検査を通して患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献する臨床検査部
 
コラム ~検査にまつわるお話です~
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いろいろな採血管

病院において最も良く行われている検査といえばやはり、血液を使った検査です。先生の診察を受けて、「じゃあ血を採って少し調べてみましょう」となることも多いでしょうし、学校や職場での健康診断の際には必ずと言っていいほど採血を行っています。
ところで、採血をされているとき、採血を行う臨床検査技師や看護師が採血管を何本も使っていたり、採血管の長さやふたの色がひとつひとつ違っていたりする様子に気づいた方はいるでしょうか。「こんなにたくさん血がいるの?」「小さい容器に何本も採らないで、大きな容器に血を採ったら良いのでは?」と思ったことはありませんか。今回は血液を採取する採血管についてのお話です。
臨床検査に用いる採血管は、抗凝固剤が入っているものと入っていないものに大きく分けられます。抗凝固剤とは文字通り、血液の凝固を防ぐための薬剤です。抗凝固剤が入っていない採血管に血液を採取した場合、室温で30分ほど置くと血液は完全に凝固し、血餅(血球成分と凝固因子が集まり固まったもの)と血清(血餅以外の血液成分)に分かれてしまいます。検査室では検査の種類によっていくつかの抗凝固剤および採血管を使い分けているのですが、ここからは具体的に検査名を挙げながらお話していきます。
一つめは血算、主に赤血球・白血球・血小板の数やヘモグロビン濃度を測定する検査です。当院ではピンクのキャップの採血管を用いており、EDTA-2Kという抗凝固剤が入っています。EDTA-2Kは血液の凝固に必要なカルシウムイオンを除去することで血液凝固を防ぐ、大変強力な抗凝固剤です。血球成分が固まると採血管の中に偏りができ、正確な値を報告することができなくなるため、強力な抗凝固剤を使います。
二つめは生化学検査、主にNa・K・Clなどの電解質やコレステロールなどの脂質を測定する検査です。当院では黄色のフィルム栓の採血管を用いており、ヘパリンリチウムという抗凝固剤が入っています。この採血管を遠心し、血球(赤血球・白血球・血小板)と血漿(血球以外の成分)に分けた後、上層にある血漿部分のみを用いて検査を行います。当院では血漿を用いて行っている生化学検査ですが、血清を用いて行っている施設もあります。ヘパリンリチウムは血液の凝固に必要な凝固因子の働きを抑えることで血液凝固を防いでいます。カルシウムイオンを除去するタイプの抗凝固剤は、生化学検査の試薬の働きを邪魔してしまうため、こちらの抗凝固剤が使われます。
三つめは血糖検査、血液中の血糖(ブドウ糖)値をみる検査です。当院では灰色のフィルム栓の採血管を用いており、フッ化ナトリウムという抗凝固剤が入っています。カルシウムを除去するタイプの抗凝固剤で、血漿部分を用いて検査を行います。血液中のブドウ糖は採血後少しずつ減少していく(解糖作用)のですが、フッ化ナトリウムはこの解糖作用を阻害する働きを持っているため、血液中のブドウ糖の量を体内と同じに保つことができます。そのため血糖検査に用いられるのです。
四つめは凝固検査、血液の凝固作用が正常かどうかを見る検査です。当院では水色のキャップの採血管を用いており、クエン酸ナトリウムという抗凝固剤が入っています。カルシウムを除去するタイプの抗凝固剤ですが、その作用はEDTA-2Kと比べると弱いです。血漿部分を用いて検査を行います。この検査では採血量が重要で、血液とクエン酸の混合比を9:1とすることが求められます。検査の過程でクエン酸の抗凝固作用を計算に入れているため、この割合が変わると正確な測定ができなくなり、実際の値と異なる結果が出てしまいます。
いかがでしたでしょうか。以上は当院検査室で扱う採血管のほんの一部で、他にも様々な採血管があります。今後採血の機会があったときには、少し注目して見てみてください。

尿・一般検査室 奧村美咲

[参考]