腎移植を知る

移植って何?

移植とは、細胞・組織・臓器などを同じまたは異なる個体(人)に植えることです。 骨髄移植、皮膚移植、骨移植、角膜移植、血管移植、神経移植、肝臓移植、膵臓移植、心臓移植、腎臓移植があります。また、他の個体への移植には拒絶反応が伴い、移植成立のためにはその抑制治療(免疫抑制治療)が必要です。拒絶反応の抑制治療は別の頁でお話します。

腎移植は・・・

腎移植は腎臓機能が廃絶・低下した人に、その機能を回復させるために、適合する提供者(ドナー)の健康な腎臓の片方を移植することです。血液型が違っても移植は可能です。腎移植を行うことにより、腎不全による尿毒症状が消失し、また、長時間の透析治療から開放され、自由な時間をより多く持てるようになります。食事制限も少なくなります。
腎移植は・・・

生体腎移植と献腎移植

腎移植には、健康なご家族から頂く生体腎移植と亡くなられた方から頂く献腎移植があります。

生体腎移植

提供者(ドナー)は医学的・倫理的問題がなければ、誰でもなることができますが、日本移植学会の倫理指針により親族に限定しています。血縁者(両親・兄弟姉妹・子供など6新等以内の血族)、または配偶者と3親等以内の姻族です。親族に該当しない場合は、移植施設と日本移植学会の倫理委員会での承認が必要です。
生体腎移植

献腎移植

亡くなられた方の腎臓を頂く移植です。腎臓はご本人、ご親族の善意により提供されたものです。献腎移植を受けるためには日本臓器移植ネットワークに献腎移植の登録を行います。献腎が出た場合、血液型などの適合度を調べ、それが高く、登録点数の高い方に移植されます。
献腎移植

※日本における腎移植を受けた人には2006年は1,136名で、その内、974名は生体腎移植、189名は献腎移植です。現況では、生体腎移植が多くなっています。

腎移植は誰でも可能、受けられるの?

基本的には全身麻酔の手術を受けられる心肺機能、全身状態が良好な方であれば腎移植可能です。腎移植手術では、手術中より大量の輸液が必要となりますので、特に、心肺機能が良好な方が望ましいです。

腎移植の禁忌

  • 悪性腫瘍を有する、または、治癒後間もない場合。
  • 慢性又は活動性の感染症を有する。
    → 術後に免疫抑制療法を行いますので、敗血症の原因になります。
    例)B型・C型肝炎ウィルス、活動性肺炎、結核、HIV、副鼻腔炎
      口腔感染、尿路感染、婦人科疾患、皮膚疾患、胃腸炎等々。
  • 性格や気質、精神疾患により自己管理ができない方、または、管理可能な環境に ない方。
  • 著しい心肺機能低下を認める場合。
  • 献腎移植ではドナーのリンパ球に対する抗体を有する方(クロスマッチ陽性)
腎移植は誰でも可能、受けられるの?

生体腎移植の提供者(ドナー)になるためには・・・

医学的・倫理的問題がなければ誰でもドナーになることが可能ですが、日本移植学会の倫理指針により親族に限定しています。詳細は生体腎移植の頁をご参照ください。
しかしながら、ドナーになるためには前提条件があります。

前提条件

  1. 自発的に腎臓の提供を申し出ていること。
  2. 決して見返りのない善意の提供であること。
  3. ドナーの手術の安全性・リスクを十分理解し、術前・中・後の医学的ケアに協力できること。
  4. 医学的に心身ともに健康な成人であること。

当院では1週間程度の精査入院を行ない、ドナー適応を判断します。

具体例では、
  1. 自発的な提供の意思があること。
  2. 活動性の感染症、悪性腫瘍がないこと。
  3. 高血圧、糖尿病、肥満などがないこと。
  4. 高度な尿蛋白がなく、
    腎機能検査でCCr(クレアチニンクリアランス)>80ml/min などです。
生体腎移植の提供者(ドナー)になるためには・・・

実際の腎移植手術

手術は全身麻酔で行い、提供された腎臓を(右または左)下腹部の骨盤内(腸骨窩)に移植します。下腹部に15~20cm位の斜切開を加えます。自分の足に繋がる腸骨動脈と静脈に、提供腎臓の動脈、静脈を細い糸でそれぞれ吻合します。提供された腎臓についている尿管(腎臓と膀胱の間の管)は、自分の膀胱につなぎます。また、基本的に自分の機能低下した腎臓はそのままにしておきます。ドナーの手術と同時に行ないますので、多少の誤差はありますが約4時間の手術です。但し、手術の準備、麻酔、検査などありますので1日がかりの治療(手術)になります。
実際の腎移植手術

生体腎移植ドナー(提供者)の手術は・・・

生体腎移植ドナーの手術は、一般的に開腹手術と内視鏡手術があります。どちらの手術も全身麻酔で行い、手術時間も約3時間程度です。腎臓の癒着などにより個人差はあります。

開腹腎臓摘出手術

側腹部の辺りに約15cm程度の切開を加えて腎臓に到達します。腎臓の尿管、動脈・静脈を結紮、切離して腎臓を摘出します。術中に出血した場合、迅速、安全に止血できるメリットがありますが、術後の負担(術後疼痛など)は内視鏡手術より大きいのがデメリットです。

内視鏡下腎臓摘出手術

傷が小さく、術後の負担が少ないので、回復も早いです。但し、止血困難な出血があたった場合は、開腹手術に変更します。

免疫抑制療法

免疫抑制療法
提供された腎臓が自分の体に移植されると、異物として体が反応し、排除しようとします。免疫機能が働き出します。腎移植を成立させるためには拒絶反応を起こす自分の免疫機能を抑えなければなりません。このため、免疫抑制剤が必要となります。主な免疫抑制剤とその副作用を下記に示します。

1、ステロイド・・・主な商品名:メドロール、プレドニン

感染、消化性潰瘍、骨粗鬆症、糖尿病、高血圧、高脂血症、大腿骨頭壊死、白内障、緑内障、満月様顔貌、にきび等。

2、カルシニューリンインヒビター

I)シクロスポリン・・・主な商品名:ネオーラル
   腎機能障害、高血圧、高脂血症、多毛、歯肉肥厚
II)タクロリムス・・・主な商品名:プログラフ
   腎機能障害、高血圧、糖尿病、手指の振るえ

3、代謝拮抗剤

I)ミコフェノール酸モチフィル・・・主な商品名:セルセプト
   下痢、嘔吐などの胃腸炎、食欲不振、貧血、白血球減少
II)アザチオプリン・・・主な商品名:イムラン
   貧血、白血球減少、肝障害、食欲不振、嘔吐
III)ミゾリビン・・・主な商品名:ブレディニン
   白血球減少、食欲不振、嘔吐、口内炎、膵炎
腎移植後の免疫抑制剤は永続的な内服になります。上記の副作用を見ると、免疫抑制剤の内服が怖くなりますが、術直後は拒絶反応の起こりやすい時期ですので、きちんと内服することが必要です。術後数ヶ月は免疫抑制剤大量内服になりますが、全身管理を厳重に行い、徐々に減量していきます。コスメティックな問題で(特に思春期の方)、服薬を守れず、移植した腎臓が慢性または急性拒絶反応を起し、腎機能が悪くなる場合もあります。また、感染症を併発した場合は、早急に免疫抑制剤の減量・管理が必要になります。定期的な外来受診や連絡を取ることが大切です。
免疫抑制療法