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東邦大学理学部
生物分子科学科
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研究紹介

 

魚類皮膚における組織恒常性メカニズム

私たちは、生物が生存を維持するために非常に重要な『組織恒常性』を生理学的、細胞生物学的に研究し、そのメカニズムの解明を目指しています。魚類の皮膚は環境からの多様な刺激に対して比較的短時間でダイナミックに応答します。そこで、代表的なモデル生物でもあるメダカやゼブラフィッシュを用いて、体色変化と創傷治癒という現象に注目して研究を進めています。

体色変化と色素細胞

多くの魚類は皮膚中に様々な色彩を呈する色素細胞を持っており、多様な皮膚の色(体色)や模様を形成しています。これらの体色は常に同じではなく、状況に応じて変化させることで重要な生存戦略として機能します。

背景色の明暗に合わせて体色を変化させる背地順応は保護色として機能し、メダカなど小型の魚類が水鳥など捕食者から逃れるための生存戦略となっています。長期間の背地順応では皮膚中の黒色素胞(黒い色素細胞)の数が増加または減少することで体色を暗化または明化させます。この細胞数の増減は黒色素胞の分化またはアポトーシス(生理的細胞死)によって生じます。多様な皮膚細胞の中で黒色素胞の分化やアポトーシスだけを調節するメカニズムはどうなっているのでしょうか。これまでの研究で、交感神経からの伝達物質や脳下垂体ホルモンなどが黒色素胞の生存に関係することがわかってきました。また、アポトーシスを生じた黒色素胞の断片の多くが表皮を経て外部に排出されること、その際、皮膚に分布しているマクロファージによる貪食が関与することもわかりました。さらに、黒色素胞の数が増減することで、交感神経繊維の発達や退縮が起こることを発見しました。このように、実際には黒色素胞以外の皮膚の細胞にも影響している可能性があり、研究を進めています。

多くの魚類の成熟した雄では繁殖期に多様な色素細胞が鮮やかな体色や模様を形成すること(婚姻色)が知られています。私たちは、タイリクバラタナゴを用いて、雄性ホルモンが多様な色素細胞の分化・アポトーシスを誘導し婚姻色をもたらすことを示しました。その他の魚類特有の色素細胞の機能と皮膚の恒常性との関係も研究しています。

創傷治癒と表皮細胞

傷を治すこと(創傷治癒)は、生物の生存に不可欠な能力です。医学分野における創傷治癒研究の発展はめざましいもので、皮膚の場合では患者自身の細胞からつくった表皮シートの利用も始まっています。しかし、細胞群がどのように傷を塞いで正常な皮膚を再び作り上げていくのか、そのメカニズムについてはまだ解明されていないことが多く残されています。水中で生活する魚類は、皮膚が傷ついた場合、私たち哺乳類のように血餅で傷を覆って仮修復をすることができません。しかし、魚類の表皮細胞は50~100倍のスピードで移動することが可能で、哺乳類よりも素早く傷を治すことができます。私たちは、魚の皮膚を培養して、顕微鏡下で表皮シートの形成・成長と閉鎖を観察できる方法を確立しました。この方法を利用して、皮膚の細胞群が協調した移動や細胞接着などを組み合わせて傷を治していく仕組みがわかってきました。また、生体の皮膚での創傷治癒の観察法も考案して、培養実験で得られた結果どの程度生体内での現象を反映しているのか検証を試みています。さらに研究をすすめて、動物に共通する傷を治す仕組みの解明を目指しています。