感情表出と再発率について

感情表出と再発率について


感情表出(Expressed Emotion:EE)とは

みなさんは、感情表出と言う言葉をお聞きになったことはありますか?この言葉も、あちこちで伝えられていることなので、すでにご存知の方も多いのではないかと思いますが、「再発」や「ストレス対処」には欠かせないお話なので、この場でもお伝えしておきたいと思います。
さて、私たちは、生活の中で、沢山の人と関わっています。皆さんが、お仕事をされていれば職場の上司や、仲間、学校に行っていれば、先生や同級生、先輩、後輩・・・プライベートの友人・・・個々で上げたらきりがないくらい沢山の人と関わっているのです。そして、その中でも、多くの時間を共にするのが、ご家族なのではないでしょうか?過度のストレスを避ける環境調整を考えるうえで重要なものの1つに、家族がご本人に接する際感情表現の仕方、いわゆる感情表出(Expressed Emotion:EE)があります。

再発と感情表出

1960年代の英国では、退院した患者さんは家族のもとで暮らした方が再発しにくいはずだと考えられていました。ところが、実際に調べてみると家族と一緒に暮らすよりも家族と離れて暮らす方が再発率が低いことがわかりました。その後の研究からどうやら家族が本人に接する際の感情表現の仕方が影響を与えているのではないかと考えられるようになりました。家族は本人の理解者として大きな存在ですが、身近にいるだけに接し方によっては本人にとってストレスとなり、かえって再発を引き起こしやすくなるというものです。対人関係における「程よい距離感」が家族間でも、大事なのです。

感情表出(EE)と統合失調症の再発率

感情表出(EE)と統合失調症の再発率
統合失調症である場合、接し方で、二つの大事なポイントがあります。
ひとつは、ご本人さんに対し、批判的でないこと、もうひとつは、ご本人さんをかばいすぎてしまうことです。どちらも、ご本人さんに対して「良くなって欲しい」と思うご家族の気持ちが根底にあることが多いのですが、この二つの接し方は、ご本人さんに大きな負担となりかねません。

更に、最近では、家族だけでなく、看護師などの医療従事者の感情表出もご本人の再発に影響を与えることがわかってきました。
統合失調症の再発と家族の感情表出の関係を調べたいくつかの研究結果を示したのが下記のグラフになります。本人に対する家族の感情表出に批判、敵意、過度の感情的巻き込まれなどが強くみられる場合を「EEが高い(高EE)」といい、そうでない場合を「EEが低い(低EE)」といいます。高EEの場合は低EEに比べ再発率が著しいことが見て分かります。


これまで、私がお会いしたご家族にも、ご本人に対し、「気持ちの問題」「怠けている」と批判的になったり、逆に、「病気になったのは育て方のせい。だから出来ることはしてあげたい。」と言うように、ご本人が出来ることまで手を出してしまうお母様などは多かったように思います。また、本人の、病状や、気分に巻き込まれているご家族(これは医療者にも多分にあることですが)にもお会いしました。とは言え、多くの場合、ご本人と、接する時間がもっとも長いのはご家族だと思います。当然、そのような気持ちや状態になってしまう事だってあることでしょう。

家族の感情表出が高くなる原因

さて、家族の感情表出がどのようなときに高くなってしまうかと言うと、本人の症状の激しさやそれが慢性的に続いている場合が1つです。これは家族にとって相当のストレスになりますから、批判的な感情があらわになることが少なくありません。


2つめは、病気に対する知識の不足です。症状のために起きられずにいるのを単に怠けているのではないかと思い込み、小言を吐いてしまうようなことはよくみられます。


3つめは、他の家族の協力が得られずに1人で問題を抱え込んでしまう場合です。これは主に母親が1人で問題を抱え込んでしまうことが多いようです。父親は、全く理解や協力を示さないか、本人の症状が悪くなると責められる場合がよくみられます。このような場合の家族のEEはやはり高くなってしまうのです。


その他、将来への不安、経済的、あるいは肉体的負担が重かったり、専門家からの援助が受けられないと高EEの原因となります。

思春期に病気と診断されたご家族の方へ

また、思春期や病気と診断されて間もないご家族では特に、ご本人に対して、将来への期待(あるいは不安)が高まる時期でもあり、それだけに困惑や、落胆が大きいものと思われます。
高EEの状態に陥りやすいですが、ご本人は、思春期と言う成長過程と、病気の二つを乗り越えなくてはならない状態に置かれています。この時期に、症状のために苦しみに加え、自分の状態が家族から批判されたり、否定されるようなことが起こった場合、苦しみは二重になります。
また、過保護になりすぎてしまった場合、思春期の成長過程を「病気」を理由に妨げかねません。思春期ではまた、周囲の状態や、言葉に非常に敏感でもあります。自分自身が周囲にどう見られているのかということにも同様に敏感です。


そういった意味でも、接し方は非常に難しいと思います。ご本人に対してのご家族の思いあってこその接し方をしているご家族が大半だと思いますが、時々立ち止まって振り返ってみることも大事です。
東邦大学医学部精神神経医学講座
〒143-8541 東京都大田区大森西6-11-1 TEL:03-3762-4151
COPYRIGHT 2008 IL BOSCO ALL RIGHTS RESERVED.
本サイトは、厚生労働省・平成19年度障害者保健福祉推進事業「精神障害者の早期発見、早期治療のための地域生活支援体制のあり方に関する調査及び機能分化したリハビリ施設の試行的事業」(東邦大学)の補助金により作製されました。