神経内科

脊髄小脳変性症

脊髄小脳変性症の中の脊髄小脳性失調症6の脳MRI画像.
脊髄小脳変性症の中の脊髄小脳性失調症6の脳MRI画像.

概括と症状

脊髄小脳変性症は、従来、進行性の運動失調症状を主徴とする変性疾患と考えられてきました。しかし、近年の研究により、脊髄小脳変性症は、運動失調症状を呈する病気の集まりと考えられるようになってきました。これは、たとえば、膠原病が病気の群であり、代表的な病気が関節リウマチであるのに似ています。
脊髄小脳変性症群は、発現様式により遺伝性と非遺伝性とに分けられます。非遺伝性は、脊髄小脳変性症の60-70%を占め、後述の多系統萎縮症、晩発性小脳皮質萎縮症などが含まれます。一方、遺伝性は、脊髄小脳変性症の30-40%を占めます。この中で、遺伝子型がわかっているものが約7割、遺伝子型が未定のものが約3割とされます。遺伝子型がわかっているものの中には、脊髄小脳性失調症1(SCA1), 脊髄小脳性失調症2(SCA2), 脊髄小脳性失調症3(SCA3, マチャド・ジョセフ病ともいいます), 脊髄小脳性失調症6(SCA6), 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)などがあり、その多くが、原因遺伝子の一部にCAGまたはGAA反復(トリプレットリピート)の異常延長があることが明らかとなり、機能障害との関連が注目されています。ただし、遺伝性の型でも、他の家族の方に、同じ病気がみられない場合があり、晩発性小脳皮質萎縮症と思われた方でも、脊髄小脳性失調症6が明らかになる場合があります。これらのうち、本邦では、SCA3、SCA6が多くみられます。SCA6ではカルシウムチャネル遺伝子の中に、トリプレットリピートの異常延長がみられます。臨床的に、小脳症状のみを呈し、進行が非常に緩徐な時はSCA6を疑い、運動失調性対麻痺・複視を呈する時はSCA3を、てんかん・ミオクローヌス・舞踏運動を呈する時はDRPLAを疑います。脊髄小脳変性症の中には、痙性(足のつっぱり)が主体となる、遺伝性痙性対麻痺が含まれます。

検査

後述の多系統萎縮症に準じた、各種検査を行います。脳MRIでは、SCA6は小脳萎縮のみを呈し、その他の遺伝性脊髄小脳変性症では脳幹萎縮や、大脳白質病変などを伴います。遺伝性痙性対麻痺では、通常のMRIで異常がみられないことも少なくありません。SCA6、SCA3、遺伝性痙性対麻痺その他の遺伝性脊髄小脳変性症の確定診断は、末梢血中白血球等の遺伝子解析によって行われます。遺伝子採血の前に、詳しいご説明をし、同意を頂けた方にのみ検査を行っております。ご説明は以下の2点を含みます。1)遺伝子検査は、他のご家族の方に若干の影響がございます。しかし上述の如く、遺伝性の型でも、ある患者さんの祖父母、ご両親兄弟に、病気が全くみられない場合があります。すなわち、遺伝性の型でも浸透率が一定でなく、発症しないことが少なくありません。一方、発症前診断は、例外的な場合を除き、あまり行われません。2)遺伝子が明らかとなっても、すぐに原因療法(遺伝子治療など)を行うことは難しいものです。しかし近年、御自分の病気を明らかにしたい、と検査を希望される方が増えてきました。

治療

脊髄小脳変性症は難病ですが、運動失調症状の改善薬があります。タルチレリン(セレジスト)などを用い、運動・作業のリハビリテーションを行います。痙性(足のつっぱり)に対して、チザニジン(テルネリン)などを用います。遺伝性痙性対麻痺の方で、内服薬に抵抗性の高度痙性に対して、東邦大学医療センター佐倉病院では、バクロフェン髄注療法(ITB)を行っておりますので、御相談下さい。脊髄小脳変性症は厚生労働省特定疾患(公費負担対象)であり、必要時申請を行います。入院中の方は、入院の後半でお薬を開始し、副作用がないことを注意深く見届けてから、退院・外来通院といたします。その他の症状の治療薬についてもご相談下さい。なお、脊髄小脳失調症6に対して、治験(医師主導臨床研究)を行っておりますので、神経内科外来受付までご相談下さい。