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スポーツ整形外科の主な疾患:ハムストリング付着部炎

東邦大学整形外科 客員講師 奥野祐次

ハムストリング付着部炎は主にランニングやサイクリングなどでの酷使によって生じる臀部の痛み(坐骨結節の痛み)を特徴とした疾患です。大腿後面にある半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋(これらの総称をハムストリングと呼びます)の付着部に繰り返し生じる微細な損傷が原因と考えられています。長く座っているときの痛みやスポーツ時の痛みが主な症状です。治療としてはストレッチや薬剤内服などの保存的治療が主になります。

症状

主な症状は座っているときやスポーツ時の臀部の痛みです。座った状態で座面にぶつかる骨の部分(坐骨結節)に違和感や痛みが生じます。ランナーであれば負荷を上げた時に痛みが増す、あるいは痛みのために負荷が挙げられないなどの症状があり得ます。また深くかがみこんだ時にも痛みが生じることがあります。また、ハムストリング付着部炎では瘢痕組織が生じ、近傍を走行する坐骨神経に沿った放散痛を生じさせることもあります。

リスク因子(これらが当てはまると、この病気にかかりやすい)

  • ランニング、サイクリング、ジャンプ、キック動作の繰り返し
  • 過去にハムストリングの怪我の既往
  • 過去に何らかの下肢の怪我とそれによる筋のアンバランス、筋の硬直
  • 加齢

診断

問診により痛みの部位や性質、これまでの症状の変化などを聞くことに続き、身体所見として坐骨結節に圧痛があるかどうかを調べます。また画像検査ではレントゲン検査により、臀部痛を生じさせる他の原因(変形性股関節症など)の有無を調べます。MRIによりハムストリング付着部にどの程度の損傷が生じているかを評価することで診断します。

治療

初期の主な治療は安静とハムストリングのストレッチ、および理学療法士などの指導の下、適切な筋への出力(筋力トレーニング)になります。痛み止めなどの内服治療は対症療法にはなりますが、根本的な治療とはなりません。
手術の選択肢もありますが、復帰までに長期を要するため一般的ではありません。手術療法としてはハムストリング付着部を切断し新たに止めなおすというテノトミーと呼ばれる方法があります。

治りにくい場合は?・・・難治性ハムストリング付着部炎

一部の人は治療を受けても症状が改善せず治らない、という難治性ハムストリング付着部炎の状態になる方がいます。難治性ハムストリング付着部炎にかかってしまうとストレッチや一般的な痛み止めなどでは十分に改善しません。
そのような方に対して、最近になって新しい治療が開発され注目されています。
ハムストリング付着部炎では小さな血管と神経が一緒になって増えて痛みの原因になっていることが知られており、この異常に増えた新生血管を標的とした運動器カテーテル治療が効果的であることがわかってきました。ご興味のある方は一度整形外科外来を受診いただき、運動器カテーテル(奥野医師)外来へご案内させていただきます。

お問い合わせ先

東邦大学医療センター
大橋病院 整形外科

〒153-8515
東京都目黒区大橋2-22-36
TEL:03-3468-1251(代表)