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スティグマを減らしましょう

スティグマを減らしましょう
精神疾患に対して偏見を持たないようにしましょう。どのような病気でもそうですが、病気を恥だと考えること(スティグマ)についても、あってはならないことです。

20世紀半ばまで薬物療法が無く、統合失調症が不治の病と考えられていた時代があったことは事実です。しかし、その後の薬物療法の進歩により、悲観的な時代は20世紀までのこととなりました。よくみられる疾患を治すために、通院したり内服することに関しては他の疾患と変わりありません。精神疾患への気づきと教育によって統合失調症のスティグマを減らすことは重要な課題です。なぜなら、精神障害に対する無知に基づくスティグマと偏見は不当に患者さんやその家族に損失をもたらしかねないからです。そのために、何ができるでしょうか。問題は、それぞれの心の中にあるようです。

まず固定概念や先入観の問題があります。悪く言えば人を色眼鏡で見るということです。いくつか例を挙げれば、無意識に個人のしゃべり方や服装や外見の特徴から人々をグループ分けすること、あるグループや部活のメンバーについて属するグループの特徴から判断すること、人を役職や学歴など1つの特徴でしか判断できないこと、テレビドラマや映画の先入観で病気の人を見てしまうことなどがあげられます。

思い当たることもあるかもしれません。同様に同じ病気の人が皆同じ性格ではあるわけがありません。ただ、固定概念を強化してしまう要因が無いわけではありません。未治療の人々を道端で現実に見かけることはしばしばあり、その人達は幻覚や妄想などの症状によって、恐れたり回避しているだけなのですが、奇妙な印象を人々に与えてしまうことも事実です。

次に歴史的な背景について触れましょう。一部の文化では精神疾患を霊的なものと考えることがあります。また、古い映画のなかのマッドハウスなどのおどろおどろしいものに対する連想もあります。多くの人にとって、恐怖の感情というのは生まれつきのものであり、防衛的な反応として、人は予期しがたいことに対する疑いの感情や、考え方の障害がある者に対する恐れを抱きやすい傾向があり、それについて否認することすらあります。しかし、このホームページを読み終わった後の皆さんは、病気の症状や取るべき対策も理解され、恐れる必要が無いことがお分かりになることでしょう。

依存症の社会的な問題もあります。アルコールや違法薬物への依存はとても強力なもので、薬物はしばしば人の道徳心さえも容易に奪います。薬物依存になると次第に使用量が増え、薬物を得るために人を騙したり、お金を奪ったりなどとても不道徳になることがあります。精神疾患のある人々のほかにも、薬物使用者、違法薬物の売人、宗教的カルトのメンバーは薬物依存になりやすいと言われています。

他に言葉の問題もあります。言葉は人の印象に残り、人を深く傷つけることがあります。例えば、疾患を鮮烈な言葉(「救いようがない」「ひどく恐ろしい」等)で表現することは事実をとらえていませんし、不適切です。また、不愉快にさせる含みを持つ言葉を使うことや、悪口の意味を含んだ隠語で使うこと、重大で決定的な言葉を使うこと、攻撃的な言葉(「キチガイ」等)を使うことも、不適切です。私たちは経験を表現するちょうど良い言葉をさがすことが必要ですし、ありえない考えについては妄想の可能性も考慮に入れてみる必要もあるでしょう。
スティグマを減らしましょう
逆に言葉には良い力もあります。「治療可能」など希望のある表現をもっと見つけることや、疾患の経験についてたずねるときにもっといい言葉でほのめかすこともできるでしょう。

あなたが話す前に考えるべきことは、他人の立場になって考え、統合失調症の経験のある人の話に耳を傾けることでしょう。そして、人は持っている病気で特徴付けられるべきではありませんし、もし彼らがまだ気がついていないのであれば、彼らの持っている能力を見つけることはより価値があることでしょう。

そして、スティグマを強化しないようにしましょう。われわれの日々の生活はスティグマを強化しがちなものです。例えば友人の集まりで、忘れ物、間違い、失言などに対してわれわれはどのように答えるでしょうか。私たちはちゃかしたり笑ったりして、彼らの行動を傷つけることでしょう。私たちがどうしてこのような対応をするのか、かつて分析したことがあるでしょうか。

それは正しい行動といえるのでしょうか。起こってしまった失敗に対する恥をカバーする優しさは、受け入れがたいことなのでしょうか。全て完璧な台詞で答えなければならない日常会話などあるでしょうか。私たちは人の至らなさを受け入れるために何をすべきなのでしょうか。柔軟で受容的な会話を目指し、日常の世界への寛容さを増すことも大切でしょう。

これは少し触れることを迷うことですが統合失調症の人々もスティグマの問題を抱えています。疾患を否認したり否認しようと努力することがあり、この否認は治療するために専門家をたずねる統合失調症の人々においてさえ広がっています。これらの人々は恥を拒絶し、真の医学的状況を知ろうとせず、そのために治療が遠回りになったり、たびたび中断することがあります。

患者さんにおいてさえ、統合失調症に関する様々な誤解や神話があります。このような神話は悲観的な考えを植え付け、患者さんの予後や仕事の機会に悪い影響があるかもしれません。ここでは様々な誤解について述べましょう。
症状が固定した後でないとリハビリが始められないというのは誤解です。病状にもよりますが、実際は初日から始めなくてはならないものです。
統合失調症は人格分裂や多重人格がおこるというのも誤解です。それは異なる疾患です。

暴力や違法行為をするというのも誤解です。時々妄想による暴力はあり、時々そのようなことでニュースになりますが、法を犯す統合失調者の数は実際はまれです。
統合失調症はまれな病気であるというのも誤解です。まれではなく世界中の約1%の人がなります。

子供を持つべきではないというのも誤解です。しかし、片親が病気の場合10人に1人の子供が発症し、両親が病気なら5人中2人が発症します。また、養育が可能な程度に両親の病状が安定している必要があり、専門家との相談のうえで計画的に取り組むことが推奨されます。

子供は発症しないというのも誤解です。5歳で診断されたまれな例がありますが、多くは思春期以降に発症します。

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