学術活動

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「夢を語る会」
基礎研究は二週に一度、臨床研究については月一度カンファランスを行っています。また毎年夏に、旅行を兼ねて宿泊先でカンファレンスを行っています。我々の間では通称「夢を語る会」と呼ばれています。右の写真は平成18年の夏、軽井沢で行われた「夢を語る会」です。家族も同伴オーケーです。これらのカンファレンスで、プロジェクトの進行状況、新しいテーマ、学会演題、論文などの学術的戦略が練られています。以下に主な研究テーマと成果を総括します。

研究テーマ

酸化コレステロールは動脈硬化巣内膜破綻に関与する。

心筋梗塞発症要因として、動脈硬化巣内膜破綻による血栓形成が重要であることが知られています。プラーク破綻をきたす病変は狭窄率50%以下が約半数を占め、必ずしも高度狭窄病変とは限りません。私たちはこのことから動脈硬化の病態として、狭窄機構のみならず内膜破綻機構が存在すると考えました。内膜破綻は内膜の薄くなった部分で生じやすく、その部分では細胞数もmatrixも減少していることが病理学的に観察されています(不安定プラーク)。私たちは動脈硬化巣にある酸化コレステロールが細胞数とmatrix減少に関与することを見出しました。

血中リポ蛋白リパーゼ蛋白量はインスリン抵抗性の臨床的マーカーである。

リポ蛋白リパーゼ(LPL)は、血流中のリポ蛋白中に含まれる中性脂肪を加水分解する酵素です。血管内皮表面に存在するため血中にはほとんど存在しないと考えられてきました。LPLのモノクローナル抗体が開発されると生理的な状態の血清中にも微量なLPL蛋白が存在することが判明したが、その血中濃度の生理的意義は不明のままでした。私たちはそれが生体のインスリン抵抗性の程度を正確に示す臨床的指標になりうることまで発展させてきました。

低エネルギー低糖質食は糖尿病治療に優れている。

減量治療食は、多くの場合糖尿病治療食に準じ高糖質食が用いられています。しかしながら糖質はインスリン分泌を刺激し、むしろインスリン抵抗性を悪化させる可能性があります。そこで私たちは、低糖質を作成し、それが高糖質に比し糖・脂質代謝に好影響を及ぼすこと、さらに内臓脂肪をより減少させることを見出しました。

フォーミュラー食は肥満、あるいは肥満合併糖尿病の減量に有用である。

フォーミュラー食とは、糖質、脂肪を極力制限し、蛋白質、ビタミン、ミネラルを充分量含有した粉末状の食事で、それを患者の好みのフレーバー(例えばコーヒー味やイチゴ味など)で溶いて飲むものです。私たちは減量食としてフォーミュラー食と通常食を組み合わせたコンビネーション法の有効性について検討しています。具体的には一日3食のうち、1食をフォーミュラー食のみで済まし、残りは400kcal食を行うやり方です。この方法は患者の認容性も比較的高く、外来での実施も容易です。

動脈硬化進展度の判定法としてのCardio Ankle Vascular Index (CAVI)の有用性

動脈硬化の診断は、脳、心血管イベントが発症してからでは手遅れであり、その予知因子として血管性状を定量的に測定できるものが求められます。それも外来レベルで行えてさらにある程度の精度のあるものが望まれます。それに応えるもののひとつに脈波伝播速度(PWV)がありますが、従来のPWVは血圧の影響を受ける、また測定法が困難といった問題点がありました。CAVIは最近登場した新しい動脈硬化診断法です。原理的には血圧の影響を受けず、動脈の固有機能を反映すると考えられています。充分なデータは無ありませんが、当院ではいろいろな角度からその有用性を検討しています。今後PWVに匹敵しうる測定法として広く普及していく可能性があるといえるでしょう。

高度高中性脂肪血症の病態解析

高中性脂肪血症は高度になると急性膵炎を引き起こすため、その予防のためにも原因検索は必要です。高度高中性脂肪血症の原因検索では、従来前述したリポ蛋白リパーゼ(LPL)の遺伝子異常を中心に検討されてきました。しかし、LPL遺伝子に関しては多くの症例で異常のないことが判明し、病態と原因が明らかでない例が数多く存在する状況です。そこで私たちは、LPL以外の高度高中性脂肪血症を起こす複数の因子を調べてきました。現時点で、高度高中性脂肪血症の一部でLPL反応阻害因子であるAngiopoietin like-3が高値であることや、約半数でアポ蛋白A-V遺伝子異常が存在することを見出しています。

原因不明の高度高中性脂肪血症症例がありましたら、病態解析のお手伝いをさせていただきますのでご連絡ください。

血管弾性指標CAVIと中心性肥満指標の関連についての研究

日本労働文化協会恵比寿健診センターを2004年から2006年までに受診した患者の匿名化(特定の個人を識別することができない)したデータを用いて、血管弾性指標CAVIと中心性肥満指標の関連性を調べる研究を行います。

その他

  • 肥満のパーソナリティー分析とそれを考慮した治療法
  • 脂肪細胞の増殖分化機構さらに血管新生機構
  • 酸化ストレスと血管内皮細胞障害
  • 糖尿病性腎症の新たな治療(Sakura study)
  • 酸化ストレスの糖尿病腎症進展への関与
などを主な研究課題として行っています。

学術集会

2008年7月19日第1回佐倉病院学術集会内科発表(糖尿病・内分泌・代謝センター)

参考文献

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東邦大学医療センター
佐倉病院 糖尿病・内分泌・代謝センター

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