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僧帽弁閉鎖不全症

基本事項

病態

僧帽弁閉鎖不全症(MR)とは、基本的には左室の容量負荷左室後負荷の減少左房圧の上昇です。急性僧帽弁閉鎖不全症の場合は左室の急激な容量負荷により肺うっ血と低心拍出状態をきたし、ショック状態となります。慢性僧帽弁閉鎖不全症の場合には左室、左房が拡大するが代償されてしばらく無症状で経過します。代償機能が破綻すると肺うっ血・LVEFの低下が起こり、心筋機能障害が進行します。

自然歴

僧帽弁逸脱症候群の予後は一般に良好とされています。有症状例や左室機能障害がある例では予後が悪く、内科的治療の5年生存率は約50%とされています。

手術適応

急性僧帽弁閉鎖不全症

末梢血管拡張薬、カテコラミンの投与、IABPなどによって血行動態の改善が得られない場合は緊急手術の適応となります。

慢性僧帽弁閉鎖不全症

僧帽弁閉鎖不全症による後負荷低下により、実際より見かけのEFが良好となる場合がありますが、心エコー検査などによって無症候性左室機能不全が進行し始めるのを速やかに検出し手術を施行することが必要です。ガイドラインでは無症候性僧帽弁閉鎖不全症では、術前のLVEF60%未満、LVDs45mm以上が手術時期決定の一つの指標とされています。高度な左室機能不全例では手術のリスクは高く、一般的にはLVEFが30%以上の症例が手術可能とされます。左房径と術前の慢性心房細動持続期間が術後洞調律に復帰するか否かの予測因子であり、慢性心房細動が出現したら早期に手術を行うことが推奨されます。

術式

僧帽弁逸脱症、腱索断裂、弁輪拡大などが原因の僧帽弁閉鎖不全症については、矩形切除、弁輪縫縮術、腱索再建術などの技術を使い、可能な限り形成術を行います。感染性心内膜炎(IE)においても非活動期であったり、感染巣が限局している場合には積極的に弁形成を行うべきであると考えます。しかし、活動期で感染巣が広範囲に及び、感染巣の残存が危惧される場合には弁を完全に切除してMVRを行うことが推奨されています。リウマチ性僧帽弁閉鎖不全症では形成術を行うことが困難な場合が多く、MVRが行われることがほとんどです。

お問い合わせ先

東邦大学医療センター
大橋病院 心臓血管外科

〒153-8515
東京都目黒区大橋2-22-36
TEL:03-3468-1251(代表)