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老化促進モデルマウス(SAM)の老化促進分子機構

SAMマウスが東邦大学にやって来て約20年!

老化促進モデルマウス(senescence accelerated mouse, SAM)は、京都大学の竹田俊男(現SAM研究協議会会長、京都大学名誉教授)らにより、AKR/J系マウスと未知の系統との不測の交雑が生じたマウスコロニーから、老化度評点の加齢依存的な急速な増加を指標として確立されたマウス系統です。
SAMは促進老化・短寿命を示すP系(prone)と正常老化を示すR系(resistant)に大別されています。P系は更に老化アミロイドーシス、学習・記憶障害、老年性骨粗鬆症、白内障等の老化関連病態からいくつかの系統に分類されています。SAMの詳細については「老化促進モデルマウス(SAM)研究協議会」のホームページをご覧ください。

老化促進モデルマウス(SAM)研究協議会

東邦大学薬学部生化学教室では、1988年11月に竹田俊男先生より学習記憶障害を特徴とするP8系(F?+43)と正常老化を示すR1系(F?+38)を分与して頂きました。その後、本学部実験動物センターでの繁殖維持が25世代を過ぎたことから、2001年8月31日に両系統名の後に機関名「Toho」を付し、SAMP8/Toho, SAMR1/Tohoとしました。機関名「Toho」は、Institute for Laboratory Animal Reserch (ILAR)に申請登録済です。

老化モデル動物としてのSAM

私達は、SAMの「老化モデル動物として有用性」を明らかにするために「促進老化」などの加齢特性を遺伝子発現の加齢変化を指標に調べています。もし、正常老化型R系マウスの促進老化型がP系マウスであるならば、P系の「誕生→老化→成熟→老化→死」の一連の過程はR1型と比べ相対的にはやまっているが予想されます(図1)。
図1
図1

次に、SAMの加齢特性をmajor urinary protein (MUP、別名α2u-globulin)遺伝子発現の加齢変化を指標に調べた私達の研究を紹介します。
MUPは、雄ラット肝臓でアンドロゲン依存的に遺伝発現が行われ、合成後、尿に排泄されるタンパク質です。フェロモンなどの臭い物質を結合し、個体特有の臭いを発生するのに役立っています(図2)。
MUP遺伝子は、離乳期後ごろから発現を開始し、その発現量は3ヶ月齢ごろに最大となり、その後加齢に伴いほぼ直線的に低下することから、「老化マーカー蛋白質」と呼ばれています。
図2
図2

SAMP8系とSAMR1系雄の肝臓におけるMUP mRNA発現の開始時期は、いずれも約30日齢ぐらいで両系統に大きな差は認められませんでした。その後、両系統のMUP mRNA発現量は急激に上昇し、90日齢ごろで最大に達しましたが、その増加割合および最大に達する時期はR1系に比べP8系が早い傾向が認められました。最大発現時期を過ぎるとMUP mRNA量は、それぞれの系統の生存率低下とほぼ平行な曲線を描いて低下し続け、P8系では約600日、R1系では約900日で検出できないレベルまで低下しました(図3)。
このように加齢に伴うMUP mRNA発現パターンはR1系に比べてP8系で相対的に速まっている傾向にありました。同様なP8系の促進的現象は、脳の遺伝子発現でも起きていることを私達はすでに見出しています。現在、SAMP8系の老化促進現象がどのような原因で、いつはじまるのかを調べています。
図3
図3

SAMP8とSAMR1の寿命

本学部実験動物センターコンベンショナル動物飼育施設(室温:23±1℃、湿度:50~60%、飼料CE-7)における 雌雄のSAMP8/Tohoの寿命はSAMR1/Tohoの約半分です(図1)。また、老化促進型P8系のやや毛並みは、正常老化R1系と比べて早い時期から悪くなりはじめます(図4、写真)。
図4
図4