診療内容
組織診断
内視鏡検査や手術などによって摘出された組織から、顕微鏡観察を行うガラス標本(プレパラート)を作製し、診断します。ガラス標本完成までには固定、包埋、薄切、染色など多くの工程を臨床検査技師が行いますが、いずれも専門的知識に裏付けられた技術が要求されます。
術中迅速診断
手術中に採取された病変組織をその場で凍結させ、3μm(マイクロメートル)の厚さに切り、染色して標本を作製します。その標本から病変の広がりなどを顕微鏡で調べ、診断結果を執刀医に伝えるのが「術中迅速診断」です。その名のとおり、凍結標本の作製から診断までは約10分で行うなど「迅速さ」が求められる診断であり、病理診断医の熟練を要します。この診断によって切除の範囲が決定されるなど、手術チームの強力なサポート役として貢献しています。
細胞診
痰や尿、胸水、腹水に自然とはがれ落ちた細胞や、婦人科検体中の細胞(子宮などの擦過(さっか)材料)、穿刺針によって乳腺や甲状腺、リンパ節などから吸引した細胞などをガラス板に塗り、染色して標本を作製します。がん細胞があるかないか、甲状腺や乳房のしこりはどのような病気によって生じているかなど、多くの情報が得られる検査です。顕微鏡で調べます。この検査を行うのは、厳しいトレーニングを重ね、日本臨床細胞学会の試験に合格した細胞検査士と細胞診専門医に限られます。当院の細胞検査士は全員国際資格も取得しています。
病理解剖(剖検)
不幸にして患者さんが病院で亡くなられた際、主治医から、患者さんの解剖をお願いすることがあります。解剖では生前の診断の妥当性、臨床的な問題点、治療効果などが検討され、医師の資質向上、医療の質の向上に役立てられます。
「新しい研究結果」の応用
患者さん一人ひとりの病態に合わせた最適な治療を行うため、当科ではがんの分子生物学的特徴を明確にする検査に積極的に取り組んでいます。そのひとつが「FISH(Fluorescent in situ hybridization)法」です。FISH法とは、蛍光標識したDNAプローブを用いて特定の腫瘍遺伝子を同定する方法です。当科では主に乳がんや胃がんの診断や、病原体の同定などに活用し、乳がんや胃がんに対する分子標的治療薬の選択に役立てています。今後も地域医療のリーダーとして、分子生物学を視野に入れた病理診断に力を入れていきます。
病理資料の管理と活用
これまでに当部でなされた病理診断は60万件を超え、病理標本などの資料は膨大なものとなっています。病理資料は原則的に永久保存され、患者さんの転院時の標本複製、がん再発時の初発病変との比較検討などに対応しています。また疾患の研究のためには病理診断と病理標本とが不可欠です。資料の管理と活用も病理の重要な仕事です。