸素が必要になるため、血液を供給する大きな血管(冠動脈と言います)が3本あります。動脈硬化や血管の病気により血液の流れが悪くなると胸の違和感、痛みが出現するようになります。特に糖尿病や高脂血症に罹患している方や高齢者においては冠動脈が狭くなり、狭心症や心筋梗塞になることがしばしばあります。疑いのある患者さんは、心臓カテーテル検査や心臓CTにて冠動脈を検査し病変がある場合は治療が必要です。病変が1-2か所の場合は心臓カテーテルにより直接病変にステント治療を行いますが、病変が3か所や部位によっては冠動脈バイパス術が必要になります。

冠動脈バイパス術は全身麻酔下で行い、胸(前胸部や左胸部)を切って行いますので患者さんにはストレスがかかりますが、一度に、また、確実に心臓の血液不足を解消できます。したがって、70歳代までの患者さんが対象になりますが、時には80代の患者さんにも行い、元気に回復されています。バイパス術とは、病変部に手を付けないで新しい迂回路を、患者さん自身の血管で作成する方法で、手術時間は約4-6時間です。心臓が動いたまま行う場合と心臓を止めて行う方法がありますが患者さんの心臓の強さでどちらが可能か判断いたします。
虚血性心疾患
術後は、集中治療室に2泊3日、その後は一般病棟で約2週間のリハビリテーションを行い退院となり、その後は抗血小板剤の内服が必要になります。決して危険な医療行為、手術ではなく、狭心症や心筋梗塞においては、世界的にも標準的な治療であり、多くのエビデンスを持つ方法ですので安心してお受けになってください。
虚血性心筋症
虚血性心筋症

心臓弁膜症

心臓にある4つの弁(大動脈弁/僧帽弁/三尖弁/肺動脈弁)のうち、いずれかに障害が起き心臓に負担がかかった状態をいいます。弁の開閉は1日におよそ10万回繰り返され、心臓は1日5000リットル以上もの血液を毎日送り出し続けています。
そのため弁の故障は、心臓にとって重大な問題です。
主な疾患について解説していきます。

1.大動脈弁狭窄症

大動脈弁(心臓の出口にある扉)が十分に開かなくなり、狭い出口から無理やり血液を送り出すため心臓や肺に負担がかかります。また、心臓から送り出される血液量が不足するため、脳や腎臓をはじめ全身の臓器血流が不良となります。症状として、胸痛、息切れ、息苦しさが出現したり、めまいやふらつきから気を失って倒れたり、腎不全を起こすことがあります。

2.大動脈弁閉鎖不全症

大動脈弁(心臓の出口にある扉)が開いたあと完全に閉まらず、心臓から送り出された血液が再び心臓に逆流し戻ってきます。戻ったぶん余分に血液を送り出さなければならず、心臓や肺に負担がかかります。心臓が徐々に拡大し弱っていきます。症状として、めまい、息切れ、息苦しさが出現します。

3.僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁(心臓出口の一つ手前の扉)が開いたあと完全に閉まらず、心臓の中を血液が逆流するため、心臓や肺に負担がかかります。僧帽弁自体の損傷により発症するケースと、心筋梗塞、心筋症あるいは不整脈(心房細動)などにより心臓が拡大し変形した結果、僧帽弁で逆流を生じるケースがあります。症状として、息切れ、息苦しさ、湿った咳、下肢のむくみが出現します。

4.三尖弁閉鎖不全症

三尖弁が開いたあと完全に閉まらず、心臓の中を血液が逆流するため、心臓に負担がかかります。多くは僧帽弁異常、不整脈(心房細動)、肺疾患が原因となり2次的に弁逆流を生じたものです。症状として、下肢のむくみ、腹部不快感、倦怠感、肝障害が出現します。

*感染性心内膜炎

血液中に紛れ込んだ細菌が弁に付着、繁殖した状態です。弁が破壊された結果、閉鎖不全(逆流)を生じます。また弁に付着した菌塊はもろく、ちぎれて心臓から出ていくと重大な 脳梗塞の原因となります。

大動脈疾患

大動脈とは心臓から全身に送り出される太い血管のことをいい、こぶのように膨らんでいるものを大動脈瘤、また大動脈の動脈壁に亀裂が入り、血管の内側の壁が剥がれるものを大動脈解離といいます。

大動脈瘤

自覚症状は通常ありませんが、破裂した際には胸部痛、背部痛、腹痛など破裂した部位での症状が出現し、死亡率が非常に高いといった特徴があります。主な原因は、高血圧や動脈硬化です。健康診断や他の疾患の検査によって見つかることがあります。動脈瘤は薬物治療などでサイズが小さくなることは基本的にはありません。動脈瘤のサイズにより手術の必要がありますので、発見されたら心臓血管外科などの専門医に相談する必要があります。

大動脈解離

突然発症する疾患の一つです。突然、胸部痛や背部痛が出現し、死亡率が高いといった特徴があります。心臓の近くで解離したものはStanford A型、それ以外はStanford B型と分類されます。Stanford A型は、心タンポナーデや心筋梗塞や急性大動脈弁閉鎖不全に陥る危険性があり、緊急手術の必要があります。一方でStanford B型に関しては、持続する背部痛や腹痛や下肢痛など、劇的あるいは強い症状がある場合には手術が必要となります。いずれの場合でも救急疾患のひとつであり、突然の激痛が出現した場合には救急車で専門病院への搬送が必要です。

治療法

大動脈治療は、薬物治療、外科的治療(人工血管置換術)と血管内治療(ステントグラフト内挿術)があります。急性大動脈解離(Stanford A型)に関しては、緊急で人工血管置換術を行います。動脈瘤の場合には、形状によりますが動脈瘤のサイズが50~60mm以上で手術を考慮します。
治療法

外科的治療

全身麻酔下に開胸、開腹を行います。大動脈解離や胸部大動脈瘤の場合には、人工心肺を使用し人工血管に置換します。2014年からはオープンステントグラフトを使用し、手術時間の短縮や合併症の減少に努めております。オープンステントグラフトは、一度に治療が困難な広範囲の大動脈瘤や、残存した大動脈解離の拡大に対して二期的にステントグラフト治療や外科治療を行いやすくするデバイスであり、当院では積極的に使用しております。
これらの治療法は、病気の性質や動脈の形態により、メリット・デメリットがあります。当院では、それぞれのスペシャリストが話し合い、患者様にとって最良の治療法を提供いたします。

血管疾患

閉塞性動脈硬化症

動脈硬化は全身の血管で起こり、動脈狭窄や閉塞を来たし血流障害を起こします。心臓への血流障害である狭心症・心筋梗塞や、脳への血流障害である脳梗塞は有名ですが、同様に足への血流障害を起こす病気が「閉塞性動脈硬化症」です。症状は足への血流障害で生じますので、「歩行」での障害が出てきます。早期では長い距離の歩行や階段や坂道の上り下りなどの運動時にふくらはぎや太ももに痛みが生じます。休むと痛みが取れ、歩くとまた痛くなることから「間歇性跛行」と呼ばれます。病気が進行すると痛みが生じる歩行距離がだんだん短くなります。さらに悪化すると寝ている時でも痛みがある「安静時疼痛」や、小さな傷が治らず「皮膚潰瘍」になり、黒く腐敗する「壊死」になることもあります。

治療で大切なのは、まず生活習慣病(喫煙、糖尿病、高脂血症など)の治療です。そして歩行運動の繰り返しで血流を増やす運動療法や、血液を固まりにくくして細い血管が詰まらないようにする薬物療法を行います。それでも症状が強く、生活に支障をきたし、重症になっていく場合は手術治療を行います。血管が詰まったから手術するのではなく、それによる症状で困るから手術するということです。患者さんの症状を聞いて、必要な治療を組み合わせて行います。手術治療はバイパス手術など外科的手術(切って治す手術)と、カテーテルによる血管内治療があります。必要ならその両方を同時に行い、両方の利点を活かす「ハイブリッド(組み合わせ)手術」を行います。当院では手術室に血管撮影装置を備えた「ハイブリッド手術室」を完備しており、患者さん一人ひとりに最適な、低侵襲の治療を提供することができます。

下肢静脈瘤

下肢の静脈血流は重力に逆らって下から上に流れるため、逆流を防ぐ一方向弁がたくさんあります。しかし長年の立ち仕事や妊娠などの腹圧の上昇、肥満や炎症などで弁の機能が悪くなり、50歳代では半数の人には逆流が出てきます。徐々に進行して、主に下腿部の表面の静脈が膨らんで見られるようになるのが、一般的な静脈瘤です。他に皮膚表面の細い静脈が拡張して、網目状やクモの巣状になるものもあります。

美容上(見た目)の問題もありますが、立っているとむくみや疲れがひどくなり痛くなる、寝ているとき朝方にふくらはぎが痙攣するなどの症状が出てきます。さらに進行すると皮膚炎や皮膚潰瘍ができて、皮膚科での治療だけではなおらない状態になります。

美容上の問題も含めて、症状が気にならない程度なら治療の必要はありません。軽度の症状はふくらはぎを適度に圧迫する弾力ソックスなどによる圧迫療法や足の運動、マッサージなどで改善します。症状が気になって治したいと思う場合や、悪化してきた場合は外科治療を考えます。

当院では高周波による血管内焼灼術(カテーテル治療)を行っています。これで原因となる静脈の逆流を止め(以前は静脈抜去術でした)、さらに膨らんで目立つ静脈瘤は適宜2-3mm程度の小さな傷から切除します。翌日に合併症(深部静脈血栓)がないことを確認する必要がありますので、原則的に一泊入院で行っています。当院は血管内レーザー焼灼術実施・管理委員会の実施施設認定をうけ、実施医の資格を持った医師が治療を行っています。

胸部・腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療

胸部・腹部大動脈瘤に対して、足の付け根の動脈から血管内の操作でステントグラフト金属の補強(ステント)のついた人工血管(グラフト)を留置する治療法です。ステントグラフトとは金属の補強(ステント)のついた人工血管(グラフト)です。傷は主に鼠径部の二箇所(数cm程度)のみで、従来の腹部を大きく切開して人工血管を移植する開胸・開腹手術に比べて、侵襲(手術のストレス)が少ないことが特徴です。

高齢の方、心臓や脳に持病がある方、呼吸器機能が悪い方、これまで胸部・腹部の手術を受けたことがある方など、通常の開胸・開腹手術に伴う危険性が高い場合に良い適応となります。当院はステントグラフト実施認定施設であるとともに、実施医・指導医が在籍し全ての企業製造ステントグラフトが使用可能な施設です。
末梢血管
末梢血管

先天性心疾患

先天性心疾患に対する外科治療

正常な血行動態に是正される手術の総称である1) 根治術と、根治術の適応にならない際に施行される2) 姑息術に分類され、さらに根治術は、左右両方の心室を使う形態に修復する手術である①解剖学的根治術と、肺動脈心室を使わず体循環心室のみの1つの心室形態に修復する手術である②機能的根治術(Fontan手術)に分類されます。一期的修復が難しい心疾患や機能的根治術に向けた段階的治療アプローチとして姑息術を先行して行うことで、良好な循環動態成立に向けた条件を整えます。
1) -①
解剖学的
根治術
心室中隔欠損症・心房中隔欠損症に対する欠損孔閉鎖
Fallot四徴症、房室中隔欠損症等
動脈管開存症、完全大血管転位、総肺静脈還流異常等(新生児期)
1) -②
機能的根治術
Fontan手術
2) 姑息術 肺動脈絞扼術:肺血流増加で肺や心臓へ負担が多い場合
BTシャント手術:肺血流減少でチアノーゼや肺動脈の発育が乏しい場合
Glenn手術:Fontan手術前、段階的に上半身血流のみ肺動脈に直接還流
・Fallot四徴症、房室中隔欠損症等において、肺血管発育や心室機能が乏しい場合
肺動脈絞扼術やBTシャント手術+α
・新生児期修復の負担を回避するため、部分的修復を先行し成長後に根治術を行う
Norwood手術を含む大動脈弓修復を含む複合手術
同じ疾患名であっても、個性と同じで全く同じ心臓形態はありません。お子さま各々の心臓形態、状態・条件に合わせて、最適な治療方法・時期を選択致します。複数回の治療が必要になる場合もありますが、お子様の成長を見守りながら治療に携わってまいります。

また手術成績の向上に伴い、成人期に達した患者さんが急増しています。成長・加齢に伴う修繕手術が、普段の生活を改善させるケースも増加傾向にあり、小児心臓外科のみならず成人心臓外科にも精通・十分なトレーニングを積んだ外科医が対応します。

お問い合わせ先

東邦大学医療センター
大森病院 循環器センター(心臓血管外科)

〒143-8541
東京都大田区大森西6-11-1
TEL:03-3762-4151(代表)