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千葉県佐倉市下志津564-1
TEL:043-462-8811(代表)

肥満症に対する減量手術について

 

高度肥満症の外科的治療

高度肥満症治療のページもご覧下さい(佐倉病院 内科 糖尿病・内分泌代謝センターHP内)

はじめに

肥満症治療の基本は、「栄養療法」、「運動療法」、「内科的治療」であることは間違いありませんが、残念ながら約95%の方は長期的な体重減少を維持することは困難です。現時点では『減量手術』のみが、長期的な体重減少を図れることが証明されている唯一の方法となります。また減量手術後は肥満関連合併症である、糖尿病、高血圧、高脂血症、睡眠時無呼吸症候群などを改善させることがよく知られています。

減量手術とは

胃を小さくし食事摂取量の制限をすることが基本です。また消化吸収する腸管の距離を短くすることにより、栄養吸収を抑制する方法を追加することもあります。皮下脂肪吸引、切除は減量手術ではありません。

減量手術の歴史

減量手術は、60年以上の歴史と実績のある手術で、海外では年間30万件程度行われています。マラドーナやKONISHIKIさんも胃バイパス術をうけています。日本では1981年に故 川村功先生(千葉大学)により開腹減量手術が開始され、2002年からは笠間和典先生(現 四谷メディカルキューブ)により完全腹腔鏡下手術が開始されました。当院では2010年7月より減量手術を行っています。

手術適応

当院では日本肥満症治療学会のガイドライン(2013年版)の手術適応を採用しています。
手術適応となる肥満症患者は年齢が18歳から65歳までの原発性(一次性)肥満であり、内科的治療を受けるも十分な効果が得られず、次のいずれかの条件を満たすもの。
1) 減量が主目的の手術(Bariatric Surgery)適応は、BMI35以上であること。
2) 併存疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肝機能障害、睡眠時無呼吸症候群など)治療が主目的の手術(Metabolic Surgery)適応は、BMI32以上であること。
ただしこの適応での手術は臨床研究としてのものであり、厳格なインフォームドコンセント、臨床登録および追跡調査などを必須とする。
*保険診療による「腹腔鏡下スリーブ状胃切除」についてはBMI35以上であることが条件となります。

手術術式

現在日本で行われている主な手術は4つです。
食事制限のみの①スリーブ状胃切除と②胃バンディング。
食事制限、吸収制限を組み合わせた③胃バイパス術と④スリーブバイパス術。
当院では胃バンディングを除く、3つの手術から、肥満症患者さんの病態に応じた術式を提案しています。

各術式について

どの手術も効果があることは分かっていますが、それぞれ特徴と問題点がありますので、個人の問題点(落とすべき体重、糖尿病の有無、胃癌のリスクであるピロリ菌の有無など)、ライフスタイルに応じた術式選択を行う必要があります。

スリーブ状胃切除術

スリーブ状胃切除術
特徴
  • 胃をバナナの様に細くします(残る胃の容量は100ml)
  • 食事摂取の制限による体重減少
  • グレリン(食欲を刺激するホルモン)が減少
  • 日本で一番行われている。海外でも急増中
  • 2014年4月現在、保険で可能な唯一の減量手術
問題点
  • 比較的新しい術式で、長期成績が出ていない
  • バイパス系手術に比べ、リバウンドの可能性、糖尿病の改善率が悪い
  • 手術はシンプルだが合併症は治りづらい(縫合不全、胃管狭窄など)
  • 食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎のある方は避けるべき手術

胃バイパス術

胃バイパス術
特徴
  • 食事制限と吸収制限による体重減少
  • 世界で最も行われている
  • 長期成績がでている
  • 消化管ホルモンの分泌変化による糖尿病の改善率が高い
問題点
  • 手術がやや煩雑
  • 空置胃の観察(検査)がしづらい。胃がんのリスクがある方(ピロリ菌陽性、慢性胃炎など)には勧められない
  • ビタミンサプリメントの摂取が必要

スリーブバイパス術

スリーブバイパス術
特徴
  • 食事制限と吸収制限による体重減少
  • 胃バイパスと似た効果
  • 術後の胃の観察ができる(胃バイパスの欠点を補う)
  • 糖尿病の改善率が高い
問題点
  • 最も手術が煩雑
  • 栄養障害の可能性
  • ビタミンサプリメントの摂取が必要

修正手術 (後述)

修正手術について

減量手術は治療効果の高い治療法ですが、体重減少や糖尿病改善効果が得られない症例もあります。特にスリーブ単独の手術では、バイパス系の手術に比べて体重がリバウンドしやすく、また糖尿病に関しては治癒率が低い、また一旦改善した糖尿病でも再度悪化する可能性が高いという問題点があります。その原因としては術後の患者さんの食事、運動、栄養管理など生活習慣の問題もありますが、バイパスなどを追加する修正手術により初回手術の問題点を改善させ、再び長期間にわたる減量の維持、合併症改善のチャンスがあります。

開腹手術と腹腔鏡手術について

当院では保険診療として開腹での減量手術を行っていましたが、合併症が多いため、現在は行っていません。減量手術は腹腔鏡手術で行います。「キズが小さく、美容的によい」という以外に、「術野がよく見える」という安全面で大きなメリットがあります。

手術費用について

2014年4月現在、保険診療で受けられる手術は、「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術」のみです。
その他の腹腔鏡胃バイパス術、スリーブバイパス術、修正手術は自費診療となります。
手術費用

2014年9月1日現在

*保険診療費用は概算です。
*腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は保険診療ですが、周術期の安全確保のため、入院中は個室管理とし、別途費用をいただいています。

*自費診療の費用には、手術代、麻酔代、入院費(ICU管理費込)、検査費、個室費、食事代、薬代(手術に関する薬のみ)、手術入院期間中の術後合併症治療費が含まれます。
*担当医師が問題ないと判断すれば、術後は最長でも7日目までに退院となります。患者希望による入院期間延長は、別途個室代、治療費の追加分をいただきます。
*自費診療入院中は減量手術治療に直接関連しない病気の他科受診については行えません(混合診療の禁止)。
*長期入院を余儀なくされた場合(2週間以上)、状態が落ち着いていると担当医師が判断すれば個室から大部屋に移っていただくこともあります。


手術を決断する前に必ず読んでください

肥満症の改善のための最適な治療は必ずしも減量手術ではありません。当院での減量手術は慎重な術前検査・管理の下に行っているため、手術リスクはかなり低いと考えていますが、ゼロとは言えません。リスクとベネフィットを十分考えていただく必要があります。また減量手術は「魔法の治療」ではありません、あくまでキッカケです。術後の定期的な外来通院ができない方は、必ずやリバウンド、合併症の再発を来すといっても過言ではありません。
糖質制限食を始めとする食事療法が有効な方や、生活習慣の改善、運動療法の継続ができる方は是非その方法で健康を維持されてください。自力での努力が報われない方、また内科のサポートによる治療がどうしてもうまくいかない方に対しては、減量手術の門戸はいつでも開いています。
「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術」のみが保険適応な現状では、9割の方がこの術式を希望されます。しかし本来ならば手術法の決定にあたっては、治療費だけで決めるのではなく、病態に合った手術法を選択すべきです。
日本で減量手術を一番行っている四谷メディカルキューブのソーシャルワーカー中里哲也さんが、臨床外科 第66巻第8号で「減量手術の経済効果」について報告されています。
手術後は医療費、食費などが削減されるため、月平均43000円程度支出が減るそうです。
それ故、腹腔鏡手術費用(自費診療)が200万円程度かかっても、
  • 5年弱で元が取れます
  • その後は年約48万円の収益(収益年率21%)となります
  • 現在の20年長期国債金利2.1%の10倍、3年国債金利0.21%の100倍になります
すなわち『ローリスク、ハイリターン』の投資先ということになります。
海外からのデータでも同様に、3-4年で元がとれるとの報告が多くなされています。
保険で受けられる「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術」が、必ずしも貴方の問題を解決できるかどうかは分かりません。主治医とよく相談し、後悔のない選択をすべきです。

手術を受けるには

当院で実際に手術を受けるまでのハードルは、かなり高いことを覚悟しなければなりません。
  1. まず内科的治療、メンタルの介入による肥満症治療を6か月程度は外来ベースでうけていただきます(肥満症治療コーディネーター、理学療法士、栄養士によるサポートがあります)。
  2. 内科・外科の診療責任医が、「手術の適応がある」と、とりあえずの判断をすれば2週間から1カ月程度の内科教育入院をしていただき、減量によるリスクの軽減、合併症の治療、手術が可能かどうかの全身検査を行います。
  3. 最終的には、内科医、外科医、精神科医、心理療法士、看護師、理学療法士、栄養士からなる肥満症治療チームによりオべシティカンファレンス(肥満カンファレンス)が開かれ、「手術適応」について、全員の同意で決定します。

佐倉病院糖尿病・内分泌・代謝センター 初めて受診する方へ

手術をお断りする方

楽して痩せたいと思っている方、医療者と信頼関係が築けない方、喫煙する方(喫煙が発覚した場合には、直前であっても手術を中止し、今後手術をお受けしません)、術後定期フォローを約束できない方、肥満症治療チームにより不適と判断された方については手術をお受けできません。

手術時入院スケジュール

手術時入院スケジュール
手術は原則月曜日の午前中に行います。手術当日は慎重に術後経過をみるためにICUで管理します。翌朝には一般病棟へ戻り、食事が開始となります。基本的には手術後1週間で退院となります。

当院で手術をうけるメリット

さまざまな職種(医師、看護師、栄養士、理学療法士、心理療法士、肥満コーディネーター)から構成される肥満症治療チームによりサポートを行います。また総合病院として、麻酔科、循環器科、呼吸器科、放射線科、メンタルによるバックアップ体制も常時整っています。

手術実績、合併症

手術実績、合併症
開腹手術では2例のリーク(縫合不全)を経験し、2例とも難治性でありました。その苦い経験から現在は開腹での減量手術を行っていません。
腹腔鏡手術では、胃管狭窄、逆流性食道炎の合併症を経験していますが、内視鏡治療でいずれも改善しました。内視鏡治療が無効な場合、再手術を行うこともあります。

手術成績

データは症例数の多い「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術」について提示します。

術後体重減少について

術後体重減少データ
  • 20~30Kgの体重減少が得られます
  • 元の体重の20~30%の体重減少
  • 術後1年でリバウンド傾向の方もいます

超過体重減少率について

超過体重減少率データ
  • 平均すると5割強の方で、50%を超えますが、それに満たない方もいます。
*超過体重減少率:標準体重のBMI値を22とした場合、それよりも超過している分の体重がどの程度減少したかを表す。50以上が良好な成績だと言われています。

肥満関連合併症の治癒・改善率について

肥満関連合併症の治癒・改善率データ
  • 糖尿病、高血圧、高脂血症の改善・治癒率は高く、成績は良好ですが、術前からの内科治療、術後の集中的なフォローアップが大きな要因となっています。当院の長期成績(5年以上)はまだ出ておらず、この成績はあくまで短期での結果となります。

手術前後の実際の写真

※準備中
(掲載につきましては、ご本人の了承を頂いております)

参考動画

*腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が、まだ先進医療として扱われていた時に撮影された動画です(2013年8月15日)。 手術動画も含まれますのでご注意ください。