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東邦大学理学部
生物分子科学科

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研究紹介

 

研究内容

有機合成を基盤とする機能性分子の開発

  私たちは、有機合成化学の手法を研究の基盤としています。目的とする機能を持つであろう新規化合物をデザインし、それらを様々な合成法を利用することで創りだし、性質を調べていきます。新しい構造・機能をもった分子を用いて、これまでにない材料の開発や、従来の方法では調べるのが難しい、生体分子の分析手法や機能解析法の提案をおこなうことを目指しています。
  有機合成化学は「もの作り」の科学です。先人たちが開発した膨大な数の有機反応を利用し、必要に応じてオリジナルの反応を付け加えていくことで、市販されている簡単な構造の有機化合物から、非常に複雑な有機化合物を作ることができます。身の回には、薬剤・香料・色素・洗剤・農薬・食品添加物・繊維・液晶・各種ポリマー(ポリエチレンやPETなど)など多数の有機化合物(あるいは有機化合物をもとにした化合物)がありますが、これらの多くが、有機合成の手法により作られています。有用な機能をもった新しい有機化合物を合成すれば、これまでできなかったことが、できるようになるかもしれません。私たちは、新規な有機化合物を合成し、新しい機能を見いだすことを目標に、次のような研究を進めています。

縮合多環芳香族化合物の合成研究

  有機化合物の機能は、分子の形と関係があります。ベンゼン環が多数連なった化合物を縮合多環芳香族化合物といいます。同じ数のベンゼン環を使っても、環のつながり方によって多数の構造が考えられ、構造に応じて性質も異なります。縮合多環芳香族化合物は有機半導体として働くものがあるなど、興味深い性質をもっており、目的の骨格を自在に合成する方法が求められています。また、有機分子の骨格を形成する結合は、共有結合ですが、分子間相互作用を積極的に利用する化学も盛んです。複数の分子が集合するもととなる分子間相互作用としては、水素結合(DNAの二重らせん構造も水素結合による)や、金属イオンとの配位(キレート剤)などがあります。縮合多環芳香族化合物に配位可能な部位を組み込むと、さらに新しい性質が発現する可能性があります。私たちは、縮合多環芳香族化合物の新しい合成法の研究をおこなっています。
  右図は私たちの研究室で新しく合成したトリプル[5]ヘリセンの構造式と、その分子モデルです。ヘリセンとは、ベンゼン環が次々にオルト位の位置関係にある炭素原子を使って縮環してできる、らせん型の分子です。通常、ベンゼン環が6個つながった[6]ヘリセン、あるいはそれ以上の大きさの場合に室温で右巻きと左巻きを分け取れます。ところが、私たちが作ったトリプルヘリセンでは、[5]ヘリセンの部分構造しか持たないにもかかわらず、室温で右巻き分子と左巻き分子を分け取れることがわかりました。
  この新しい骨格を持つトリプル[5]ヘリセンは、さらに興味深い構造を持つ化合物へと変換できると考えられます。私たちは、トリプル[5]ヘリセンを2つ向かい合わせにつなぎ合わせることで、右図に示すカゴ型分子を合成しました。1つの分子内にヘリセン部分は合計6カ所あります。得られた化合物は、右巻きらせんのみからできている「右巻きのカゴ」と、左巻きらせんのみからできている「左巻きのカゴ」の2種類でした。分子内部の空洞や外側の溝も、らせん型にねじれた特徴的な構造をしています。

蛍光性化合物の合成研究

 多環芳香族化合物には、蛍光性を示すものがあります。光る化合物は限られており、光ること自体がとても特別な性質と言っても過言ではありません。例えばバイオの研究では、さまざまな現象を観察するために蛍光性化合物を使うことが必須です。生物学資料集の中で、美しく光っている細胞の写真を見ることがありますが、これは蛍光性化合物を使って光らせているのです。私たちは、新しい蛍光性化合物を合成し、その性質を調べています。純粋に化学的な観点からも興味深いですが、将来的にバイオの研究に活かせる可能性があると考えると、生物分子科学的にも興味が湧いてきます。

生物分子科学を支える化学

 生物分子科学科は、化学系とバイオ系の研究者が、すぐ近くで研究をおこなっているのが特徴です。それぞれの専門領域での研究のみならず、普段から研究者同士が自由に議論し、分野を越えた共同研究によって、新たな展開が生まれるところに、大きな可能性を感じています。私たちは有機合成化学を専門としていますが、バイオ系の研究者との共同研究により、将来的には、私たちの技術が生体分子の機能解析のツール開発に活かせると考えています。