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ED治療薬の比較

ED(勃起障害)ってどんな状態ですか?

米国泌尿器科学会(1996年)のEDの定義は「満足のいく性行為に十分な勃起を達成できない、もしくは維持できないこと」となっている。日本におけるEDの有病率は、1998年の白井らの報告によると完全型ED(常にできない)、中等症ED(しばしばできない)を合計すると1130万人(40代が20%前後、50代が40%前後、60代が60%前後)と高い有病率を示し、軽症ED(たまにできない)を含むとそれ以上がEDと報告されています。また、男性不妊の原因の20.7%が勃起障害であることも判明してきました。EDの分類は、身体に問題のない機能性と問題のある器質性に分けられます。機能性には心因性と精神病性、器質性は血管性、神経性、内分泌性、陰茎性に分類されるが心理的なものやそれぞれの身体的障害が重複する場合もあります。

1999年3月にphosphodiesterase type5 inhibitor(PDE5inhibitor,商品名;バイアグラ®錠、一般名;Sildenafil)が発売されEDの診断の手順や治療法に変化が現れ、2004年6月には本邦で2番目のPDE5inhibitor,商品名;レビトラ®錠、一般名;Vardenafilが発売され、さらに治療法の選択肢が増えました。その後、2007年9月に長時間作用型のPDE5inhibitor,商品名;シアリス®錠、一般名;Tadarafilが発売され、ED治療薬の販売は、右肩上がりに増え、ED治療は世の中に認知されてきました。

EDの診断はどのように行いますか?

勃起障害であるかどうかの診断は、EDの定義にしたがって行われる。つまり、「満足のいく性行為に十分な勃起を達成できない、もしくは維持できないこと」があればEDといえる。しかし、治療が必要なのは、勃起障害で本人またはパートナーが困っているか不安を感じている場合となります。勃起障害の程度を簡便に評価するためには問診表が用いられています。
表1 IIEF5(International Index of Erectile Function 5) 表1 IIEF5
(International Index of Erectile Function 5)
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問診票は、国際的なものとしてはIIEF(国際勃起機能スコア)がありますが質問項目が多いため臨床的には簡略し5項目の質問のIIEF5(表1)が広く使われています。また、われわれは具体的な質問からなる勃起機能アンケートを用い、挿入の試みが何回で、何回挿入できたか、何回射精できたかを聴くだけでも評価でき、また、最大勃起角度として、体の軸にして陰茎が直角のときを90度とし90度以上を機能性EDと予測しています。
最近では、勃起硬度測定評価EHS(Erection Hardness Score)という簡便な問診票が海外で開発され日本でも翻訳され使われています。「あなたは自分の勃起硬度をどのように評価しますか?」という質問に対して、「グレード0:陰茎は大きくならない、グレード1:陰茎は大きくなるが、硬くはない、グレード2:陰茎は硬いが、挿入に十分なほどではない、グレード3:陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない、グレード4:陰茎は完全に硬く、硬直している」のいずれかを回答しグレード0-2は明らかにEDですが、グレード3であっても満足な性交に支障があればED治療の対象となります(図1)。
図1 EHS日本語版における硬さイメージ 図1 EHS日本語版における硬さイメージ

ED治療薬を服用できない人はどんな人ですか?

ED治療薬の処方のために薬歴・既往歴チェックが必要で、特に禁忌項目の除外が重要です。禁忌薬剤には、硝酸剤およびNO供与剤やアンカロンなどがありの薬歴チェックを十分行う必要があります。また、レビトラ®錠は、CYP3A4を強く阻害する薬剤(ノービア、クリキシバン、レイアタッツ、フォートベイス、インビラーゼ、レクシヴァ、カレトラ、プリジスタ、イトリゾール)、クラスIA抗不整脈薬(キニジン、プロカインアミド等)、クラスIII抗不整脈薬(アミオダロン、ソタロール等)が併用禁忌となっています。次に禁忌の既往歴をチェックします。心血管系障害を有するなど性行為が不適当と考えられる、心筋梗塞(6か月以内)、低血圧(90/50mmHg以下)、高血圧(170/100mmHg以上)、脳梗塞・脳出血(6か月以内)、重度の肝障害(肝硬変)、網膜色素変性症(進行性の夜盲)ではPDE type5阻害薬を処方できません。

ED治療薬は種類によって効き方がちがうのですか?

3種類のED治療薬は異なる薬剤ですが、ED治療薬の作用メカニズムは同じで性的興奮が必要です。 陰茎海綿体平滑筋内のcGMPが出現しcGMPはPDEtype5により分解されるがED治療薬はPDEtype5を阻害しcGMPを増やすため勃起の発現および維持を助けます。

ED治療薬はどのように処方されますか?

EDの治療の第一選択はED治療薬であるPDE type5阻害薬(バイアグラ®錠・レビトラ®錠・シアリス®錠)の内服治療です。一般医師は、EDの定義に合うか評価し、健康チェックをし、薬の使用方法を『バイアグラ®錠を適正にご使用いただくために』、『レビトラ®錠の正しい使い方について』や『シアリス®錠の正しい使い方』というパンフレットを示し説明して処方します。

3種類のED治療薬の効果発現時間は違いますか?

バイアグラ、レビトラ、シアリスの3剤の添付文書等の資料ではいずれも性行為の約1時間前に投与するよう書かれています。しかし、効果発現の時間には若干の違いがあります。(表2)に示すように、バイアグラ50mgでは、データがないが、バイアグラ100mg(本邦未承認)では14分(成功割合34.8%、失敗割合65.2%)、レビトラ10mgでは10分(成功割合21%、失敗割合79%)、レビトラ20mgでは、11分(成功割合23%、失敗割合77%)、シアリス10mgでは、30分まで有意差なし、シアリス20mgでは、16分(成功割合32%、失敗割合68%)の結果があります。ただし、成功の条件が違い、バイアグラは8回中1回以上成功を成功とし、レビトラ、シアリスは4回中1回以上成功を成功としています。以上の結果から、常用量で有意差があるのはレビトラだけで他の薬剤より早く効果が発現すると考えられます。しかし、レビトラ10mgが10分で効果発現しても成功の割合が21%しかありません。30分以内の効果発現時間は、誰にでもあるわけではなく失敗の割合が高いので自分に適した時間を自分なりに決める必要があります。
表2 ED治療薬の効果発現時間の比較 表2 ED治療薬の効果発現時間の比較
※患者が8回試みたうちで1回以上成功した場合(バイアグラ)または4回試みたうちで1回以上成功した場合(レビトラとシアリス)を成功とみなす

3種類のED治療薬の最大効果の時間と効果持続時間の違いは?

表3-1 表3-1
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薬物動態で比較すると、血中濃度が最大になる時間は、バイアグラ0.8時間、レビトラ0.7-0.9時間、シアリス2時間です。つまり同じ薬を飲む場合はバイアグラ、レビトラは約1時間前、シアリスは2時間前が最も効果を発揮しやすいと考えられます。但し、レビトラは比較的早く効果が発現し、性行為10分前の服用で2割の人に有効です。効果持続時間に関しては、バイアグラとレビトラは約4時間、シアリスは36時間です。よって、表で示したように通常の投与時間は、バイアグラとレビトラは、性行為の1~3時間前、シアリスは性行為の1時間~1日半前となります(表3-1)。

性行為のタイミングがむずかしいのですが?

われわれの調査では、いずれのED治療薬の効果も「硬い勃起が得られる」、「挿入後、勃起を維持することができる」という、基本的機能についての評価は高い結果が得られました。一方、ED治療薬の基本的機能に対する評価が高い回答者においても、「効果の発現」や「効果の継続時間」にまつわって感じる“焦り”や、ED治療薬の服薬のタイミングをはかる“煩わしさ”について、プレッシャーや不満を感じているようでした。更に、われわれは3ヵ月に1回以上性交渉を持つ夫婦300組の夫婦にアンケート調査を行い、1週間のうちで性交を行う曜日を質問し、「特に決まっていない」が男性90%、女性91%もありました。また、性交を予測できる時間についての質問では、「予測できない」が男性58%、女性60%で、次に「30分以内になって予測」が男性17%、女性19%でした。確かな予測はできなくても、ある程度の予想でED治療薬をのむことになりますが、1-3時間後を予想する場合はバイアグラとレビトラでも良いですが、1-3時間を予想するのが面倒、または今日か明日と予想する場合は、シアリスが選ばれています。また、30分以内なら他の薬よりはレビトラが有用かもしれません。

ED治療薬を飲んだのですが性交を行いませんでした、大丈夫ですか?

性行為はパートナーの気持ちにも配慮する必要があるため、ED治療薬を飲んでも性行為が行われない場合もしばしばあります。そこでED治療薬が無駄になったと考えるのは早いです。最近の研究では、ED治療薬は主に血管の機能改善効果が認められるとの報告があります。ED治療薬が血管拡張機能を改善し、ED治療薬をやめても血管拡張機能の改善が続く、さらにED治療薬は血管障害物質Endothelin-1を減らします。また、血管再生に関する血管内皮前駆細胞を増やし、冠状血管内皮細胞が増えたとの報告もあります。このように性行為が行われなくてもED治療薬は、血管機能の改善や修復するためアンチエイジング効果が期待され内服して性行為がなくても無駄ではないと考えられます。

ED治療薬は食事の影響をうけますか?

ED治療薬で食事を食べた直後に内服すると影響がでる場合があります(表3-1)。バイアグラの場合、普通の食事をした場合でも薬剤の吸収が遅れ効果が低下することがあります。レビトラの場合は、普通食では影響を受けませんが、バター、ベーコン、ウィンナー、マヨネーズ、揚げ物、ナッツ類(アーモンド、ピーナッツ、ピスタチオ)などの高脂肪食を食べた直後に内服するとやはり吸収が遅れ効果が低下する場合があります。シアリスでは、食事の影響がないと報告されています。

ED治療薬は飲酒の影響がありますか?

ED治療薬とアルコールの相互作用はありませんが、たくさん飲酒した場合は効果が低下するケースをよく経験します。これはEDでない人でもたくさん飲酒したときに性交に失敗する場合と同じことで、飲酒で大脳の性中枢の興奮が抑制されるためと考えられます。性的興奮が抑制されればED治療薬を飲んでいても飲んでいなくても勃起するのは困難になります。(表3-1)

ED治療薬の値段はどのくらいですか?

表3-2 表3-2
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東邦大学医療センター大森病周辺の院外薬局は6-7店ありますが、多少の価格差があります。平均の調剤費は1処方箋あたり約800円、中容量の薬剤費の平均は、バイアグラ50mg約1300円、レビトラ10mg約1200円、シアリス10mg約1500円となっています(表3-1)。より有効性の高い高容量の薬剤費の平均は、レビトラ20mg約1700円、シアリス20mg約1700円となっています(表3-2)。

PDE 5阻害薬が無効の場合はどうしますか?

PDE 5阻害薬が無効である場合に、第一に使用方法が適切であったかどうかをチェックする必要があります。適切な使用でも無効の場合は、陰茎注射(陰茎海綿体自己注射)や陰茎プロステーシス手術、陰圧式勃起補助具なども検討します。

使用例を紹介してください?

ケース1 30歳代 不妊治療

30歳代男性、2年前に結婚し、子供に恵まれないため産婦人科を妻が受診した。妻の検査には異常はなく、基礎体温を記録して排卵予定日前後3日間性交を行うよう指導された。男性も子供を強く希望していたので、排卵予定日前後3日間性交していた。しかし、仕事も忙しく、帰宅時間もおそく心身共につかれていたときに排卵予定日になったしまった。性交を試みるも勃起が不十分で性交ができなかった。妻は早く子供が欲しく、夫に対し「子供を作る気があるの」と問い詰めてしまった。それ以降排卵予定日になるとうまく性交ができなくなってしまった。男性は妻と一緒に当院を受診し、ED治療薬を処方された。薬が子供に影響するのではないかと心配したが、全く問題ないと説明されED治療薬を使用した。副作用もなく1回目から性交が以前のように可能になった。挙児希望だったので血液検査、精液検査を行ったが問題なかった。排卵予定日前後3日間のうちはじめの2日間はED治療薬がなくても性交が可能であったが3日目は薬を使用していた。ED治療薬を開始してから半年後に妻が妊娠し、その後健康な女児がうまれた。現在は排卵予定日を気にしなくなったためED治療薬は中止している。

ケース2 50歳代 中折れ(勃起硬度グレード2)

50歳代男性、3年前に飲酒後に妻と性交を行い、挿入はできたが、途中で勃起が弱くなり性交を中断してしまった。その後、性交の時は飲酒をひかえるようにしたが、中折れ状態が時々あるようになった。妻に、途中で中断するくらいならセックスに誘わないでと言われたため、当院を受診した。血液検査では、男性ホルモンや糖尿病などの異常はなかった。ED治療薬を処方され、中折れ状態が改善された。現在は、体調がよいときはED治療薬がなくても問題なくなったが、少し自信がないときや疲れているときはED治療薬を服用している。妻は、性交を中断されることがなくなり、満足な性生活をおくっているようで、以前より妻が明るくなったようである。

ケース3 50歳代  勃起硬度グレード3

50歳代男性、妻とは離婚し現在20歳年下の彼女と結婚を前提に交際中である。性行為は週1回くらいで、毎回、挿入射精は問題ない。しかし、勃起硬度を維持するためには陰茎刺激が必要であった。あるとき彼女から「自分勝手な性行為」を指摘された。勃起を維持するため陰茎への刺激がよいように性交を行っていたせいか、彼女の精神的および性的満足感に配慮がたりなかった。勃起硬度が完全なときに早く挿入したり、自分ペースのピストン運動に集中していたかもしれない。ED治療薬を使用すると余裕ある性交を行う事ができると雑誌の記事で読んだ事があったので、ED治療薬をもらいに当院を受診した。問診票の勃起硬度スコアは、グレード3(陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない)であった。今までの病気や使用している薬剤などを聞かれその日にED治療薬を処方され、早速、使用してみた。以前は陰茎を刺激しないと勃起しなかったが、性交を始める直前に半勃起状態になり、スキンシップが始まるとすぐに完全勃起の状態になった。陰茎刺激がなくても勃起の維持が可能なため気持の余裕が生まれ、彼女への配慮が十分行えるようになった。彼女との関係がさらによくなり、仕事や男としての自信がよみがえってきた。

ケース4 70歳代 マスターベーションで使用

70歳代男性、5年前に妻が婦人科の病気をしてから性交は全くなくなった。2ヶ月前に昔の同世代の友人にあってお酒をのんだ。友人は70歳代でも週1回の性交を行っている。性交にはED治療薬を使用しているが、翌朝、朝立ちもあるといっていた。自分は、マスターベーションを行おうとしても勃起しないし、このまま枯れていくのだなとさびしい思いでいた。友人がED治療薬を使用しているので、自分も使用してみようと東邦大学を受診した。「この年ですいません」と先生に言うと、先生は「全く問題ありません、80歳代でも定期的にED治療薬をもらいに来ています、70歳代はまだまだ現役です。」と言ってくれた。今までの病気と使用している薬名を伝え、ED治療薬をもらった。しかし、妻は性交ができないので、マスターベーションに使用してみた。陰茎を擦ると完全に勃起し、射精も何年ぶりにできた。翌朝、友人が言っていたように朝立ちもあった。自分はまだ枯れてはいないと自覚できた。十代の頃は、彼女がいなくてマスターベーションばかりだったが性的には充実していた。昔に戻ったような感じがする。最近の研究では、ED治療薬は血管の機能改善効果が認められ、さらに血管再生に関する血管内皮前駆細胞を増やし、血管の動脈硬化予防や血管再生作用があるといわれ、定期的にED治療薬を服用している。

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