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血液透析・腹膜透析に共通する合併症

貧血と腎臓~腎性貧血

貧血は大きくわけて、鉄分など材料が足りなくて起きる場合、「骨髄」という血液の工場がいまひとつ稼動していない場合、作ってもすぐ消費されてしまう場合があります。腎臓には赤血球の分化をうながす「エリスロポエチン」という造血ホルモンが存在します。骨髄赤血球工場に血液を作れと指令を出す工場長のようなものです。普通は血液中の酸素濃度が低くなるとこの工場長が赤血球を作れと活発に指令をだすようになります。スポーツ選手が高山トレーニングをしているのはこのためです。
貧血と腎臓~腎性貧血
そもそも下等脊椎動物の造血工場は脾臓でした。さらに陸上にあがる頃に腎臓に移転し、爬虫類になると骨髄に落ち着きました。工場は骨髄に移しましたが、血液中の酸素の状態を知るために工場長だけが腎臓にとどまってからだのニーズにすばやく応えられるようにしたのです。

こうして腎臓の働きが低下すると貧血も起きてしまうのです。貧血がひどければ、動悸、息切れ、めまいなどの症状が現れます。このエリスロポエチンは注射薬しかなく、貧血の値をみながら投与されます。
腎臓の働きが低下すると貧血も起きてしまうのです

骨と腎臓~腎性骨異栄養症

脊椎動物の祖先は陸上にあがるときにカルシウムやミネラルの貯蔵庫として背骨を発達させました。それまで生活してきた海水はカルシウムが豊富で、エラからどんどんカルシウムを取り込むことができました。しかし、陸上ではわずかなカルシウムしかなく、積極的に小腸から吸収し、腎臓で再吸収する必要がありました。そこで、腎臓でビタミンDを活性化することで、カルシウムを積極的に吸収し、エラを一部副甲状腺ホルモンに変え、カルシウム濃度を感知して、骨からの供給を調節するようになりました。
骨と腎臓~腎性骨異栄養症
腎臓の働きが低下するとビタミンDの活性化障害が起きて、カルシウムが吸収できなくなり、低カルシウム血症は副甲状腺ホルモンを刺激します。副甲状腺ホルモンは骨に作用してカルシウムを動員して血液中のカルシウム濃度を維持しようとします。このため、骨がもろくなり、骨折を招きやすく、骨痛、関節痛がでてきます。
骨がもろくなり、骨折を招きやすく、骨痛、関節痛がでてきます

透析アミロイド症

透析期間が長くなってきますと、透析では十分に除去が困難である「β2ミクログロブリンと呼ばれる蛋白質から形成される「アミロイド」という物質が全身の骨・関節や内臓に沈着してきます。

1.手根管症候群

親指から薬指の側面までがしびれたり、痛みが出たりします。小指にはほとんど症状がないのが特徴です。痛みやしびれは手術によって改善します。

2.弾発指(ばね指)

指を曲げる腱にアミロイド物質が沈着し、指が滑らかに伸びなくなります。

3.骨・関節症

手首、肩関節、大腿骨にのう胞ができて痛む骨のう胞や脊髄や神経を圧迫して症状を伴う破壊性脊椎関節症があります。
手根管症候群

動脈硬化・石灰化症

動脈の内側にコレステロールやカルシウムが沈着すると血管が細くなり血液の通過が悪くなります。透析を行なっているひとは、血圧のコントロールが難しく、高脂血症、カルシウム代謝異常が重なり、さらに糖尿病をお持ちの方は動脈硬化が起きやすくなります。
  • 脳梗塞、脳出血
    …………… 手足のしびれ、複視、呂律障害、意識障害
  • 心筋梗塞、狭心症
    …………… 胸痛、胸部圧迫感
  • 閉塞性動脈硬化症
    …………… 四肢のしびれ、間歇性破行
  • 虚血性大腸炎
    …………… 透析中の腹痛、下血
  • 眼底出血
    …………… 視力障害
腎臓病のごく初期から動脈硬化は少しづつ進行します。そのときは気がつかないのですが、透析まえの生活は透析のあとの生活にも影響します。いつ気がついて、いつ行動できるか。大切なことだと思います。

心不全・肺水腫

体液の過剰は心臓や肺に負担がかかります。肺に水がたまるとかぜをひいているわけでもないのに咳や痰がでたり、息切れや夜間呼吸困難などの症状が出現します。心不全は透析患者さんの第1位の死因に挙げられ、塩分や水分の管理はたいへん重要です。
心不全・肺水腫

感染症

腎不全では一般に感染に対する抵抗力が低下しており、感染症にかかる率が高くなります。シャントからの感染、尿路感染、かぜをこじらせ呼吸器感染などが起きやすくなります。結核にもかかりやすく、かぜの予防、手洗い、うがい、十分な栄養と十分な透析を行なうことが推奨されます。
感染症

悪性腫瘍

長期に透析を受けているひとは悪性腫瘍の発生率が高いといわれています。しかし、透析をしていると手術や術後管理のリスクが高まり、成功率を下げます。透析を受けていると定期的な診察や検査が行なわれますが、悪性腫瘍の検索が必ずしも行なわれているわけではありません。ついつい健康診断はおざなりになりがちですが、「がん検診」などは受けていただいたほうがよいでしょう。手術や術後管理のリスクが高いからこそ、早期発見・早期治療が望まれます。
悪性腫瘍

かゆみ

腎不全になりますと尿毒素の蓄積やミネラルバランスの異常からかゆみがでやすくなります。これは透析をすれば一概によくなるとも限りません。ひとによっては透析でかゆみが増強されることもあります。いまだ、かゆみの明確な解決策は打ち出されていません。しかし、日々の「スキンケア」で、皮膚の保湿に努めることでかゆみを減じることは可能です。

お問い合わせ先

東邦大学医療センター
大森病院 腎センター


〒143-8541
東京都大田区大森西6-11-1
TEL:03-3762-4151(代表)

【休診日】
第3土曜日、日曜日、祝日
年末年始(12月29日から1月3日)
創立記念日(6月10日)