僧帽弁狭窄症
基本事項
病態
僧帽弁狭窄症(MS)は、僧帽弁の狭窄により左房圧が上昇し、肺静脈圧上昇から肺高血圧に至ります。左房の拡大により心房細動が、右心系の拡大により三尖弁閉鎖不全症を生じます。
病因
成人で認められる僧帽弁狭窄症はほとんどすべてリウマチ性と考えて良く、リウマチ熱の既往が明らかでないことも多く認められます。
自然歴
僧帽弁狭窄症は緩徐に進行する疾患で、未治療の僧帽弁狭窄症では10年生存率は50~60%とされています。初診時には自覚症状の軽微な群では10年生存率は80%ですが、自覚症状が強い場合は0~15%と予後不良です。
手術適応と術式
適応と手術時期
手術適応を考える上で、1.NYHA心機能分類II度以上の臨床症状、2.心房細動の出現、3.血栓塞栓症状の出現の3点が重要です。また、左房内血栓の存在も手術適応の指標となります。術後の洞調律の維持や血栓塞栓症の防止、肺高血圧や多臓器不全の予防、と言った観点から、従来より早期に外科治療を行うことも考慮される傾向にあります。
外科的治療法の種類と選択
外科治療に際しては、僧帽弁の弁肥厚、弁石灰化、弁の可動性、弁下組織の変性程度、僧帽弁逆流の程度、を検討し、術式(直視下交連切開術:OMC、僧帽弁人工弁置換術:MVR)を選択します。一般にSellors分類でI~II型の僧帽弁狭窄症の内、Wilkinsのtotal echo score 8以上、弁下部スコア3以上のいずれかの症例ではPTMCの成功率が低いためにOMCまたはMVRが推奨されています。また、弁下部スコア4のSellors分類III型ではMVRを選択すべきであると考えます。
Sellors分類とWilkinsのエコースコア (GIF 71KB)
術式
僧帽弁に著明な石灰化・繊維化・高度な弁下部癒合を認める場合にはMVRの適応となります。人工弁には機械弁と生体弁がありますが、高齢者、若年女性、易出血性疾患患者などでなければ機械弁の使用が一般的です。70歳以上の症例では構造的劣化が低いことが報告されており、生体弁のいい適応であると考えられています。