【実習3】 消化管内容物の組織検査体験

緒言と目的

法医解剖による鑑定では、組織検査も、大変重要です。法医解剖では、ルーチンの検査の一環として、主要な器官の組織を解剖時に採取し、病理学的な診断を行います。
採取した組織から標本を作成する方法は、病理標本の場合とほぼ同じです。解剖時に採取した組織を、固定液にて固定した後、必要部分を小さく切り出します。そして、パラフィンブロックに包埋して薄切し、染色(一般的にはHE(ヘマトキシリン・エオジン)・必要に応じて特殊染色)を施して永久プレパラートを作成します。光学顕微鏡での検査を行った後、必要があれば、顕微鏡写真を撮影します。
このような、一般的な組織検査に加え、食材を含んだ組織標本の診断に役立てるため、誤嚥の事例などを想定し、新潟大学医学部法医学教室の西野孝 技術専門職員(平成22年2月当時)が、いろいろな食材の組織画像データベースを作成しています。食材として利用される植物・菌類・藻類などの生組織や、各種の調理済み組織に、病理検査で用いられる染色をした場合の画像集は、ほとんどありません。そこで、病理組織検査と同じ方法で、各種の食材の永久プレパラートを作成し、その組織画像と肉眼画像をデジタルデータとして、データベースにまとめています。
本実習では、西野孝 技術専門職員のご厚意により提供された、生や調理済みの食材組織標本を用いて、組織検査の体験を行います。実務では、観察結果をスケッチで残すことは、ほとんどありませんが、組織学の実習も兼ねて、手書きで観察結果を描いてみることをお勧めします。機会があれば、家庭科や、その他の教科の先生とも、観察をお楽しみください。
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組織検査のスケッチ用紙(27KB) pdf

材料

  • 食材の組織標本
    (佐渡産魚類のHE染色標本など数種類。)

器具など

  • 顕微鏡観察用具一式
  • 郵送用プレパラートケース(持ち運び用)
  • 黒鉛筆(白黒スケッチ用)
    ・芯をとがらせておく。濃く・はっきりと描けるもの。
  • 色鉛筆(着彩スケッチ用)
    ・紅・朱・青紫系の色を多めにそろえる。描きやすくて消せるものがよい。 ・筆者は、組織学用色鉛筆セットを1クラスに8セット組んでいる。
  • 消しゴム(スケッチ用)
    ・良く消えて、消しくずが出にくいもの。消しゴムのも便利。 ・事務用で消しゴムの角が多いタイプとデッサン用のねり消しの両方あると便利。
  • カッターナイフ(鉛筆削り用)
  • ケント紙(A4・観察結果記録用)
    ・検体名や氏名の記入欄を印刷したり、綴じ穴をあけたりしておくと便利。
  • 組織学や食品科学の実習書・参考書

方法

光学顕微鏡でプレパラートを観察し、結果をスケッチする。
スケッチした図には、引き出し線を書き入れ、参考書を参照したり、専門家に聞いたりしながら、各部の名称や質感なども記録すると良い。

結果

身近な食材を組織学的・病理学的に観察することができる。
(塩基性色素ヘマトキシリンは酸性構造物を青紫に染めるため、DNAやRNAを高濃度に含む、核や粗面小胞体は青く見える。酸性色素エオジンは塩基性構造物を赤または桃色に染めるため、ほとんどが塩基性である細胞内タンパク質は、赤や桃色に見える。)
また、調理による食感の変化を、組織構造の変性として見ることができる。

連絡先

体験を希望される方は、お気軽に、ご連絡をお願い致します。
クラス人数分の材料や器具の無料貸出等のご相談も受け賜ります。
【連絡先:025-227-0426 新潟大・医・法医 手塚】