僧帽弁疾患とは
僧帽弁の正常な開閉には僧帽弁尖のみではなく、僧帽弁輪、腱索および乳頭筋との間の三次元的構築の協調運動が保たれていることが不可欠です。上記の心内構造物を総称して僧帽弁複合(mitral complex)といい、いずれに解剖学的または機能的異常を来しても僧帽弁疾患を招来することになります。
僧帽弁狭窄症
僧帽弁狭窄症(MS)は80~90%がリウマチ性病変に基づいています。リウマチ性変化により生じる弁狭窄は弁尖の肥厚、交連部の癒合から始まり、さらに腱索や乳頭筋の肥厚・退縮や弁輪の硬化・短縮へと進み、僧帽弁複合のすべてに病変が及ぶようになります。いずれの構造物にも病変の進展に伴い、石灰化が見られることがあります。
僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症(MR)はリウマチ性と非リウマチ性に大別されます。非リウマチ性のほとんどが結合織の退行性病変に基づきます。退行性病変とは僧帽弁尖の拡大、腱索の延長・断裂を特徴とする一連の僧帽弁の病変です。MSが僧帽弁複合の硬化・短縮であるのに対し、MRは僧帽弁複合の拡大・延長です。