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4.入院療法の実際

ADの治療として最も重要なことは、適切かつ十分な治療を行うことといえます。眠気を意識して、抗アレルギー薬でかゆみを十分抑えられない、外用薬が十分かつ適切に使用されていない方が目に付きます。ADのかゆみは単一ではなく肥満細胞、好酸球や神経ペプチドなどによるかゆみが、個人別、季節や時間的にも影響を受けます。眠気を見ながら、かゆみを十分抑える抗アレルギー薬を選び、症状の改善とともに服用量や併用薬を減らしていきます。また、痒い時のみに服用する場合(間欠投与)に比べ、連続投与の方が痒みの抑制効果が高くなることが明らかになっています。抗アレルギー薬は単なるかゆみ止めではなく、かゆみの本態を抑える“かゆみ予防薬”なのです。効果と副作用を加味した薬剤を患者さん毎に処方しています。

皮膚症状の改善は、アトピー性皮膚炎治療ガイドラインに沿って年齢別、重症度から使用するステロイド外用薬およびその使用量の目安を参考にしています。特に顔面ではステロイド外用薬の副作用が出やすいため、免疫抑制治療薬であるタクロリムス軟膏(プロトピック)への切り替えを勧めています。プロトピックは、火照りや、ぴりぴりした刺激感が強く、使用が続けられない方もおります。まずステロイド外用薬で初期治療を行い、その後ゆっくり部分的に使用するようにしています。ステロイド外用薬は症状改善とともに少しずつ使用量を減らしたり、薬効ランクを下げるなどキメの細かい治療を心掛けています。特に重症かつ慢性化している部分には、亜鉛華軟膏やアズノール軟膏をステロイド外用薬の塗った上に重ねています。外用後に顔全体はお面包帯、体や四肢にガーゼ包帯やチュビファーストを使用して効果を上げます。この手技を退院後も自宅で出来るよう指導しています。

教育入院は、正しい外用方法やかゆみ対策がマスター出来るので有用ですし、悪化時の対応がスムーズになり重症化の予防に繋がります。入院時に血液検査を行うので、重症度や増悪因子の究明そして生活指導に役立ちます。
退院前に、入院して改善した皮膚の状態を最終チェックするために一日自宅に帰り、普段の生活に近い状態での悪化の有無をみる試験外泊を行なっております。悪化時にはその要因を一緒に考え、治療や掃除を含めた対策を検討しています。
入院療法は、アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年度版にはじめて記載され、長期予後が改善する治療としても有用です。

お問い合わせ先

東邦大学医療センター
大橋病院 皮膚科

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