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東邦大学医療センター大森病院脳神経外科 脳ドックのご案内

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東邦大学医療センター
大森病院 脳神経外科

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髄膜腫とは?

はじめに

髄膜腫は原発性脳腫瘍の20数%を占める最も頻度の高い脳腫瘍です。ゆっくりと成長するため、無症状で経過する期間が数年から十数年と非常に長いとされています。近年では、CTやMRIが普及し、何も症状がなくても脳腫瘍が発見される機会が増えてきました。髄膜腫は、中高年の女性に多い疾患で、発生する部位によって、その症状や手術方法が異なります。

発生部位別による分類

円蓋部髄膜腫

円蓋とは、大脳を覆っている頭蓋骨の丸い蓋(ふた)の部分を指します。円蓋部髄膜腫は、前頭部に多く発生し、症状としては、けいれん発作や手足の運動麻痺、左大脳ではしゃべりにくくなる失語という症状をきたすことがあります。

手術方法は、一般的な開頭腫瘍摘出術を行います。髄膜腫は血管が豊富であり、術中に大量出血をきたすことがあるため、当院では、腫瘍摘出術に先立って血管内治療による腫瘍内血管塞栓術を行い、腫瘍への血流を遮断する治療も行われます。
円蓋部髄膜腫の造影CT
円蓋部髄膜腫の造影CT

傍矢状洞髄膜腫

頭の中央を前後に走行する重要な太い静脈(上矢状静脈洞)に接して発生します。症状は、腫瘍と反対側の上下肢の運動麻痺や感覚障害をきたします。腫瘍は部分的に上矢状静脈洞内に入り込んでいるため、手術中の状態を見て静脈損傷の危険があれば無理に全摘出を行わない場合もあります。
傍矢状洞髄膜腫の造影MRI
傍矢状洞髄膜腫の造影MRI

大脳鎌髄膜腫

大脳鎌とは、頭の中央の前後に存在し、左右の大脳半球の間に存在する硬膜のことを指します。症状は、反対側下肢の運動麻痺や、腫瘍が両側性に発生すれば、両側下肢に麻痺をきたします。そのため、脊髄疾患との鑑別を要することがあります。

手術では、左右の大脳半球間裂を分けて深部の腫瘍に到達しなければならないため、円蓋部や傍矢状洞髄膜腫に比べて、手術難度はやや高くなります。
大脳鎌髄膜腫の造影MRI
大脳鎌髄膜腫の造影MRI

蝶形骨縁髄膜腫

大脳の前頭葉と側頭葉の間に突出している蝶形骨縁という骨から発生します。蝶形骨縁の深部に発生するものほど、内頚動脈という太い血管や脳神経にからみつくため、摘出の難度が高くなります。

当科においては、腫瘍の場所や大きさを考慮し、頭蓋底外科手術のひとつであるorbitozygomatic approach(前頭側頭開頭術に、眼窩上縁と頬骨の切離を加える)を含めて手術方法を選択します。

術後合併症として、動脈損傷による脳梗塞、視神経や動眼神経の障害が挙げられます。
蝶形骨縁髄膜腫の造影MRI
蝶形骨縁髄膜腫の造影MRI

嗅窩部髄膜腫および鞍結節部髄膜腫

前頭部の奥にある前頭蓋底部の嗅神経が走行するところから発生します。においがわかりにくくなったり、前頭葉の圧迫による精神症状をきたします。また、鞍結節髄膜腫は、さらに深部に発生する腫瘍であり、視神経や視交叉の圧迫によって視力や視野障害(両耳側半盲)を示します。

手術方法は、前頭側頭開頭術や両側前頭開頭術を行います。その際、鼻と通じている副鼻腔のひとつである前頭洞が開放されるため、当科では、術後感染および髄液漏を予防する上で、前頭洞を骨膜で覆い、腹部脂肪を充填したりします。
鞍結節部髄膜腫の造影MRI
鞍結節部髄膜腫の造影MRI

小脳橋角部髄膜腫、錐体斜台部髄膜腫(頭蓋底髄膜腫)

小脳橋角部とは、脳幹のひとつである橋と小脳に囲まれた部位です。多くの脳神経が近接しており、顔面の動きをつかさどる顔面神経、聴覚の聴神経や、飲み込み(嚥下)やのどの動きに関与する舌咽神経、迷走神経、顔面の感覚を支配する三叉神経などです。腫瘍が大きくなると、小脳や脳幹の圧迫によるふらつきや歩行障害が出現し、また顔面の感覚など、脳神経の症状を伴うようになります。さらに大きくなると、脳内を循環する髄液の流れを障害して水頭症を併発したり、脳幹障害による意識障害に至ります。小脳橋角部髄膜腫は、発生部位が深部にいくほど、頭蓋底腫瘍に属すようになります。

手術方法としては、基本的にパークベンチポジション(横向き)で行います。浅い部位であれば、耳介後方から頸部にかけて皮膚切開する外側後頭下開頭術を行います。これに対して、脳の中央に近い深部に発生する錐体斜台部髄膜腫では、経錐体骨到達法を選択することが多くなります。この方法は頭蓋底外科手術のひとつであり、当科では、ニューロナビゲータや術中モニタリング、三次元合成画像や3Dプリンターで作製した立体模型を用いて術前に十分なシミュレーションを行った上で手術を行います。

術後合併症としては、聴力障害や顔面神経麻痺、嚥下障害、小脳症状、脳幹障害、髄液漏があり、術後に注意深く観察する必要があります。
小脳橋角部髄膜腫(頭蓋底髄膜腫)の造影MRI 
小脳橋角部髄膜腫(頭蓋底髄膜腫)の造影MRI
(左:手術前, 右:手術後)

錐体斜台部髄膜腫(頭蓋底髄膜腫)の造影MRI
錐体斜台部髄膜腫(頭蓋底髄膜腫)の造影MRI
(左:手術前, 右:手術後)

錐体斜台部髄膜腫(頭蓋底髄膜腫)の3Dプリンター
錐体斜台部髄膜腫(頭蓋底髄膜腫)の3Dプリンターによる模型を作製し、手術シミュレーションに応用しています。頭部の左側から見ており、緑が腫瘍、赤とピンクが動脈、青が静脈です。

病理学的分類

ほとんどが良性腫瘍ですが、1~2%で悪性も存在します。急速に増大したり、再発しやすいなどの特徴があります。

手術支援装置

術中モニタリング

手術操作によって術後に運動麻痺や感覚障害を起こすかは、手術が終了して麻酔から覚醒するまで、判断することはできません。そのため、電気生理学的検査である術中モニタリングを行うことで、全身麻酔下でもその神経伝達路が良好に保たれているかを評価します。

当院では、必要に応じて、手術中に頭皮から電流を流して上下肢を電気的に動かす運動誘発電位(MEP: Motor evoked potential)や、逆に四肢に電気的な痛覚を与えて頭皮で大脳皮質の電気的到達を計測する体性感覚誘発電位(SEP: Sensory evoked potential)などが用いられます。また、腫瘍の発生部位によっては、顔面神経や嚥下に関わる神経を保護することを目的として、各神経のモニタリングを行います。

ニューロナビゲータ

ニューロナビゲータとは、自動車の道案内で用いられるカーナビゲーションのごとく、手術中に、病変や周囲脳組織の立体的位置を、客観的に指し示す画像診断機器です。特に深部病変の手術時に役立ちます。当院の脳腫瘍の手術では、ほとんどの場合にニューロナビゲータを用いています。

放射線治療

腫瘍摘出術後の残存腫瘍に照射する場合があります。照射による長期効果は個々の症例で差があります。多くの場合は腫瘍を縮小させる、あるいは腫瘍の増大を引き留める効果をねらって行われます。古典的な広範囲照射では正常脳にも影響が出てしまうために、近年では腫瘍のみに限局して照射する定位的放射線治療が選択されます。ガンマ線を用いたガンマナイフや、X線を用いて比較的大きく不正形の標的にも照射できるサイバーナイフなどがあり、当科では、個々の患者さんに応じて併用しています。

予後

髄膜腫の予後は、手術でどの程度摘出したかに大きく関わっています。Simpson(シンプソン)の分類は、摘出程度とその後の再発率の相関を示す指標です。腫瘍を全摘出して付着部硬膜と変性部頭蓋骨も切除した場合には再発率は9%と低く、一方、腫瘍の部分摘出にとどまった症例では再発率39%と高くなります。