加齢に伴う腎機能の低下はヒトやラットなどの動物にみられます。タンパク尿症、特にアルブミン尿症は糸球体基底膜の透過性亢進による血漿アルブミンの原尿への流出によると考えられていましたが、最近、正常な腎臓においても多くのアルブミンが糸球体基底膜を通過していることがマイクロパンクチャー法などにより明らかになりました。糸球体基底膜を通過し、原尿にもれ出た殆どのアルブミンは、近位尿細管の刷子縁膜近傍に局在する2 種類のアルブミン再吸収受容体、megalin とcubilin の協調的作用により細胞内に取り込まれるため尿へ排泄されません。事実、一方のレセプターが傷害されるとアルブミン尿症を発症します。
加齢とアルブミン尿症
研究テーマ:加齢とアルブミン尿症 : Megalin/Cubilin受容体
私達は、腎臓のmegalin、cubilin量や組織分布の加齢変化を調べ、老齢ラットのアルブミン尿症の重篤度が高い個体ほどmegalin 発現量が低く、断片化cubilin 傷害分子の蓄積量が多いことを見出しました。また、両受容体の細胞局在がアルブミン尿症発症に伴い異常になっていることを見出しました(Odera K et al. Biogerontology, 8:505-515,2007)。この結果は、加齢に伴うアルブミン尿症の原因のひとつが受容体の量的質的異常と細胞局在の変化であると考えられます。なお、現在は食餌制限による老齢動物のアルブミン尿症改善メカニズムの研究を進めています。 (大寺 恵子)
研究紹介
- 加齢速度と環境因子
- 老化促進モデルマウス(SAM)
- 鉄と老化
- 加齢とアルブミン尿症