鈴木 翔
オカダトカゲにおける視覚的捕食者認知機構の実験的検証
伊豆諸島の新島と神津島には,オカダトカゲ(Plestiodon latiscutatus)とその主要な捕食者であるシマヘビ(Elaphe quadrivirgata)が高密度で同所的に生息している.新島のシマヘビには3パタンの色彩多型がみられ,一方で神津島のシマヘビは単型色で,両島間で捕食者の表現型に違いが見られる.また,新島と神津島ではシマヘビが生息しているのに対し,八丈小島ではシマヘビが生息していない.
被食者にとって捕食者は脅威であるため,被食者は様々な情報から捕食を回避するための行動をとる.私は,オカダトカゲがシマヘビを視覚的にどう捕食者であると認知しているのかということに注目し,被食者であるオカダトカゲの捕食者に対する視覚情報を用いた捕食者認知機構の島嶼間での違いを,シマヘビモデル(Snake clay replica)を用いた野外実験により検証している.また,新島・神津島と八丈小島のオカダトカゲの捕食者認知機構を明らかにすることで,視覚的な捕食者認知機構が,先天的か?後天的か?についての根本的な疑問に対する解答を与えようとしている.さらに,本分野におけるプロジェクトの最終目標である,シマヘビとオカダトカゲの島嶼個体群間の適応的分化・個体群動態の解明に繋げるための応用的研究も本研究と併せて行っている.
2015年度
- 小林 篤「乗鞍岳に生息するライチョウの個体群研究と保全に向けた取り組み」
- 加賀山翔一「淡水性カメ類の現状把握と保護管理対策の検討」
- 坂入 一瑳「都市近郊におけるジャノメチョウの分布と景観応答」
- 藤原 加苗「クロオオアリ Camponotus japonicus における日周活動性の種内変異」
- 山崎 響子「房総半島南部におけるアライグマの捕食圧における在来生物への影響評価」
- 伊勢兕 泰「谷津田の湧水環境におけるオニヤンマ幼虫の生息密度と齢構成に及ぼす環境要因:アメリカザリガニとの相互作用」
- 大竹 海也「ラジオテレメトリ法によるニホンイシガメの環境選好性の季節変化」
- 下藤 章「淡水性カメ類における甲板表面の年輪を用いた成長過程の推定」
- 鈴木 翔「オカダトカゲにおける視覚的捕食者認知機構の実験的検証」
- 吉田 和哉「アライグマ低密度地域における効率的な捕獲方法の確立と遺伝構造の分析」
- 飯田 綾乃「都市部の緑地における,シジュウカラ P.minor とヤマガラ P.varius の分布要因」
- 桑原 里奈「千葉県野田市の水田環境におけるコウノトリ餌動物量を決定する要因」
- 宍倉慎一郎「千葉県の河川におけるクサガメの個体群構成」
- 鈴木 広美「印旛沼流域における特定外来生物ナガエツルノゲイトウの分布拡大:揚水機場を通じた河川から水田そして再び河川への拡散過程」
- 高橋 潤「アカテガニの形態的特性と環境選好性」
- 寺内 一美「伊豆諸島海域の湧昇の発生に伴った海鳥の個体数の変化の解明」
- 廣瀨 未来「アライグマの効率的な捕獲に向けた水田地域における足跡残存地点の推定」
- 廣中 舞一「カミツキガメが水鳥に与える影響について」
- 古澤 洵「トカゲ類における尾の自切 -自切による生残率の改善効果は,自切位置によってどのような影響を受けるのか-」
- 村上 新「シマヘビにおけるストライプパタンの個体発生—色素細胞の観察—」
- 武田 広子「コウノトリ(Ciconia boyciana)の採食生態」
- 藤田 薫「伊豆諸島とその周辺本土におけるヤマガラの集団構造」「キブシをめぐる生物間相互作用」
- 辻井 聖武「侵入先と捕獲圧に対するカミツキガメ(Chelydra属)の生活史の変化」