神経内科

多発性硬化症(亜急性・慢性疾患)

多発性硬化症のMRIでの散在性プラーク
多発性硬化症のMRIでの散在性プラーク

概括

多発性硬化症(以下MSと略します)は、中枢神経系の脱髄性疾患の代表的なものです。視神経、脊髄、脳幹、大脳、小脳などの白質に、病変が多巣性に生じ、臨床症状に再発、寛解を繰り返すのが特徴です。MSの有病率は、本邦では人口10万当り1.0-3.9であり、北ヨーロッパ、アメリカ北部、カナダの30-80と比べると低いとされます。北半球では一般に緯度が高くなるほど有病率が高くなります。発病は20-40歳が54%を占め、男女比は1:1.7と女性に多くみられます。すなわち、若年の女性に比較的好発する病気といえます。ミエリン構成成分を自己抗原として認識する、T細胞の異常反応により生じる自己免疫疾患と考えられていますが、真の病因はなお明らかではありません。自己抗原としてはミエリン(髄鞘)塩基性蛋白(MBP)などが注目されています。

症状

症状の進行は数日から2週間程度と亜急性のことが多いものです。主な症状として、視力低下(一側または両側)(球後視神経炎)(眼科から神経内科にしばしば紹介されます)、四肢の筋力低下・四肢体幹の感覚障害・排尿障害(横断性脊髄炎)、複視・めまい・顔面麻痺・構音障害・えん下障害(脳幹病変)、片麻痺・半身の感覚障害(大脳病変)、運動失調(小脳病変)などが組み合わさってみられます。症状が自然に寛解することがありますが、不完全なことも少なくありません。寛解・増悪をくり返すことが多いですが、緩徐進行型もみられます。これらを古典型といい、視神経と脊髄に症状が目立つ型を視神経脊髄型といいます。

検査

症状が出現する時期に、脳脊髄液検査では軽度の蛋白細胞増多がみられ、髄液中にMBPやオリゴクローナルバンドが認められます。頭部MRIでは、潜在性のものを含めて、大脳白質その他に病変が散在するのが特徴です。MSでは、造影MRIを行うと、病変の活動性が明らかになります。感覚誘発電位、聴性誘発電位、視覚誘発電位検査で、感覚神経の病変をとらえます。MSの視神経脊髄型は、Devic病ともいい、アクアポリン4(細胞の水の出入りを制御する水チャンネルの構成蛋白質)に対する抗体が陽性になることが多く、本邦に多くみられます。

治療

症状が出現してまもない急性期に、入院による大量ステロイド点滴療法(ステロイドパルス療法)を行います。症状が軽い場合、外来でのステロイド剤の内服も行われます。ステロイド剤が有効でない場合、免疫抑制剤の内服投与、大量ガンマグロブリン療法(IVIG)、血漿交換療法などを行います。症状が寛解した後、古典型の再発予防には、外来でインターフェロンの自己注射を行い、視神経脊髄型の再発予防にはステロイド剤の少量持続内服を行います。MSは厚生労働省特定疾患(公費負担対象)であり、最寄の保健所に申請をいたします。MSの寛解期症状/後遺症状の中で、下肢の痙性対麻痺がある場合は、抗痙縮薬とリハビリテーションを、ウロラボを施行して神経因性膀胱がある場合は(過活動膀胱と残尿が同時にみられるのが特徴的です)、過活動膀胱と残尿のそれぞれに対して、治療薬および間欠導尿を、しびれがある場合は、しびれの治療薬を開始します。