患者さんを中心に考えた質の高いチーム医療の提供。
医局News
東邦大学医療センター大森病院呼吸器外科 関連リンク

【お問い合わせ先】

東邦大学医療センター
大森病院 呼吸器外科

〒143-8541
東京都大田区大森西6-11-1
TEL:03-3762-4151(代表)

診療内容

1.肺がんの外科療法をメインに実施。とくに「慢性閉塞性肺疾患(COPD)合併肺がん」や「間質性肺炎合併肺がん」など難しい肺がんに対し、リスクの少ない手術を実現

東邦大学医療センター大森病院 呼吸器外科では、原発性肺がん、縦隔腫瘍、転移性肺腫瘍、気管・気管支狭窄、気管支内異物など、外科治療が必要な呼吸器疾患全般に対し、診療を行っています(詳細は「対象疾患」ページをご覧ください)。

対象疾患

中でも当科で最も多く手術を行っている疾患は「肺がん」で、年間の手術症例数280件中103件を占めています(2013年度実績)。

さらに肺がんの中でも、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)合併肺がん」や「間質性肺炎合併肺がん」など他の病気を併発している重症度の高い症例を数多く手がけているのが、当科の大きな特色のひとつです。

こうした他の肺疾患を併発している肺がんの場合、肺がんに対する化学療法(抗がん剤)や放射線療法の作用が慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎によって妨げられることがあり、がんの治療効果はほとんど期待できません。

そこで当科では、患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を維持できる根治的な治療として、患者さんの症状に応じて可能な限り、手術を行っています。

手術についても、治療後に合併症や急性増悪(急激に咳や痰の量が増加するなど症状が悪化すること)を引き起こすリスクなどがこれまで広く問題視されてきましたが、当科では臨床現場で研究を重ね、最新機器を積極的に導入したり、自分たちの技術を向上させることで、そうした問題を一つひとつ解決してきました。その結果、現在では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)合併肺がん、間質性肺炎合併肺がんに対して、治療後の急性憎悪や合併症を防ぐことにほぼ100%成功しています。

肺がんの診療は、呼吸器内科、放射線科、病理診断科、リハビリテーション科など各部門の専門医との連携のもとに進めていますが、とくに肺機能が低下している患者さんや高齢の患者さんに対しては手術前にリハビリテーション科と共同して、呼吸機能を回復するためのプログラムを実施します。機能を回復させたうえで手術を行うことで、合併症が起きにくくなる、術後の回復もより早くなる、などのメリットが得られます。

手術においても、呼吸機能の温存するための縮小手術や、術後のリンパ漏を極力抑えたリンパ節郭清(がん細胞が転移している可能性のあるリンパ節を予防的に切除)など術式を工夫し、術後、患者さんがスムーズに回復できるよう努めています。

なお、進行性肺がんに対しては、呼吸器内科や放射線科と連携し、抗がん剤による化学療法や放射線療法などを組み合わせた集学的治療を行っています。

手術は、胸部に開けた2cm程度の小さな穴から胸腔鏡(カメラ)を挿入し、胸の中の様子をビデオモニターに映し出して行う「胸腔鏡下手術」を主体としています。

胸腔鏡下手術は従来の切開術と比べて傷が小さく、術後の痛みも少ないというメリットがあります。また回復も早く、早期の退院が可能です。

2.一人ひとりの“肺がんのタイプ”に応じた個別化治療(テーラーメイド治療)を実施。病理診断科との連携で、術前の診断も確実に

一人ひとり外見も性格も異なるように、がんも一人ひとり、発症の原因から治療後の経過まで、まったく異なります。同じがんの治療法でも、患者さんによって「合う・合わない」、あるいは副作用が「ほとんど出ない・強く出る」といった違いは当然出てきます。つまり、個人個人に合った治療が必要なのです。

当科ではこれをがんの「個別化治療(テーラーメイド治療)」と名づけ、積極的に実施しています。

もともと肺がんは治療の方向性から「小細胞肺がん」と「非小細胞がん」の2種類に大きく分けられていました。現在はさらに肺がんの分子生物学が進歩し、EGFR遺伝子変異とEML4-ALK融合遺伝子が肺がんの発症に関与していることが明らかになり、より詳細に個々の“肺がんのタイプ”を分析できるようになっています。

こうした“肺がんのタイプ”を診断するうえで必須なのが、病理診断科との緊密な連携です。患者さんから採取したがん細胞の精密な検査は病理診断科が行い、その結果に基づいて最も適切な個別の治療法を検討していきます。

診断の段階から病理学的にもしっかり個別化を図り、患者さんの“肺がんのタイプ”に応じた治療を行う。当科では常にこのことを徹底しています。

3.地域密着型の大学病院として、肺がんの患者さんを長期にわたりサポート。万が一、再発や転移した場合にも迅速かつ適切に対応

がんの個別化治療(テーラーメイド治療)とともに当科が重点を置いているのが、「地域密着型医療」です。

さまざまながんの中でも、肺がんはとくに再発率が高く、転移も起きやすい傾向があります。

当科ではすべての肺がんの患者さんに対して根治性の高い治療を目指していますが、どんなに治療後の経過が良好でも、突然数年後に再発したり、転移して現れることもあるのが、肺がんという病気なのです。

そうした場合にも迅速かつ適切に対応できるよう、当科では患者さんのカルテ(診療録)を長期間にわたって保管しています。患者さんが医師に一からご自分の病歴を説明しなくとも当科のほうで調べることができるので、どんなに時間が経過していても、患者さんに安心して再診していただけるのではと思います。

なお、肺がんの手術を受けて退院した後も、症状によっては外来通院で化学療法や放射線療法を行ったり、リハビリテーションを続けていただく場合があります。肺がんは基本的に一度の治療ですべて完結するということはなく、長期にわたる治療が必要となります。

だからこそ地域密着型の大学病院の診療科のひとつとして地域の病院の先生方と円滑な協力体制を保ちながら、地域の方々の生活に根ざした診療を行っていきたいと当科では考えています。

患者さんにとっても、地域の病院を受診するメリットは、
  • 高齢になって足腰が弱ったり、呼吸器や心臓などに問題があっても、無理なく通院できる
  • 入院した場合、ご家族やパートナーなども病院が近くにあれば面談に足を運びやすい
など数多くあります。逆にいうと、自宅から遠い地域にある病院への通院は、身体的にも経済的にも大きな負担になっていく可能性があります。とくに長期療養が必要な肺がんの治療に際しては、こうした点も踏まえて病院を選ぶことを、ぜひおすすめします。

4.すべては「患者さんのために」。患者さんへより高度な医療の提供するため、新しい治療法の研究や手技の研鑽に尽力。世界に通用する呼吸器外科を目指す

「世界的な呼吸器外科医を育成する」

当科診療部長の伊豫田 明教授はこの志のもと、外科医の教育や呼吸器外科領域の研究などに意欲的に取り組んでいます。

外科医の教育については、「若いうちから手術の技術を高めていくことが重要」(伊豫田教授)との考えから、積極的に臨床の現場での経験を積み、技術が身につくようサポートしているほか、研修医向けの手術トレーニング「ウェットラボ」なども独自に開催しています(詳細は「外科医教育の内容」ページをご覧ください)。

外科医教育の内容

研究については、週に1回呼吸器外科内で「リサーチミーティング」を開催し、進行中の研究の状況などを共有する場を設けています。

また、「新しいエビデンスを世界に発信する」ことを課題とし、伊豫田教授を筆頭に海外の医学論文誌等に英文論文の発表なども積極的に行っています。

当科がこうして日々、技術の向上や新しい治療法の研究に取り組んでいるのは、ひとえに「患者さんのために役立てたい」という思いからです。ひとりでも多くの患者さんが高度な技術や新しい治療によって、高いQOL(生活の質)を維持できるようになることを目指しています。
また、当科に入院されている患者さんについては、主治医だけでなくスタッフ全員が症状や治療方針を把握しています。毎朝必ずスタッフ全員でミーティングを行い、その日の診療について全員の合意を得たうえで回診を行うことを、当科では徹底しています。こうすることでスタッフも常に緊張感をもって診療に取り組むことができ、単純なミスなどの防止にもつながっています。診療科として当たり前のことを行っているに過ぎませんが、どんなときでも「患者さんのため」ということを念頭に置き、一つひとつ丁寧に対応していくことを心がけています。