神経内科

重症筋無力症(亜急性・慢性疾患)

神経筋接合部のはたらき(メーカーイラストより)
神経筋接合部のはたらき(メーカーイラストより)

概括

重症筋無力症は、末梢神経と筋肉の接合部にある、アセチルコリン受容体が障害される自己免疫疾患です。抗アセチルコリン受容体抗体が出現する病態機序として、胸腺(胸骨の下で、心臓の前方の、縦隔に位置するリンパ系組織。正常では乳幼児期に退縮します)に存在する、筋様細胞に対する抗体が出現し、同抗体が全身の神経筋接合部のアセチルコリン受容体を障害するという、交叉抗原が推定されています。それに伴って、退縮していた胸腺が、過形成をおこしたり、胸腺腫を形成する場合があります。

症状

症状の出現は、数日から2週間程度と亜急性のことが多いものです。主な症状として、眼筋が障害されやすく、ものが2重に見える、まぶたが下がるなどの症状が出現します(眼筋型)。続いて、手足に力がはいりにくい、噛みにくい、ものが飲み込みにくい、などの症状が出現し(全身型)、進行すると呼吸筋麻痺に至る病気です。一方、症状がある程度、自然寛解する場合もあります。朝は調子が良いが、夕方になると力がはいらなくなる、動作を繰り返したり、維持することが困難になる、という易疲労性が特徴的にみられます。ごく稀に、眼症状・易疲労性が目立たず、筋ジストロフィーや、筋萎縮症とまぎらわしい病像を呈することがあります。

検査

テンシロン試験は、重症筋無力症の検査薬/短時間型特効薬である、エドロフォニウム薬(アンチレクス)を静脈注射し、筋無力症状が改善する場合、陽性と判定します。症状のある筋肉部位で、反復電気刺激検査、単一線維筋電図検査を行います。反復電気刺激検査では、3Hz刺激、20Hz刺激共に、誘発筋電図の振幅が異常に(10%以上)減少する場合、陽性と判定します。抗アセチルコリン受容体抗体は、眼筋型では陰性となることが少なくありませんが、全身型筋無力症では約70%で陽性となります(古典型)。全身型筋無力症の残りの30%の方の中には、抗マスク (MuSK)抗体が出現する型があります。抗マスク抗体陽性筋無力症では、反復電気刺激検査が陰性となるなど、症状が非典型的な場合があります。

治療

眼筋型筋無力症の対症療法として、神経筋伝達を改善させる薬(抗コリンエステラーゼ阻害剤:メスチノンなど)を用います。全身型で古典型の場合、ステロイド漸増療法プラス拡大胸腺摘除術を行います。東邦大学医療センター佐倉病院では、神経内科に入院をして頂き、初期評価の後、ステロイド漸増療法を開始し、ステロイドが十分量に至ったところで、外科に転科を致します。拡大胸腺摘除術が終了いたしますと、再び、神経内科に戻って頂き、良い経過を確認してから退院、外来通院と致します。ステロイドの併用により、手術前後のクリーゼ(呼吸筋麻痺)の頻度を減少させることができます。ステロイド漸増療法プラス拡大胸腺摘除術により、抗アセチルコリン受容体抗体が減少し、症状が改善いたします。全身型で抗マスク抗体陽性の場合、胸腺摘除術は余り行われなくなりました。古典型全身型で胸腺摘除術の効果が十分でない場合、また抗マスク抗体陽性全身型の場合、免疫抑制剤(プログラフなど)やステロイドの内服、入院による血漿交換療法などを行います。重症筋無力症は厚生労働省特定疾患(公費負担対象)であり、最寄の保健所に申請をいたします。