神経内科

末梢神経障害、ギランバレー症候群(急性疾患)

末梢神経の位置づけ

末梢神経の位置づけ
末梢神経の位置づけ

概括

末梢神経障害(特に多発ニューロパチー)とは、脳神経根・脊髄神経根またはそれより末梢における神経(軸索[電線の芯に例えられます]または髄鞘[電線の絶縁体に例えられます])の障害をいいます。末梢神経障害では、四肢の腱反射低下・消失、四肢(特に下肢)遠位部主体の筋力低下・筋萎縮および感覚低下・しびれ、歩行時ふらつき(深部感覚障害による)などをきたします。障害が強くなると体幹中央部、口周囲にも感覚低下がみられることがあります。多発ニューロパチーとは、手足の先(手袋・靴下型分布ともいいます)、特に両足先に、左右差なく、症状が出るものをいいます。診断には神経伝導検査が有用であり、障害神経の分布や特徴をとらえることができます。痛覚や、末梢自律神経系を構成する細い線維(Adelta/C線維)の、伝導速度や筋交感神経活動は、マイクロニューグラムにより調べることができます。
ギラン・バレー症候群(以下GBSと略します)は、炎症性ニューロパチーの代表的なものであり、急性・亜急性に四肢の運動麻痺、軽度の感覚障害、四肢の反射低下・消失を来し、進行すると呼吸筋麻痺に至る病気です。運動麻痺は、多発ニューロパチーのみならず、手先や、下肢近位部に目立つことも少なくありません。約60%に頻脈・脈拍の変動などの心・循環系障害、約27%に頻尿・尿閉などの膀胱障害がみられます。しかし、呼吸筋麻痺を乗り切ると、その後かなりの改善が期待できる疾患です。古典型は脱髄型といい、髄鞘が障害される病気であり、本邦のGBSの約40%を占めます。一方、運動神経のみが障害される型を、純運動型といい、本邦のGBSの約60%を占めます。純運動型の病態機序が解明されつつあります。純運動型は、先行感染としてキャンピロバクター・ジェジュニ細菌による下痢性腸炎が多く、腸炎の回復から数日後(腸炎の発症から1-2週間後)、キャンピロバクター・ジェジュニと末梢神経の構成成分であるガングリオシドとの、交叉抗原による自己免疫的機序により、純運動型ギラン・バレー症候群を発症します。免疫とは、本来、自分の体を外敵から守るために、我々の体に備わっているもので、具体的には、リンパ球や、免疫グロブリンなどがその働きを担当しています。しかし、その免疫機構に異常を来たすと、この免疫機構によって自己の体の細胞を攻撃してしまう状態となり、自己免疫疾患といわれます。有名なものは、慢性関節リウマチなどの膠原病であり、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、重症筋無力症などの神経筋疾患も、自己免疫疾患に属します。ギラン・バレー症候群(純運動型)の亜型として、ものが二重に見える・歩行時ふらつくといったフィッシャー症候群、嚥下障害が目立つ咽頭頚部上腕型(PCB型といいます)などがあります。

検査

入院時、便培養によるキャンピロバクター・ジェジュニ細菌の検出、痰培養・血液検査による呼吸器感染菌やウィルスの検出をします。神経伝導検査(電気生理検査)では、末梢神経の根(F波の消失、知覚誘発電位の異常)、遠位部(遠位部潜時の延長)、生理的圧迫部位等での伝導ブロックが不均一にみられ、多発単ニューロパチー的な所見を呈するのが特徴的です。一方、軸索型GBSは、感覚神経に異常がみられないのが特徴的です。神経伝導検査の異常は、発症2週間後にむしろ明らかとなることが少なくありません。抗ガングリオシド抗体は、軸索型GBSで高率に陽性となります。抗ガングリオシド抗体の中で、フィッシャー症候群ではGQ1b抗体が、咽頭頚部上腕型ではGT1a抗体などが特徴的に上昇します。髄液検査では、細胞数は正常で、総蛋白量のみが上昇するのが典型的です(蛋白細胞解離)。自律神経障害がある場合、その程度やパタンを、自律神経検査で調べます。歩行障害に対してビデオ歩行解析(モーションキャプチャー)/評価表評価(病気ごとに評価表があります)を行います。深部感覚性運動失調がある場合、重心動揺計を行います。

治療

他の自己免疫疾患と異なり、ギラン・バレー症候群ではステロイドは用いません。入院による免疫グロブリン大量療法(IVIG)または血漿交換療法を行います。前者は点滴治療であり、負担が少ないことから選択されています。IVIG治療と平行して、リハビリテーションを行います。びりびりしたしびれが目立つ場合は、しびれの特効薬を開始いたします。残尿が100ml以上ある場合は、間欠導尿や、残尿を減少させる薬を開始いたします。東邦大学佐倉病院は、救急部門を有する大学病院です。このため、リハビリテーションの継続が必要な時期に、適切なリハビリテーション専門病院への、転院紹介をいたします。その場合も、佐倉病院神経内科への、定期的な通院が可能です。予後は、長期的な完全回復が多くみられますが、後遺症を残す場合もみられます。再発することはほとんどありません。