スポーツ整形外科の主な疾患:アキレス腱炎
東邦大学整形外科 客員講師 奥野祐次
アキレス腱炎はふくらはぎの筋肉と踵骨との間にある結合組織、腱における損傷を特徴とした疾患です。アキレス腱炎はランナーの人に最も頻繁に認められ、特に急激に負荷が強くなった時に発症することが多いです。また、ランナーだけでなく中年のスポーツ愛好家(テニスやバスケットボール)の方にも多く見られます。また特別に体を動かす習慣がない人にも発症することもあります。
アキレス腱炎は多くの場合、安静やストレッチなどのセルフケアで改善されます。しかし重症のケースでは改善されずに病院での治療が必要になる方もいます。
症状
最初に自覚する症状はアキレス腱周囲の軽い痛みです。特に走っている際に認めることが多いです。またアキレス腱の一部を押したり摘まんだりすると痛みがでるかもしれません。
また、起床時のこわばり、硬さを感じる人もおり、動き出してしばらくすると改善します。
また、起床時のこわばり、硬さを感じる人もおり、動き出してしばらくすると改善します。
病院にかかるタイミング
まずは安静にして、なるべくアキレス腱に負荷を与えないことで対応します。
しかしそれでも症状が続いたり悪化していく、日常生活動作に支障が出る、腫れや熱を伴うようになれば病院での診察を受けた方が良いです。
しかしそれでも症状が続いたり悪化していく、日常生活動作に支障が出る、腫れや熱を伴うようになれば病院での診察を受けた方が良いです。
原因
走る、歩く、跳ぶ、つま先で蹴るなどの動作によるアキレス腱への繰り返しの負担が原因となります。アキレス腱の組織は年齢とともに脆弱になります。弱くなると繰り返しの負担に余計にダメージを受けやすくなります。繰り返されることで修復できなくなり腱自体が炎症を起こしてさらに脆弱になります。数週間以上にわたり続くと、腱炎状態となります。
リスク因子(下記の項目が当てはまるとアキレス腱炎にかかりやすい)
- 男性
- 年齢(年齢を重ねるほどなりやすくなる)
- 偏平足
- 肥満
- 高血圧
- 抗生物質の内服(特にニューキノロン系の抗生物質)
予防法
- 運動強度を徐々に上げること
多くの人は急に無理をしたことで発症しています。特に新しいエクササイズプログラムに参加したばかりの時は注意が必要です - 負担をかけすぎないこと
追い込んだ練習をしたり、あまりに追い詰めてしまうとアキレス腱炎になりやすいです。特に中年の男性です。走っている最中に痛みを感じたら、早い段階で休んだり、練習量を落としたりしましょう。 - 靴を慎重に選ぶこと
靴底のクッション性がいつの間にか下がることもありますし、靴によっては足底のアーチが作れずに痛みの原因になります。注意しましょう。 - 日々のストレッチ
ふくらはぎのストレッチが重要です。特に朝方に行ないましょう。また運動の前後にも行うことでアキレス腱への負担を減らせます。
診断
アキレス腱の部位に医師が圧迫を加えて痛みが誘発されること(圧痛)の存在によって多くは診断できます。また柔らかさや位置の異常を検査します。
画像検査ではMRIや超音波画像診断装置にて腱の腫脹や炎症所見を確認することで確定診断できます。
画像検査ではMRIや超音波画像診断装置にて腱の腫脹や炎症所見を確認することで確定診断できます。
治療
- NSAIDsなどの飲み薬
- ストレッチエクササイズ
- 注射(ヒアルロン酸やPRP)
- 手術
治りにくい場合は?・・・難治性アキレス腱炎
アキレス腱炎は半年で80-90%前後の人は改善するとされていますが、一部の人は治療を受けても症状が改善せず治らない、という難治性アキレス腱炎の状態になる方がいます。
難治性アキレス腱炎にかかってしまうとストレッチや一般的な痛み止めなどでは十分に改善しません。
そのような難治性アキレス腱炎に対して、最近になって新しい治療が開発され注目されています。
アキレス腱炎では小さな血管と神経が一緒になって増えて痛みの原因になっていることが知られており、この異常に増えた新生血管を標的とした運動器カテーテル治療が効果的であることがわかってきました。ご興味のある方は一度整形外科外来を受診いただき、運動器カテーテル(奥野医師)外来へご案内させていただきます。
難治性アキレス腱炎にかかってしまうとストレッチや一般的な痛み止めなどでは十分に改善しません。
そのような難治性アキレス腱炎に対して、最近になって新しい治療が開発され注目されています。
アキレス腱炎では小さな血管と神経が一緒になって増えて痛みの原因になっていることが知られており、この異常に増えた新生血管を標的とした運動器カテーテル治療が効果的であることがわかってきました。ご興味のある方は一度整形外科外来を受診いただき、運動器カテーテル(奥野医師)外来へご案内させていただきます。