大腸・肛門外科

閉塞性大腸癌に対するステント治療

大腸癌患者様の約10%に腸閉塞を初発症状として来院される方がいます。「閉塞性大腸癌」に対する治療は、1)病巣切除を1期的に切除して人工肛門の造設を行うか、2)まず拡張した腸管の減圧を目的に人工肛門を造設してから時期をずらしてⅡ期的に病巣の行うのが基本方針とされています。本邦では1990年台に経肛門減圧チューブが開発され、人工肛門回避を目的にこの減圧チューブを使用されてきましたが、その効果はあまり高いものではありませんでした。ここで紹介する大腸ステントは、欧米で開発された形状記憶合金で症状の緩和はもちろんのこと拡張した腸管に対しても十分な減圧をはかることが可能となり、結果的には人工肛門も多くの症例で回避可能となっています。このステント治療は、本邦では2012年に保険適用されており、当院では消化器内科と連携して「閉塞性大腸癌」の方には、積極的に大腸ステント留置術を行い、人工肛門回避に向けた手術治療に取り組んでいます。
大腸ステントは、網目状の金属製(Ni-Ti)で形状記憶合金でできています。その留置方法は、レントゲン透視下に大腸内視鏡を併用し、まず細いガイドワイヤーで閉塞部を突破しガイドワイヤーをガイドにステント留置器具を閉塞部に通過させた後にステントを展開します。減圧力は経肛門チューブよりも強力とされ、ステント留置後は食事も摂取できることが最大もメリットです。ただし、ステントトラブル(腸管穿孔や逸脱、再閉塞など)も少ないながら発生する可能性も報告されています。大腸ステント減圧後の手術では、体に優しい腹腔鏡手術も可能な場合もあり、従来の人工肛門造設術が必須であった時代から考えると低侵襲手術へつなげられる処置の1つであると考えています。

閉塞性大腸癌

矢印部分が大腸癌。癌による閉塞で、口側腸管に拡張がみられる

大腸ステントの留置の実際(1)

閉塞部にガイドワイヤーを通してステントを留置(A,B)
留置後の造影剤による確認。閉塞は解除され、口側に造影剤がスムースに流れるようになった(C)

大腸ステントの留置の実際(2)

大腸閉塞をきたしてから10日後、S状結腸癌に対して腹腔鏡手術を行うことができ、人工肛門も回避できた。