「肝胆膵外科 専門外来(慢性膵炎 専門外来)」のご案内
われわれは日本肝胆膵外科学会が認定する専門施設であり、肝胆膵外科に関しては専門医(浅井浩司 准教授)が担当しています(http://www.jshbps.jp/modules/public/index.php?content_id=5#)。
お時間に余裕をもって外来を受診していただくようお願いします。
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慢性膵炎・膵石症に対する膵管減圧術(膵管ドレナージ術)
病態
主に大量飲酒が原因で発症する慢性膵炎・膵石症では、膵液の流出が障害され、難治性の腹痛や背部痛が生じます。これらの症状により、膵炎の症状が繰り返し悪化し、入退院を余儀なくされることがあり、日常生活にも大きな支障をきたします。
このような症状に対しては、禁酒や生活習慣の改善が重要です。また、非手術的治療として、消化器内科で行うESWL(対外衝撃波結石破砕術)や内視鏡ステント治療が有効となる場合があります。ただし、これらの治療には、定期的(3か月毎)なステントの交換が必要であることや、腹痛や背部痛が完全に消失しないといった課題が伴うこともあります。
慢性膵炎・膵石症の治療は、基本的に診療ガイドラインのフローチャートに基づいて進められます(図1:『慢性膵炎診療ガイドライン2021 改訂第3版』、日本消化器病学会編集、南江堂)。本ページでは特に外科治療に関連する部分に焦点を当て、診療ガイドラインの内容を解説します。
このような症状に対しては、禁酒や生活習慣の改善が重要です。また、非手術的治療として、消化器内科で行うESWL(対外衝撃波結石破砕術)や内視鏡ステント治療が有効となる場合があります。ただし、これらの治療には、定期的(3か月毎)なステントの交換が必要であることや、腹痛や背部痛が完全に消失しないといった課題が伴うこともあります。
慢性膵炎・膵石症の治療は、基本的に診療ガイドラインのフローチャートに基づいて進められます(図1:『慢性膵炎診療ガイドライン2021 改訂第3版』、日本消化器病学会編集、南江堂)。本ページでは特に外科治療に関連する部分に焦点を当て、診療ガイドラインの内容を解説します。
質問:慢性膵炎の外科治療にはどのようなものがありますか?
回答:難治性疼痛に対する外科的治療は、大きく分けて膵切除術と膵管ドレナージ術があります。特に主膵管の拡張が認められる場合には、膵管減圧が疼痛緩和に有効とされています。
これまで、膵管減圧を目的とした様々な術式が考案されてきましたが、近年では拡張した膵管を切開して空腸と側々吻合する膵管空腸側々吻合術が広く行われています。さらに、膵頭部に膵石などの病変が存在する場合には、膵頭部のくり抜くFrey術(図2)が適応されることがあります。
一方、膵管の拡張を伴わない場合は膵切除術が考慮されます。ただし、膵切除術による疼痛の寛解率は膵管減圧術と同等である一方で、合併症の発生率や術後に新たに糖尿病を発症するリスクが有意に高いことが報告されています。そのため、膵切除術は、膵管拡張が認められない患者さんに限定して選択されるべき手術法とされています。
質問:慢性膵炎の疼痛治療に長期反復内視鏡治療は推奨されますか?
回答:長期(2~3年以上)反復内視鏡治療は行わないことを提案します。
内視鏡治療と外科手術を比較したRCT(ランダム化比較試験)では、疼痛コントロール率が内視鏡治療群で32%、外科手術群75%と、外科手術群が有意に良好な結果でした。その後の5年間の経過観察結果でも、疼痛コントロール率は内視鏡治療群で38~61%、外科手術群で80~86%と、外科手術群が優れていることが確認されています。
その他の研究結果でも、外科手術の優位性が示されています。ただし、内視鏡治療は低侵襲性で合併症が少ないため、初期治療として位置づけられます。最近のシステマティックレビューでは、発症早期(3年以内)に外科手術を介入することで、術後の疼痛消失率の向上、再介入率の低下、膵機能不全の軽減につながることが報告されています。
これらの結果を踏まえ、内視鏡治療は1~2年以内に限定して行うことが推奨されています。
質問:内視鏡治療が無効な場合の疼痛治療に外科的治療は推奨されますか?
回答:外科的治療は、内視鏡治療が無効であった場合に高い除痛効果を示すことが多く、行うことを推奨します。
内視鏡治療と外科的治療を比較した研究では、治療開始後5年の時点で、外科的治療群の方が除痛効果や体重増加が有意に良好であることが報告されています。このことから、内視鏡的治療では長期的に疼痛を十分に制御することが難しいことが示されています。
また、内視鏡ステント治療を受けた患者さんで疼痛が再燃した場合、手術治療と再ステント治療を比較した結果、外科的治療の方が除痛効果、体重増加、社会復帰の全ての面で優れていたことが報告されています。さらに、膵管狭窄のある患者さんにおいても、内視鏡ステント治療には長期的な限界がある一方で、外科的治療は効果的であることが示されています。
これらの結果から、内視鏡治療が困難な場合や疼痛が再燃した際には、外科的治療を選択することが推奨されています。
質問:慢性膵炎の生命予後はどうですか?
回答:慢性膵炎の主な死亡原因には、悪性腫瘍、肺炎・感染症、糖尿病およびその合併症、などが挙げられます。また、発症年齢や飲酒・喫煙の継続は予後不良因子とされており、治療と長期的な経過観察においてこれらを十分に考慮する必要があります。
慢性膵炎の患者さんでは、悪性腫瘍として膵癌が日本で多く発症してします。慢性膵炎と膵癌の関連を示す報告は数多くあり、特に遺伝性膵炎の患者さんでは膵癌の発症リスクが極めて高いとされています。このリスクは、慢性的な炎症刺激が原因と考えられており、膵癌発症を予防するためには、早期の治療介入が重要です。具体的には、膵管減圧を行うことで、慢性炎症刺激を低減し発症を回避することが推奨されています。
さらに、外科治療を行う場合、術後の膵内外分泌機能に関しては、膵切除術よりも膵管減圧手術(図1, 2)の方が有利であるという報告が多くみられます。
質問:慢性膵炎の病態進行の阻止に外科手術は推奨されますか?
回答:慢性膵炎発症後の早期手術が病態進行を遅らせる可能性があり、手術の適応や術式は症状や合併症を総合的に評価したうえで決定することが提案されます。
慢性膵炎の発症早期に行うFrey手術(図2)などの膵管ドレナージ手術は、手術侵襲が少なく、慢性膵炎の病態進行を阻止する観点から有利である可能性があります。
手術術式別の比較では、Frey手術と膵頭十二指腸切除術を比較した場合、術後の長期的な除痛効果には大きな差はありません。しかし、Frey手術の方が膵内外分泌機能不全の発症頻度が少なく、さらに、手術時間が短く、術後の合併症も少ないことが報告されています。
質問:膵癌の発生予防に内視鏡治療や外科手術は有効ですか?
回答:慢性膵炎患者に対する内視鏡的治療や外科手術は、膵癌の発生予防に有用である可能性があります。
慢性膵炎が膵癌の危険因子であることは広く知られています。本邦の厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班の報告によると、経過観察期間の中央値5.6年の間に慢性膵炎患者の3.9%に膵癌が発症したことが示されています。また、慢性膵炎手術例では、非手術例に比べて膵癌発生リスクが低く、ハザード比が0.11と報告されており、手術による炎症の抑制が膵癌予防につながる可能性が示唆されました。
さらに、イタリアからの研究でも同様の結果報告が報告されており、慢性膵炎に対する適切な治療介入が膵癌発生を抑える可能性が指示されています。
【症例1】
- 60歳代のアルコール性慢性膵炎の患者さん。膵内に多数の膵石を認めていました。10年以上無治療で経過観察されていましたが、最近になって、膵炎症状や胆管狭窄に伴う胆管炎症状を繰り返すようになり、手術目的で紹介されました(図3)。
- 膵管を開放し、膵石を除去した後、膵管空腸側々吻合術(Frey術)を施行しました(図4)。術後3年以上が経過しましたが、膵炎や胆管炎症状は全く再発していません。
【症例2】
- 40歳代のアルコール性慢性膵炎の患者さん。他院でこれまで2年間にわたり入退院を繰り返し、内視鏡的治療を15回以上受けてきましたが、膵炎症状が続き、手術目的で紹介とされました(図5)。
- 膵管を開放し膵石を除去した後、膵管空腸側々吻合術(Frey術)を施行しました(図6, 7)。術後2年以上が経過しましたが、膵炎や胆管炎の症状は全く再発していません。
肝胆膵 専門外来(慢性膵炎 専門外来)
診療日時: 担当医毎週火曜日午前・午後
1階 化学療法室:浅井浩司 准教授
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お問い合わせ先
東邦大学医療センター大橋病院 外科外来
電話03-3468-1251
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