9.診療メモを作ってみる |
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研修医の頃から書き溜めてきた診療メモ。 先輩に教わったこと、経験から感じたちょっとしたコツ、よく使う薬の薬用量、教科書を縮小コピーしたさまざまな治療プロトコールなど、僕の白衣のポケットにあるシステム手帳には、「これさえあれば何とかなる」ための情報が蓄積されている。きっと医者なら誰でも一度は作るはずの、そして後になっても白衣のポケットに入っているはずの診療メモ。
初めて Palm を手にしたとき、このメモを Palm に持ってこられたら便利だろうな、と考えた。 ところが、いざ作ってみようとすると、これがなかなかうまくいかない。診療メモには文章だけでなく、図や表のコピーが貼り付けてある。フローチャートもある。文章だけならメモ帳で対応可能かもしれないけれど、図や表まで一緒に管理する良い方法が思いつかなかった。当時のPalm では、図は FireViewer などの独自形式でしか扱えず、文章と図の一元管理は無理だった。
気づいたら丸3年以上のお付き合いになる右脳センセこと粟飯原先生との最初の情報交換も、この診療メモ(右脳先生は「秘密君」と呼んでいた)をどうやって
Palm に移すか、という話題だった。 とても面白いアイデアだった。そもそも
Linker
なんて、教わるまで知らなかったソフトだし。それまでは診療メモの中にある特定の項目を、いかに探し出すかということばかり考えていた。システム手帳なら、五十音順に住所録用の見出しをはさんでおけるけれど、Palm
だったらどうやろうか。そう考えて、必要なソフトは、何らかのデータベースソフトかとさえ考えていた僕には、とても新鮮な提案だった。
さらにその直後に、SetonNotes というソフトを見つけた、と連絡をいただいた。このソフト、いわゆるアウトラインプロセッサなので、メモを階層(ツリー構造)で管理できる。面白いことに、FireViewer へのリンクも張れるらしい。これならさらに楽に画像が扱える。喜んでシェアウェアの登録をして、診療メモを作り始めたけれど、結局のところ文章と画像は同じ画面で扱えないことに変わりがない。これが少しずつ不便に思えて、いつの間にか使わなくなってしまった。
時が過ぎ、さまざまな医療ソフトを手に入れて、Palm は必携ツールとしてなくてはならないものとなったけれど、診療メモだけは依然としてシステム手帳のまま。何とかならないだろうか、と漠然と悩んでいた頃、Palm 掲示板に「自分用の診断治療マニュアルを html ファイル化して、これを Xiino などの html 閲覧ソフトで参照できないか」という質問が載った。質問者は、昔一緒に仕事をした先生だった。この質問に対するいくつかの回答の中で、iSilo というソフトを教わった。html ファイルを独自形式に圧縮して Palm に流し込み、参照するソフトということだった。単語検索機能もちゃんとあり、しかも表示画面だけでなく、セット化されたファイル群全てを通しての検索もできるとのこと。html ファイルなら、図や表も Web のようにテキスト文章と混在させることができる。Web をそのまま持ってくることだってできる。ハイパーリングが使えるから、関連した項目をリンクさせることもできる。「これだぁっ!」まさに目から鱗が落ちるように、今まで悩んでいた問題が一気に解決した瞬間だった。 早速 Muchy で iSilo について調べてみた。カラーハイレゾやジョグダイヤル、外部メモリにも対応しているという。すかさず Web へ飛んで、最新版をダウンロード。iSilo 用のデータを作成するパソコン用ソフト、iSiloX もあわせて手に入れた。
僕の診療メモは、住所録についてくる見出し用の仕切りを使って、内容のタイトルを五十音順に整理している。例えば「胃液補正」や「胃透視」は「あ」行に、「予防接種スケジュール」は「や」行に、といった具合。さらに「喘息」は「さ」行に分類されているけれど、「気管支喘息」で引いてしまったときのために、「か」行の「気管支喘息」に「→喘息」とリファレンスインデックスを付けている。もちろん長く使いこんでいけばそれすら覚えてしまうけれど、新しく書き足した項目は、時としてどこに分類したか分からなくなる。こんなときのために、予想される項目名に参照先を書いておくのは、かなり助かる。 この使い勝手をあまり変えないですむには、どうしたら良いか。 試しに Web 作成に利用している FrontPage で、サンプルを作ってみた。
まずは、五十音別にフォルダを用意して、そこに項目ごとのファイルを入れることにした。 しかし1項目1ファイルでは、整理は便利かもしれないけれど、ファイル数ばかり増えてしまう。診療メモの中にはかなり長いメモもあるかわりに、わずか数行で終わってしまうメモもある。これらを同列で扱うのは、あまり効率が良くない。そこで長いメモは独立した1つの html ファイルにまとめ、数行のメモは寄せ集めて1つのファイルを作った。たとえ寄せ集めてあっても、デジタルデータの強みがあるから、少なくともシステムノートのように、加筆・修正に困ることはない。ファイルに修正を加えて保存しなおすだけですむ。「ブックマーク」(ジャンプする先のターゲット)という機能を使えば、1つのファイルの中にある、途中の行にダイレクトにリンクを張ることができるから、アクセスも不便ではない。 そして個別項目のファイルとは別に目次のファイルを作り、目次のタイトルをタップすれば、目的とするメモへジャンプするようにハイパーリンクを作った。もちろん個別ファイルの中でも、さらに参照項目があれば、そこへのダイレクトリンクも張った。 早速パソコン上で iSiloX を使って、一連の html ファイルを iSilo 用に変換し、HotSync で Palm に流し込んでみた。結果は予想以上のできばえ。目次を開き、見たいメモのタイトルをタップするだけで、瞬時にそれが表示される。便利だ。
昔作った「肺区域のX線上投影像」というJPEG 形式の図を白紙の html ファイルに貼り付けて保存し、再びパソコン上で iSilo 形式に変換して HotSync。目次をタップすると、これもほとんど瞬時に表示された。 変換時に「画像の大きさを
Palm の画面に合わせる」という設定にしてしまうと、適宜図が縮小(リサイズ)されてしまうようだ。iSiloX
を立ち上げてファイルを選択し、変換する前に、Document → Properties
と進み、この中の Images タブを選択する。Include Images
にチェックが入っているのを確認して、Resize large images のチェックを外せば、元の大きさで Palm に持ってこられることが分かった。 感動のあまり、思わずかねてから考えていた「予防接種スケジュール表」まで作ってしまった。
次に表も試してみた。 これも iSilo ではレイアウトが崩れることなく、きちんと表示されている。表が大きいと、表示するにはほんのわずかな時間が必要だけれど、これは許容範囲内。 さらに Web を直接取り込んでみる。これも問題なさそう。
すっかり有頂天になって、色々試してみたら、1つだけ問題が見つかった。 どうやっても「〜」と「−」が文字化けしてしまう。半角文字だと問題がないし、ほとんどの全角文字も文字化けなく表示されるのだけれど(FrontPage のツール→ページオプションで、Shift-JIS を選択)、なぜかこの2文字は文字化けしてしまう。 しばらく試行錯誤してみたもののうまくいかず、半ばあきらめていたところ、最初に iSilo を紹介してくれたぽちさんとおっしゃる方に、やはり解決法を掲示板で教わった。 iSiloX
での作業で変換予定の html
データ(あるいはフォルダ)を選択し、Document → Properties →
Document → TextEncodingOptions と進む。このウィンドウに出てくる「Output document text encoding」で "None"を選び、下の方(For source files...)は "Default"
を選択。
これで診療メモをすべてPalm に移せることが確認できた。教科書やマニュアルの図は、スキャナで取り込んでJPEG 形式で保存し、html ファイルに貼り付けるだけだ。ペイントソフトを使えば、図に修正などを加えることもできる。 Web 上には有用な医療情報があるし、アメリカには iSilo 形式のデータも多数公開されている。これらを取り入れて、診療メモを充実させることもできるだろう。 あとはこれまでためた診療メモを、時間を見つけては html ファイル化するだけ。でもためたメモはそれなりの量があるから、これがまた時間のかかる作業となりそうだ。それでも出来上がりを想像すれば、楽しい作業なのかな。 (6/8/04) |
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