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MICS (Minimally Invasive Cardiac Surgery:低侵襲心臓手術)とは

MICS(ミックス)は

  1. 胸骨正中切開(大きく胸の真ん中を切り20から25cmの傷が残ります)を行わずに,左胸の出来るだけ小さな傷から心臓の手術を行います.小さな傷で,大きく切る手術と同じことをするために、内視鏡も使います。
  2. 人工心肺装置を用いた体外循環は小さな傷からは行えませんので、太ももの付け根を通っている大腿動脈・大腿静脈から管を入れて行います.技術的には難しく、手術時間も長くなります。当院では経験豊かな術者が執刀します.

切開部位について

上段が胸骨部分切開
upper partial stenotomy/lower partial stenotomy
下段がthoracotomy 右開胸(胸骨を切らない)
Right parasternal minithoracotomy/Right thoracotomy

MICS(ミックス)の利点

  • 胸骨を切らないので、手術中の出血が少なく,感染リスクが非常に低くなります.
  • 傷が小さく胸骨を切らないので痛みが少なく、社会復帰までが早くなります.
  • 傷はえり首から離れたところにできますので目立ちにくく美容上の利点があります.特に女性で乳房下のラインを切る手術では、傷跡が隠れて満足度の高いものとなります.

MICS(ミックス)の欠点

  • 体外循環を行うために大腿動脈から全身への血液を送りかえしますが、稀に動脈が解離して血液を送り返す経路を変更する必要が生じる時があります.
  • MICSでは左の肺がある空間を通して心臓の手術を行いますので、手術中に左肺の空気を押し出し左肺を潰した状態にします.稀ながら、術後に肺が腫れることがあります(再膨張性肺水腫).
  • 手術中の出血やトラブルに対する対処するため、必要があれば安全を優先して胸骨正中切開に切り替えることが稀にあります.

MICS(ミックス)の適応疾患

弁膜症(大動脈弁,僧帽弁など)
心臓腫瘍(左房粘液腫など)
不整脈手術
心臓内血栓除去など

MICS(ミックス)の適応にならない状態

MICSが出来ない状態の人もおられます.体型に問題のある人(薄い胸郭など),血管の状態が悪い人(高度動脈硬化),肺の状態の悪い人や心機能が低下している人ではMICSは行うことが危険で,通常の胸骨正中切開での手術をお勧めします.
手術前に必要な検査を行い,それらを詳細に検討してMICSの適応を決めます.

当院ならではのMICS(ミックス)

弁膜症に対する手術では,従来悪くなった自己弁を取り除き人工弁(機械弁と生体弁があります)を植え込む方法が主流でした.この人工弁置換術は非常に良い方法ですが,機械弁では抗凝固薬を内服し続けなければならない,生体弁では耐久性が機械弁ほど期待できないなど問題もあります.
人工弁を使わずに弁膜症の手術が出来れば,体に優しい手術といえます.人工弁を使用しない手術方法は,問題のある自己弁を修復して治す僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術がよく知られています.また大動脈弁では当院の尾崎教授が開発した自己心膜を使用した大動脈弁形成術がありますが,当院ではいずれの人工弁を使用しない手術方法もMICSで行うことが出来ます.

お問い合わせ先

東邦大学医療センター
大橋病院 心臓血管外科

〒153-8515
東京都目黒区大橋2-22-36
TEL:03-3468-1251(代表)