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食道癌

食道がんとは

食道は、咽喉(のど)と胃の間にある管状の臓器です。食道は上部から順に頸部食道、胸部食道、腹部食道の3つの部位に分けられます。
食道がんは食道にできる癌です。食道がんの多くは、食道の内壁の粘膜に発生します。そのうち粘膜を作る扁平上皮細胞にできるがんを扁平上皮がんと呼びます。日本人の食道がんの90%以上がこの扁平上皮がんです。
2004年の推計では、食道がんの患者数は男性において増加傾向、女性では横ばいですが、以前として食道がんによる死亡者数は、毎年約1万2千人もの方が命を落としています。
男女別では圧倒的に男性のり患率が高く、男性は女性に比べて5~6倍、食道がん にかかりやすいというデータがあります。
食道がん の危険因子である喫煙や飲酒の習慣が男性に多いことが主な原因だと考えられています。
年齢的には60歳以上で増え始め60歳代後半から70代が発症のピークです。
日本人では胸部食道がんの発生が最も多くおよそ90%を占めます。
胸部食道は食道の大部分を占め、心臓や大動脈、気管などの重要な臓器に接しているため手術は大がかりで1日がかりの大手術になります。

食道がんの症状

早期の食道がん は初期症状に乏しく、59%の方が無症状(Comprehensive Registey of Esophageal cancer in japan 2002 より)で、軽度の違和感を感じる程度が多く早期発見が困難ながんです。 中高年で飲酒や喫煙習慣がある方、熱いものや辛い物を好む方など食道がんの危険因子があるかたは、軽度の違和感でも症状が見られたら早めに検査を受けることをお勧めします。

進行がんとなると、食道内部が圧迫され狭くなり、食べ物を飲み込む時につかえた感じを感じるようになってきます。食物がつかえるように感じましたら速やかに検査を受けてください。

食道がんの治療

食道がん治療においては、主に外科的手術・放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)、緩和医療(疼痛治療、食道ステント挿入)などの治療が柱となります。

食道がんの手術は体への負担も大きく難しい手術ではありますが、現時点では手術療法が最も確率高く食道がんを治すことができる治療であるため、条件にもよりますが手術は優先度の高い治療になります。
外科治療は体の負担が強いため早期の食道がんに対しては当院では積極的に内視鏡治療を行っております。(詳細は内視鏡治療を参照してください。)内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)では食道はそのまま残りますし、入院期間も短くすみます。
食道がんの進行度をステージ0~4で表します。数字が上がるほど進行度が増します。
内視鏡的手術が可能なごく早期のステージ0の食道がん であれば5年生存率は70%。外科手術はステージ1~3に主に行いますが、ステージ1で5年生存率は50-60%、ステージ2では30-50%、ステージ3では10-30%程度と根治が難しいです。 手術で切除した組織を顕微鏡で検査した結果、食道がんが取りきれていないと判断された場合や、食道がんがリンパ節に転移している可能性が高いと判断された場合には、追加で外科手術や放射線治療、抗がん剤治療(化学療法)などが必要になります。

食道がんの治療で用いられる代表的な抗がん剤

FP療法

5-FU(フルオロウラシル)とCDDP(シスプラチン)
の2剤を組み合わせた治療法です。食道がんの抗がん剤治療でfirst line と言って通常行われる効果が1番高いとされる治療法です。
シスプラチンは、腎機能障害が大変起こりやすく、もともと腎機能障害がある方には使用できません。その場合は、場合によっては、5-FU+アクプラ
5-FU(一般名 フルオロウラシル)とアクプラ(一般名 ネダプラチン)との2剤を組み合わせることもあります。アクプラはシスプラチンの副作用を軽くする目的で開発されたプラチナ製剤(シスプラチンの仲間)です。

FP療法で効果があまり認められなかった場合や、心臓が悪く、大量の補液が必要なプラチナ製剤での治療が行ないにくい場合は、タキソテール(一般名 ドセタキセル)なども使用することがあります。
当院では、主にこの3種類の化学療法が多く行われます。

化学療法(抗がん剤)の副作用

抗がん剤治療では、癌細胞に対して抑制効果を認めますが、同時に副作用も認めてしまいます。

骨髄毒性-白血球減少、赤血球減少、血小板減少

食道がん の抗がん剤治療により血液をつくる細胞がダメージを受け、白血球減少や赤血球減少、血小板減少などの副作用を高頻度で生じます。
白血球減少が起きると食道炎などの感染症を起こしやすくなります。また発熱が続くこともあります。白血球や好中球の減少に対しては、G-CFS(顆粒球コロニー刺激因子)などを使用することがあります。
赤血球が減少することで貧血になったり、血小板減少により出血しやすくなったり、あざができやすくなったり、注射の跡が消えにくくなるなどの副作用が現れることがあります。

吐き気・下痢・便秘

食道がん治療で抗がん剤が投与されると多くの方で吐き気や嘔吐をおこします。下痢や便秘をする方もいらっしゃいます。抗がん剤治療に際しては、プリンペランやノバミンという 吐き気止めや、便秘対策として、酸化マグネシウムなどの下剤を組み合わせて対応します。

腎機能障害

シスプラチンの副作用により腎機能低下の副作用が頻発します。そのためできるだけ多くの水分を摂るようにして尿をたくさん出す必要があります。

脱毛

食道がん(食道癌)治療で使用する抗がん剤によっては脱毛を起こすことはほとんどありません。髪の毛が抜けたとしても治療が終われば髪の毛は再び生えてきます。

その他の副作用

食道がん治療で用いられる抗がん剤の副作用として、動悸や息切れ、体のむくみ、筋肉や関節の痛みなどが現れることがあります。
口内炎や倦怠感(だるさ)、皮膚や爪の変色、味覚障害、肝機能障害、腎機能障害なども副作用で現れることがあります。

各々の副作用に対し、処方量を調節したり予防薬を投与したり、皮膚科などの専門医と協力したりしておのおのの患者様にあった医療を提供させていただきます。

お問い合わせ先

東邦大学医療センター
大橋病院 消化器内科

〒153-8515
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TEL:03-3468-1251(代表)