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不確実な状況における意思決定

「不確実な状況」とは何のことですか?

 例えば、あなたが家庭教師のアルバイトに採用され、以下の2つの給与条件を提示されたとします。
 ・時給1000円が支払われる。
 ・時給は600円だが、担当の生徒が合格したら特別ボーナスが得られ、合計の給料は上の2倍になる。

 さあ、あなたはどちらを選ぶでしょうか?

 担当する生徒の合格・不合格に関係なく一定の時給が得られる場合は「確実な」状況にあると言えます。一方、担当している生徒の合格可能性により、得られる給与が「確率を伴って」変わるような場合を「不確実な」状況であると言います。

 もう少し詳しく考えてみましょう。

 この場合、時給とボーナス額は提示されているので、「合格率」が分かれば、期待値が計算できます。「期待値」が計算できれば、不確実な状況であっても、選択肢同士を比較することができます。

 サイコロやトランプを用いたゲームや賭けであれば、確率がはっきりしているので、期待値を計算することができます。しかし、先の「合格率」のような場合は、正確な確率を把握することは難しく、このような場合は確率が判っていて期待値が計算できる場合よりもさらに「不確実性が高い」状況にあります。

 さらに、得られる額すら算定できない場合もあります。例えば地球温暖化が進むと、様々な被害があると考えられていますが、それぞれの被害について「正確な被害額はどのくらいか」「どのくらいの確率で発生するのか」の二つを推定することはとても困難です。このような場合は先の時給の問題よりもさらに不確実性が高いと言えます。

固定給とインセンティブ給、どちらが得か?

 ここではまず、「期待値」が計算できる場合、すなわち先の問題において、得られる給与と合格率が分かっている状況であるとします。

 今、あなたは6か月間、合計180時間仕事に就くとします。固定給の場合は、18万円の給与が「確実に(=100%の確率で)」得られることとなります。一方、「合格インセンティブ」を得るケースでは、不合格の場合は10.8万円(=600円*180時間)、合格の場合は36万円の給与がそれぞれ得られることになります。

 期待値だけで考えれば、合格率をx%としたとき、

 18<10.8*(1-x/100)+36*x/100 を満たすxよりも合格率が高ければインセンティブ給を、それよりも合格率が低いようであれば固定給を選択した方が「得である」ということになります。この場合不等式を解くと、28.6<x となるので、合格率が30%以上が期待できるのであれば、インセンティブ給を選択するのが賢明、ということになります。

 さて、それでは担当する生徒の合格率が30%程度はあることがはっきりしているとして、あなたは、固定給を選ぶでしょうか? それともインセンティブ給を選ぶでしょうか?

固定給が好まれる場合とインセンティブ給が好まれる場合

 固定給とインセンティブ給のどちらが好まれるか、は単に期待値だけで決まるものではなく、給与を得る人の「価値観」や「ライフスタイル」によって異なると考えられます。

 たとえば、ここで得られる給与が固定的なもの(例えば家賃など)への支払いに充てられ、かつ給与>必要額であれば、ほぼ100%の人が固定給を選ぶでしょう。一方、何らかの理由で30万円というまとまった額を必要としているケースであれば、この場合の固定給与で得られる18万円には大きな魅力がなく、むしろ生徒を合格させた場合に36万円が得られる、という可能性がとてつもなく魅力的なものに映る場合もあるわけです。このような場合は、インセンティブ給が選択されます。

 ここではまず、不確実な状況においては、期待値だけで人の選択の説明ができるわけではないことを理解していただければと思います。