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医療経済

諸外国において精神科サービスは脱施設化が進み、地域におけるケアに移行しつつある。
それにつれて早期介入への関心が高まっているようである。

例えば英国では政権主導で精神病早期介入の国家的戦略がなされているが、わが国において大規模な早期介入の実践はまだ乏しく、包括的・戦略的介入への道は険しい。

その危機感からか、1990年代前半からの英国、豪州、欧州、米国など各国の早期介入の動向に関する報告は日本語でも数多くなされている。
英国では早期介入の取り組みによる自殺・入院・医療費の減少が数値的に報告され、病床も削減できている。

適切な治療介入により、精神病の発症や重症化や社会機能の低下を防ぐということは、患者個人の人生においても、入院期間短縮や入院回数の減少、治療による経済負担の減少、勉強や仕事の継続、円滑な人間関係の構築、自殺の回避など、メリットが大変多いと思われる。

また、医療経済的にみても、最重症患者が日本で人生の大半を入院に費やした場合の一人あたりの医療費は2~5億円かかるといわれ、入院期間が半分に減るだけで1~2.5億円を予防活動や地域ケアに投じることができると考えている研究者もいる。

更に、患者が重症化を免れた結果、ケアにあたっていた家族や本人が仕事を続けられ活発な経済活動と納税をするのであれば、その経済的効果は計り知れない。もし個人の精神病による人生のダメージを減らすことが、家族や国家にとっても大きな恩恵をもたらすのなら、それはとても希望に満ちたことに思える。

しかし、前述の精神病の発病前から起こる徴候や脳の生物学的な変化について考えれば、発病した患者が家族に付き添われて病院に来るのを待っているだけでは、効果的な介入をする時期としては遅すぎる可能性もある。

早期介入から更に一歩踏み込んだ発症予防への啓蒙を推し進めることは急務である。
具体的には健常者を含んだ対象への予防教育・啓蒙やアンチ・スティグマのための取り組みなどが考えられ、それは医療施設に篭っているだけでは実現できず、行政や教育関係との連携は今後ますます重要になると思われる。

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