神経内科

緊張性頭痛と片頭痛 (良性頭痛)

脳MRI画像
脳MRI画像
左: 良性頭痛のMRI (正常。8年前からの持続性頭重と、年に2回の吐き気を伴う拍動性頭痛、視覚性前兆なし)、右: クモ膜下出血のMRI (初めての激しい頭痛、前交通動脈瘤破裂).  左のMRIが頭痛の95-97%を占める。

概括と症状

頭痛は、麻痺と同様に、神経症状の一つです。麻痺の原因が脳卒中などであるように、頭痛には原因があります。麻痺を例としてみますと、麻痺は、一般に、内科/外科的入院を要する率が高いものです(重症麻痺)。重症麻痺の頻度は十分に明らかでありませんが、外来麻痺患者さんのおよそ80%を占めると思われます。とくに、体の半身が急にきかなくなった場合は、脳卒中を疑います。入院を要しない軽症麻痺の原因として、ヒステリー型神経症(身体表現化障害ともいいます。精神科の病気ですが、治療抵抗性の場合があります)、単一末梢神経の圧迫性/炎症性障害などがあります。
頭痛についてみますと、頭痛は、一般に、内科/外科的入院を要する率(いわゆる悪性頭痛、2次性頭痛ともいいます)は低く、外来頭痛患者さんのおよそ3-5%を占めると思われます。2次性頭痛の原因として、クモ膜下出血(突発、強度、嘔吐、しばしば意識障害を伴う、脳動脈瘤の破裂による)、脳腫瘍(臥位で頭蓋内圧が亢進するため朝方に多い頭痛、しばしばてんかんを伴う)、脳内出血(頭痛は軽度のことがある、しばしば意識障害、片麻痺を伴う)、脳動脈壁解離(後頭部痛、しばしばめまい、ふらつき、片麻痺を伴う、合併する脳梗塞による)、慢性硬膜下血腫(1か月前に頭部打撲、しばしば認知症、両足の歩行障害を伴う)、髄膜炎(発熱がある)、脳炎(発熱と意識障害がある)などがあります。
良性頭痛(1次性頭痛ともいいます)は、頭痛の大多数を占め、大きく緊張性頭痛と片頭痛に分けられます。15歳以上人口での罹病率は、緊張性頭痛が22.3%、片頭痛が8.4%とされることから、その比率は、およそ緊張性頭痛 : 片頭痛 = 3 : 1 と考えられます。これは、幅広く初診外来患者さんを拝見する、総合診療外来での経験とほぼ一致しております。しかし、神経内科外来では、片頭痛の比率が増加し、頭痛専門外来では、緊張性頭痛よりも片頭痛の方が多くみられます。その理由の1つとして、頭痛の程度が強い片頭痛患者さんの受診率が高いことが考えられます。また、緊張性頭痛と片頭痛の合併(混合性頭痛)も少なくありません。
緊張性頭痛は、男女比が 1 : 1.6とやや女性に多くみられます。自覚症状の特徴は、圧迫感、締め付け感、重い(非拍動性)、両側性、体動で不変軽快、比較的軽度、とされます。しばしば、項部・肩・上腕筋部の痛み、こり、圧痛がみられます(頚肩腕症候群ともいいます)。国際頭痛分類第2版(2003年)では、持続が1回7日以上続くもの、とされています。毎日1年中ある、と訴える方も少なくありません。2次性頭痛と異なり、神経学的他覚徴候はみられません。合併しやすい症候として、良性発作性頭位めまい(動くとくらっとするめまい)、神経症(いらいら、不眠、ストレス)などがあります。まれに神経調節失神(しゃがみ込みたくなるめまい/立ちくらみ、血圧と脈拍が同時に下降するもの)、過呼吸症候群(ストレスを契機に両手先がしびれたり意識が遠のく、血液ガス検査で炭酸ガスが低下するもの)、ヒステリー型神経症(神経学的に説明できない顔面のしびれなど)を伴うことがあります。
片頭痛は、30歳台では男女比が 1 : 4と女性に多くみられます。このうち、目の前がリング状にぎらぎらして見えにくくなり、リングが視野の中心から30分ほどで周辺に移動し消失するものなどを、閃輝性暗点といい、激しい頭痛にしばしば先行することから、頭痛の視覚性前兆といいます。視覚性前兆があるものを古典型片頭痛、ないものを普通型片頭痛といい、その比率は、古典型: 普通型 = 1 : 2 とされます。自覚症状の特徴は、拍動性、片側性、体動で増悪、悪心嘔吐、光音過敏、重度、とされます。国際頭痛分類では、持続が1回3日以内とされ、通常、数時間から半日で消退します。反復性については、毎日ある頭痛は片頭痛ではない、と考えられています。古典型片頭痛の視覚性前兆のメカニズムとして、視覚に関係する後頭葉の機能異常が知られています。機能的脳画像による研究では、視覚性前兆の発作中、光刺激に対する後頭葉の正常な賦活が低下し、その賦活低下は、後頭極からゆっくり前方に拡大します(拡延抑制)。後頭葉はグリア細胞が比較的少ないことから、グリア細胞由来カリウム緩衝作用の低下が、拡延抑制の一因とされています。国際頭痛分類では、視覚異常の他に、自発的ちくちく感/感覚低下(触刺激を加えると、刺激部位に痛みを感じることをアロディニアといい、片頭痛患者の41%にみられたとの報告があります。一方、緊張性頭痛でアロディニアがみられたとする報告もあり、その機序と鑑別上の意義はなお議論があるようです)、失語症がみられる場合があると記載されています。これらは、感覚野、左半球言語野の機能異常を、片頭痛できたしうることを示唆するものです。さらに、物が2重に見える、回転性めまいを伴う場合を脳底(脳幹)型片頭痛、片麻痺を伴う場合を片麻痺(運動野)型片頭痛といいます。ただし、後頭葉、感覚野、運動野、左半球言語野、脳幹の症状がある場合、それを片頭痛のためとするには、脳MRIなどを行い、2次性頭痛を否定しておく必要があります。群発頭痛は、15歳以上人口での罹病率が0.1%と稀で、男女比が4: 1と男性に多くみられます。典型例では、1年間のある時期に、3-5週間毎日出現し、自然に軽快します。自覚症状の特徴は、片頭痛の極めて重度なものといえます。神経学的他覚徴候として、縮瞳・眼瞼下垂、結膜充血・流涙、鼻閉・鼻漏、眼瞼浮腫、発汗(前額部・顔面)、落ち着かない/興奮、などがあります。これらは、眼部自律神経中心の障害(ホルネル症候群、交感神経麻痺)と想定されます。群発しない女性の古典型片頭痛患者でも、これらの眼部自律神経徴候が時に観察されます。

推定原因と検査

緊張性頭痛の推定機序として、ストレス説と末梢説が知られています。後者は、常同姿勢その他の原因による筋肉の収縮とされ、末梢性作用のみを有するボツリヌス毒素の局所注射が有効とされることも、末梢説を支持するものです。緊張性頭痛は、MRIを含めた通常検査で異常がみられません。
片頭痛の推定機序として、椎骨脳底・後大脳動脈、内頚・前・中大脳動脈を支配する頭蓋内三叉神経のセロトニン作動性神経と、血管平滑筋のセロトニン1B/D受容体の機能異常(低下)が知られています。片頭痛時の脳血流は、最近のSPECT等による研究では、非頭痛時と比べ、不変または低下とする報告が多いようです。片頭痛は、発症年齢が30歳以下のことが多く、家族性が1-17%にみられます(緊張性頭痛でも家族性が2-5%にみられます)。脳底型、片麻痺型はしばしば家族性にみられます。家族性片麻痺型片頭痛(FHM)の原因遺伝子は、カルシウムチャネル(CACNA1A)遺伝子、ナトリウムチャネル(SCN1A)遺伝子、Na/K ATP ase遺伝子が知られています。古典型片頭痛で発症しうる病気として、CADASIL(Notch遺伝子)、MELAS(ミトコンドリア遺伝子)などがあり、その他ドパミン, GABA遺伝子などの関与が知られています。片頭痛は、MRIを含めた通常検査で異常がみられません。

治療

緊張性頭痛に対して、筋弛緩作用と安定作用を併せ持つジアゼパム、抗うつ薬のアミトリプチリンなどを用います。片頭痛に対して、セロトニン1B/D受容体刺激作用のある、スマトリプタン、ゾルミトリプタン、エレトリプタンなどを用います。内服による効果発現に時間がかかるとき、スマトリプタンの点鼻液および自己注射も有効です。緊張性頭痛と片頭痛の合併(混合性頭痛)の場合、緊張性頭痛の治療を先に行うと良い場合があります。