こころの病について

メニュー

統合失調症の治療と援助

統合失調症の治療と援助
統合失調症の徴候が1回現れたらできる限り早く、高校の保健室や大学の医務室や学生相談室や医療機関に相談すべきです。最近では大手予備校でも学生相談機能を持っているところもあります。

それらのスタッフは迅速なケアが必要であることを理解していることでしょう。そして、できるだけ早くメンタルケアの指導を受けることが重要です。迅速にこの過程に乗ることができれば予後は大変よくなります。

しかし実際には精神病徴候のある人の多くは病院に受診するまで約1年程かかるものです。その間にも障害が悪化するでしょうし、世界中の研究では未治療期間の延長は統合失調症初発後の長期予後を悪化させるとしています。
心理社会的な影響と病気による影響を最小にするために治療は必要です。自傷の危険や人を傷つける危険のある者は入院を要する可能性もあります。しかし、幸運なことに治療は可能なのです。

統合失調症は約30年前のように恐れられていた疾患ではなくなっています。早期診断、早期介入、配慮ある薬物管理、定期的な診察、適した居住環境、就業、リハビリテーション施設により、長期予後が本当に良くなっています。統合失調症の治療は簡単な道のりではありませんが、できる限り早く適切な援助をすることが長期予後の改善に必要です。

治療は良く訓練された専門家グループによって行われるべきであり、良い専門家とは以下に示す条件を備えた人達をさします。まず医学的疾患として統合失調症を治療でき、患者さんの詳細な病気の歴史を聞く姿勢があり、その病気によっておきている問題を説明でき、抗精神病薬に関する知識を持っていて、定期的に薬を見直し、通院継続が可能な場所に診療施設があり、必要に応じて治療の方法を選ぶことができ、患者の生活全体の福祉に興味があり社会資源を調べられ活用できる資質のある人達のことです。

統合失調症は治療可能です。以下にそれぞれの治療方法の説明をします。

投薬治療

統合失調症の人の大多数は薬によって劇的に改善します。精神疾患はあなたの気合だけで治るというものではありません。統合失調症のある多くの人は病気を改善するために定期的に内服しなければならなりません。とてもたくさんの統合失調症治療薬が存在します。副作用がないことがベストですが、治療開始直後は副作用がしばしば経験されます。患者さんにとって最も副作用の少ない薬を探すために何回かの内服変更が必要である場合があります。このような薬を指導されたとおりに内服し、定期的に観察し副作用についてもきちんと主治医と相談し薬剤選択することが重要であり、勝手に中断することは避けなくてはなりません。それは病気の再燃を減らしたり、今後の生活の質に反映されることであるからです。薬はあなたを助け、あなたがより理性的、合理的であることを促します。

精神療法

統合失調症について造詣が深い専門家によって行われる精神療法はしばしば有用です。あなたの家族、親しい友人が治療に同行することは、あなたが治療のサポートチームを得るためにも有用です。このような精神療法は医師が行います。また心理士、精神保健福祉士、看護師などのアドバイスも大変有用です。これは、患者さんが自分の問題を理解することを助けると思われます。

教育

家族や他の援助者も統合失調症について学ぶべきです。この障害は脳の病気であり、本人や誰かの行いや失敗のせいではありませんし、環境のせいでもありません。学ぶことはデイケアや自助グループや作業所や仕事への復帰やレクリエーション活動など、本人にとってどのような手助けが可能であるかを模索することにもつながります。

家族カウンセリング

統合失調症という病気は患者に対しても家族に対しても大きな感情的ストレスを引き起こすものです。精神保健の専門家に相談することは、その疾患の治療に対し、とても助けになるものです。患者さんは家族や友人の援助を得ることも多いものです。援助者である家族らと医療機関に行きカウンセラーと話すことは、援助者も一人ぼっちではないことを気づかせ、力づけることでもあるのです。

入院治療と外来治療

急性発症ではしばしば入院になりがちであり、退院後も定期通院が必要であることが多いものです。入院観察による評価や診断が必要であったり、スタッフの指導による内服が始まったときなどにはとりわけ入院を要すことが多いようです。

リハビリテーションプログラム

退院後にリハビリテーションプログラムに入ることは大変な支援になると思われます。患者さんは社会技能をつける必要があり、SST(社会技能訓練)は居住や余暇活動や仕事の機会に結びつく機会を増やしうる治療です。とりわけ、精神疾患の予後をよくする効果があり、それは重症者にとっても効果が期待できます。

自助グループ

家族やピアカウンセラー(話を聞く訓練をうけた人、その人自身も患者である場合もある)や患者グループであり、多くの国で見られます。似たような経験を通して知ることは、援助や教育に関してなくてはならない資源になっています。時が経って、あなたがそのグループで得たことを人に与えるようになるかもしれません。これらのグループは恥を感じたり嫌な気分をせずに分かち合える貴重な場です。それはとても気が楽になる体験になるかもしれません。

栄養と休養と運動

統合失調症から回復するまでは忍耐を要します。多くの回復過程にとって大事なことはバランスのとれた食事、十分な睡眠、定期的な運動であり、毎日の生活習慣についてのアドバイスを求めることも重要です。

電気痙攣療法

この治療は自殺の危険が迫っている時や薬物療法で充分な効果が得られない場合に選択されます。この頃は痙攣を起こさない方法も開発されています。

治療の実話

インドのAさんは25歳の男性です。数ヶ月前、声が聞こえ始めその声は彼の行動を操作し始めました。
家族や近所の人は彼が狂ったと思ったそうです。彼は宗教的指導者のところに連れて行かれ、宗教者は悪魔の魂を彼の体から取り除く儀式を行ってくれました。その時のAさんはほとんど死人のようでした。

しかし何かが間違っていると彼の父親は感じ、父親はAさんを15kmはなれた保健所に連れて行きました。医師はAさんに注射をして、彼の病歴を聞いて統合失調症と診断しました。医師は1時間くらいかけて家族に対する病状説明をし、薬の必要性や治療効果について話しました。
医師はAさんがいつもしている農業も医療的指導の下で続けることを助言しました。医師はまた、定期的な経過観察のために訪問スタッフを依頼しました。

Aさんは現在仕事を続け家族と幸せに暮らしています。彼は毎日薬を飲んでいます。(この報告はAさんの父親自身によって公にされました。)

患者を援助することの重要性

この例のように、希望はあるのです。
患者を援助することは大変重要で、患者を取り巻く家族、友人、専門家やデイケアスタッフや精神保健福祉士や場合によっては牧師などが援助に関わります。
援助グループの人間関係を作ることは大切なことです。統合失調症の人が彼の家族や社会からの援助を要するとき、援助を受けるまでに多くの時間がかかることがあります。その人ははじめのうちは病気を認めず治療や援助を拒否するかもしれません。そのときはあきらめず、第一段階として、いつでも援助者がいることを保障してあげることです。

時にはその人の近しい人だけが病気の徴候に気がつくことがあります。その人が奇異な行為や異常体験を自覚するより先に周囲が気づくこともあります。幻覚は本人にとっては現実であり、不毛な議論をすべきではありませんが、あなたには何も見えないことを説明してあげてください。症状の記録を手伝ってあげてください。処方の効果などについてもです。その情報を医師と共有してください。家族や友人にとって重要なことですが、患者自身に内服でよくなっていることを伝えて、力づけてあげてください。これはコンプライアンス(内服遵守)をあげる主な助けになります。

チームで役割分担をして患者をケアする理想の体制

患者さんと交流する全ての人は前向きであるべきで、支持的な応援者であり忍耐強くなくてはなりません。とりわけサポートチームの構成員はそうあるべきです。
患者が達成可能な目標を描くことを助けてあげてください。毎週日記や記録リストを眺めていれば、何かしらいいことがあり、何が成功し、どこを改善すべきかが分かると思います。うまくいったことに注目し、患者さんが正しくできたことを賞賛してください。食事、睡眠など小さい生活のことでいいのです。

ケアにあたる人の心の健康を保つことも大切です。それはケアにあたる時間はとても疲れるので、援助者も自分をケアすることが必要なのです。患者との関係に全てを注ぐ必要は無く、チームで分担することにより需要を満たすことが可能になります。

お問い合わせ先

東邦大学医療センター
大森病院 メンタルへルスセンター イル ボスコ

〒143-8541
東京都大田区大森西6-11-1
TEL:03-3762-4151(代表)