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東邦大学理学部
物理学科 宇宙物理学教室
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2011年度
「ニュートリノ振動とニュートリノの質量」
u、c、tクォークと二重項を作るd、s、bクォークがこれらの線形結合であるd'、s'、b'クォークだと考えるクォーク混合からニュートリノにも混合された状態を考え、飛行中にニュートリノの世代が転換するニュートリノ振動が起こることを示し、3世代間での混合状態における具体的なニュートリノ間の遷移確率を導いた。ニュートリノに質量があることでニュートリノ振動は起こるが、その固有状態である3世代のニュートリノの質量の固有値とそれらが混合された状態のニュートリノの質量の期待値の関係を導いた。
「量子電磁力学による電子の異常磁気能率」
電子はスピンをもつことにより磁気能率を持っている。磁気能率はスピン角運動量やg因子によって表わされる。電子のg因子はDirac方程式から2であることが知られているが、実験によって2からのずれが確認された。このずれを異常磁気能率と呼ぶ。本論文では量子力学を相対論的に拡張したDirac方程式から電子のg因子が2となることを示し、異常磁気能率の原因が量子電磁力学(QED)の電子と光子の相互作用で説明されることを理解する。そして摂動計算において異常磁気能率がどのように計算されるかを学ぶ。
「視線速度法による太陽系外衛星の探査」
太陽系外惑星は数多く発見されているが、衛星の観測は非常に難しい。太陽系外惑星の探索方法はいくつかあるが、本論文ではその中の最も広く用いられている視線速度法に着目した。視線速度法とは恒星のスペクトルに現れるドップラー効果から惑星を探す手法である。視線速度法を用いるために、まず太陽系外にある恒星と、その周りを回る惑星、さらにその惑星の周りを回る衛星の軌道を三体問題として数値的に解く。次にこの結果を用いて、衛星の存在が恒星の運動に及ぼす影響がどのように検出されるかを考察する。
「重力マイクロレンズ効果を用いた太陽系外衛星探査」
一般相対論から導かれる重力マイクロレンズ効果は、背景にある恒星の手前を別の天体が通過するときに恒星の光度が急激に増加する現象であり、この効果によって惑星などの暗い天体を発見することができる。特に、手前を通過する天体が連星系の場合には特徴的な光度変化を示す。本論文では、手前を通過する天体が3体系の場合に、どのような光度変化を示すか考察した。その結果、特に主星、惑星、衛星からなる3体系を考えたとき、背景にある恒星の主星に対する衝突パラメーターが小さい場合には、光度変化に衛星の寄与が表れ、衛星を発見できる可能性があることがわかった。
「モノポール場中の荷電粒子の運動」
この論文では、ディラック(P.A.M.Dirac)によって提唱された磁気の源としての素粒子であるモノポール(磁気単極子)の周りの荷電粒子の運動を考察した。その結果モノポール場中の荷電粒子は初期条件で決まる角度θのコーン上を旋回したり旋回運動をしながら双曲的にモノポールに近づいたり、遠ざかっていったりする運動をすることがわかった。この結果より上のように特異な運動をする荷電粒子を観測できれば間接的にモノポールの存在を確かめることが出来る。
「SISフォトン検出器の実験環境の整備と性能評価」
2011年まで国立天文台サブミリ波カメラグループでは、SISフォトン検出器とAC-CTIA回路は個別に評価が行われてきた。この2つを組み合わせての評価が本研究の目的であり、その準備としてSIS素子のI-V特性の測定を再度行う必要がある。この検出器は0.8K以下での動作のため、2段式0.3K冷凍器を用いての0.38Kの環境を実現した。また、極低温環境の持続時間を延ばすために保冷器への熱流入を減らし、4.2Kで28時間、0.38Kで10時間の持続を実現した。I-V特性の測定に使用するTIA回路を1素子測定から3素子同時測定が可能な改良を行い、ダミー抵抗やSIS素子のI-V特性の測定を行っている。
「極低温環境における多素子読み出しシステムの動作評価」
本研究ではカメラの電荷積分型読み出し回路(AC-CTIA)を0.8K以下の極低温環境下で動作させることと、検出器と組み合わせて評価することを目標としている。実験では、冷却システムの立ち上げから始め0.45K環境の実現に成功した。AC-CTIA回路は0.47Kにおいて4.2K環境下での動作と同様な積分動作をした。また、回路シミュレーターのPSpiceを用いて回路の動作の検証も行い、SIS検出器の信号を積分波形として読み出すための実験を進めている。
「サブミリ波カメラにおける32素子読み出し回路の自動制御」
本研究は32素子サブミリ波読み出し回路の自動制御を目的としている。32素子読み出し回路とは32素子の電流信号を多重化し、1つの時系列電圧信号に変換する機能を持った回路である。本研究では4.2K下においてDasbox(DA/AD変換器)を用い各チャンネルへのパラメターをプログラミングによって自動制御し、32素子読み出し回路を駆動させ各チャンネルで電圧を取得する実験を行った。実験結果から読み出し回路が正常に動作していることが確認でき、Dasboxを用いた32素子読み出し回路の自動制御による実験システムの立ち上げに成功した。