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陸上ヨットを使った物理授業

 

駒沢学園女子中学・高等学校 佐藤克行

はじめに

2009年度から小学校理科・中学校理科では、新学習指導要領に沿った授業が開始されました。高校理科は、平成24年度から、開始する予定です。理科の授業数を増やせば、科学技術立国「日本」再生、との考えもあるのでしょうが、単に授業時間を増やすだけでなく、授業内容に目を向けなければならないはずです。
現在、小学校の先生の9割が文系と言われています。授業内容を変えるには、教員を育てる環境についても見直しが必要と感じていますが、そうは言っても、我々の力で、その環境を今すぐに変える事は、期待できません。そこで、教材について検討を始めました。
その中で、重要視したことが、3つあります。第一に、教員が扱いやすいものであること。第二に、伝えたい原理が生徒へ伝わること。第三に、問題解決能力を育てるものであること。
その3点からレゴ エデュケーションの「レゴ サイエンス&テクノロジー モーター付基本セット」に注目し、レゴ エデュケーションと共同で、授業内で使用できるように、アイデア出し、授業案作成、授業実践などを行ってきました。レゴ®ブロックは、問題解決能力を育てることに関しては、とにかく抜群の効果があります。また、汎用性もあり、中学理科の力学の実験は、ほとんどこなせます。特に、新学習指導要領の力のはたらきや、仕事の分野では、効果的でした。

本校での授業実践

本校の中学2年生、高校2年生で、授業実践を行いました。中学2年生では、「レゴ サイエンス&テクノロジー モーター付基本セット」の中から、陸上ヨットというモデルを組み立てさせ、風の力から運動エネルギーに変換する、というエネルギー変換の概念について授業を行いました。ほとんどの生徒がそれだけでなく、摩擦などの抵抗を考え、いかに少ないエネルギーで効率よく運動させるかというところまで、考えていました。
図1
図1
図1のように、4人で1グループにし、グループごとに「レゴ サイエンス&テクノロジー モーター付基本セット」を渡し、授業を始めました。
説明書は2種類あり、それぞれ分担して、全員が作業に入れる所も魅力でした。できる生徒が一人でやってしまって、他の生徒はよく分からないまま終わってしまう、という事はありませんでした。
授業の大きな流れは、1.問題提起 2.実験の目的確認 3.レゴの組み立て 4.説明書のモデルで測定 5.改善策をグループごとに検討 6.実際に改造して測定 のように行いました。
図2
図2
図2は、説明書にあるモデルで、図3は、生徒が試行錯誤してつくったモデルです。約10分で、軽量化すること、風を受ける帆の面積を大きくすることなどに気付きました。更に良い答えがあるかもしれないという事で、時間の許す限り、生徒は予測をたて、実験・測定を繰り返し行いました。
図3
図3
通常の私の授業で、ここまで熱心に取り組んでいる姿を見たことがありません。 獲得した知識をベースに、グループで問題に取り組ませることにより、原理の定着と利用方法が身につくと考えます。問題解決能力を高めるという角度から見てみると、分解、構築を何度でもできるブロックは、とても有効な教材であると考えています。
図4
図4
高校2年生には、物理の授業内で、図4のパワーカーというモーターを使って動く車を作りました。目的は、等速直線運動を目で確認することと、x-tグラフ、v-tグラフを作成することです。
授業の流れは、1.問題提起 2.実験の目的確認 3.レゴの組み立て 4.説明書のモデルで測定 5.改善策をグループごとに検討 6.実際に改造して測定 のように行いました。
中学生同様、高校生も必死になって、より速い車を作ろうと、歯車の組み合わせや、軽量化、摩擦力について、検討していました。
図5
図5
また、図5のようにストップウォッチを使って、0.5秒ごとに進んだところへ、ビニールテープを貼って、等速直線運動のデータ取りも行いました。精度について課題もありましたが、グラフ作成のいい練習になったようです。
次回はビースピを用いて、定量的な実験にしていきたいと考えています。ここでも自分達の作った車の速度を求めるのも、楽しみながら取り組んでいました。教科書にでてくる問題から、速度を求め、このようなモチベーション高い状態に持ってくるのは、本当に難しいと思います。より速い車を作る為、データ取りし、全員が考えている様子は、メーカーの研究開発部のようでした。

本校で気付いた課題

中学校では、生徒がのめり込み過ぎて、時間内に切り上げられないことがありました。生徒の考える時間も大事にしたいのですが、全体の時間配分をしないと、まとめができず授業の内容が半減してしまいます。他には、実験の目的について、きちんと伝えておかないと、50分の授業後には、一番伝えたい内容から、少しずれが生じる場合がありました。
高等学校では、ストップウォッチを用いて、単位時間当たりの移動距離を測定しましたが、予想していた通り、誤差が大きくなり、等速直線運動のグラフにはなっていませんでした。この機会に、「誤差」について授業を展開していきました。

レゴブロックの教材を使った授業の未来

理科という科目を「決まった答えを覚える教科」としてとらえる生徒が多いことは、大変残念なことです。理科は、「原理を理解し、それを利用できるようにする教科」ととらえて欲しいのですが、自分の力不足から、授業でなかなか伝えきれておりませんでした。
授業実践を通し、一番強く感じたことは、生徒のモチベーションがあがり、授業の理解度が上がっているということです。アンケートなどは、まだ実施しておりませんが、過去の授業では、何度も復習したx-tグラフ、v-tグラフの違い・特徴など、復習の必要はありませんでした。生徒主導で授業が進んでいたことに効果があったのでは、と思います。
今回の授業実践では2つ紹介しましたが、他にも行っており、どれも、生徒の反応は上々です。原理を発見し、それを利用して「与えられていない答えを探す」という楽しみを、生徒にたくさん味わってもらいたいと思います。また、その事が、モノづくり日本の土台固めに、なるであろうと思います。
現在、レゴ サイエンス&テクノロジー モーター付基本セットを中心に、レゴ 空気力学セット、それにレゴ エネルギーセット eLABというコンデンサーや太陽電池、発電機を組み合わせたモデルも検討中です。多くの分野の基礎原理を、レゴブロックという広がりのある世界に入れることによって、無限の答えが表れると思っています。
また、今年度はニュージーランドのセントドミニクス校や複数の国内の学校と連携し、共同で課題に取り組むLPP(LEGO problem-solving-education Project)をスタートさせます。この目的は、自由度の高いブロックを用い、課題解決に向け工夫した部分などを、英語で海外連携校とやりとりすることにより、科学リテラシーの向上につながるかを研究致します。

アクティビティ例

【Land yacht】
Land yacht
【Motor Car】
Motor Car
【Space Elevator】
Space Elevator