膝鏡視下手術
前十字靭帯損傷
前十字靭帯(ACL)とは
大腿骨(太ももの骨)の後方から脛骨(すねの骨)の前方にあり、大腿骨に対して脛骨が前方に移動したり、回旋したりすることを制御しており膝関節の安定性を担っています。
受傷機転
スポーツ外傷の中でも頻度が高く、特にサッカー、バスケットボール、バレーボール、柔道、スキーなどでよく起こります。ジャンプの着地やターン・カッティング動作中に膝を内に捻ることで生じ、膝が抜けた感じがします。
症状
急性期:受傷直後は疼痛・腫脹のためにスポーツ復帰は困難となります。また、半月板損傷や他の靭帯損傷を合併していることもあり、伸展障害(膝が伸びない)を起こすこともあります。
慢性期:膝の回旋不安定性によって膝がガクッと抜ける(膝くずれ)ことがあります。膝崩れを繰り返すことで2次的な半月板損傷や骨軟骨損傷を生じることがあります。
慢性期:膝の回旋不安定性によって膝がガクッと抜ける(膝くずれ)ことがあります。膝崩れを繰り返すことで2次的な半月板損傷や骨軟骨損傷を生じることがあります。
診断
- 徒手検査
膝のゆるみを用手的に判断します - 画像検査
レントゲン、MRIを用いて骨・靭帯の評価を行います。 - アルスロメーター
脛骨の前方移動量を計測し左右の膝を比較します。

正常なACL
大腿骨後方から脛骨前方に走行している靭帯です
大腿骨後方から脛骨前方に走行している靭帯です

ACL損傷のMRI
正常ACLと異なり、靭帯の走行が不明瞭となり、関節内は血が溜まり腫れます
正常ACLと異なり、靭帯の走行が不明瞭となり、関節内は血が溜まり腫れます
手術適応
まれに前十字靭帯が損傷していても装具を装着しスポーツ復帰可能な場合があります。
しかし
しかし
- いつ膝崩れを起こすか分からない不安感(apprehension)が強い
- 頻繁に膝崩れを生じスポーツパフォーマンスが落ちてしまう
- 今まで通りスポーツを行いたい、またスポーツ復帰をしたい
手術までの流れ
受傷後は疼痛や炎症により膝の可動域や筋力が十分でない事が多いため、術前にリハビリを行います。機能が回復し患者様と十分に相談した上で復帰時期などを考慮して手術を決定しています。
手術手順
- 採腱
- 再建靭帯作成
- 骨孔作成
- 再建靭帯固定
当院の手術について以下で説明します。

当院での関節鏡システム
手術は直径4mmの関節鏡を用いて行います。

- 2カ所の小さな切開から関節鏡を挿入し手術を行います。
- 脛骨内側の3cmの傷から腱を採取します。

1.採腱
- 半腱様筋腱(ST)、薄筋腱(G)
脛骨に付着しているハムストリングの一部を用います - 骨付き膝蓋腱(BTB)
膝蓋腱の一部を用います
半腱様筋腱が十分な長さ採取できた場合、薄筋腱は用いません。
2.再建靭帯作成
採取した腱を2分割し、それぞれ2重折りにして腱を作成します。
3.骨孔作成
ACL再建術には1重束再建法と2重束再建法があります。
正常なACLは前内側束(AMB)、後外側束(PLB)の2つの束でできています。そのため元々のACLにより近似させるため、大腿骨と脛骨に2つずつ骨孔を作成し再建します(2重束再建法)。
また、大腿骨側の骨孔作成にもいくつかの方法があります。
正常なACLは前内側束(AMB)、後外側束(PLB)の2つの束でできています。そのため元々のACLにより近似させるため、大腿骨と脛骨に2つずつ骨孔を作成し再建します(2重束再建法)。
また、大腿骨側の骨孔作成にもいくつかの方法があります。
- 経脛骨法
脛骨の骨孔を利用して大腿骨側の骨孔を作成する方法です - 経ポータル法(in-side out 法)
膝の皮膚切開部(ポータル)を利用して大腿骨骨孔を作成する方法です - out-side in法
特殊なガイドを利用し、外側から大腿骨に骨孔を作成する方法です

図の位置を目標として前内側束[AMB]と後外側束[PLB]の骨孔を作成しています
4.再建靭帯固定
作成した骨孔にそれぞれAM束とPL束を通して一定の張力で固定します。

再建されたACL
後療法、リハビリ
術後1日 -15°~90°の範囲で可動域訓練を開始
術後2日 関節内のドレーンを抜去
術後7日 1/3荷重を開始(半月板縫合を行っていない場合)
術後2週 2/3荷重を開始
術後3週 全荷重開始
術後4週 伸展0°を目標
術後4ヶ月で筋力評価を行い健側の8割程度の筋力があればjog~runを許可します。
術後5ヶ月で各々のスポーツ開始(ノンコンタクトの範囲で)
術後6ヶ月で再度、筋力評価を行い競技復帰を目指します。
術後2日 関節内のドレーンを抜去
術後7日 1/3荷重を開始(半月板縫合を行っていない場合)
術後2週 2/3荷重を開始
術後3週 全荷重開始
術後4週 伸展0°を目標
術後4ヶ月で筋力評価を行い健側の8割程度の筋力があればjog~runを許可します。
術後5ヶ月で各々のスポーツ開始(ノンコンタクトの範囲で)
術後6ヶ月で再度、筋力評価を行い競技復帰を目指します。
文責 望月 雄大
半月板損傷
半月板とは
大腿骨と脛骨の間にあり膝への荷重を分散させるクッションの役割があり、膝の屈伸でスムーズな動きを助ける三日月型の軟骨組織です。
半月板損傷の原因
スポーツなどにより膝を捻ったり衝撃が加わったりする事で受傷する場合と、加齢により変性断裂する場合があります。
前十字靭帯損傷に合併する場合も多いです。
前十字靭帯損傷に合併する場合も多いです。
症状
半月板損傷により屈伸時に痛みや引っかかり感(catching)が生じたり、曲げ伸ばしができなくなったりします(locking)。
半月板損傷の形態
損傷の形態は様々です。
治療
保存療法と手術療法があります。
保存療法では内服やヒアルロン酸注射を行います。
保存療法に抵抗する場合には手術療法を行います。
手術の場合、半月板縫合術と半月板切除術があります。
保存療法では内服やヒアルロン酸注射を行います。
保存療法に抵抗する場合には手術療法を行います。
手術の場合、半月板縫合術と半月板切除術があります。
半月板切除
高齢者の半月板損傷の場合、損傷部の部分切除を行い形成を行います。
半月板縫合
半月板は膝のクッションと安定性の機能がある組織のため、半月板がなくなると2次的な軟骨損傷や変形性膝関節症が進行する可能性があります。そのため残せる場合はできるだけ修復・縫合を行うようにしています。
後療法
損傷形態、縫合の種類にもよりますが術後早期に可動域訓練を開始し、術後2wから部分荷重を行い術後4wで全荷重を開始しています。