前期研修プログラム概要
目的と特徴
本プログラムは小児科専門医も目指す医師のための最初のステップとしてgeneral pediatricsの基礎を習得するために作成・実行されるものである。特徴としては小児の特性(内科との決定的な違い、および小児をとりまく環境(家族など))を十分理解してもらう点に重点をおいている。
プログラム管理運営体制
東邦大学医療センター大橋病院小児科のスタッフ会議にて、本プログラムの管理、運営を検討する。必要に応じて研修協力病院の指導責任者の参加を求める。プログラムの内容や運営に問題が生じたときは合議のうえで修正や変更を行う。
教育課程
研修医配置予定
東邦大学医療センター大橋病院においては、小児科病棟に配置される。指導医のもとで小児病棟の患者を担当し、必要な検査や外来診療、保健所健診にも関与する。参加施設における配置は、各病院の指導責任者の指示に従う。
到達目標
本研修プログラムは日本小児科学会が平成14年に改訂した小児科医の到達目標に基づき構成され全国レベル以上の教育効果を期待する。
■行動目標
〔経験すべき診察法・検査・手技〕
■行動目標
- 小児重要疾患(common disease)を理解し、適切な身体診察を行うことができる。
- 診断のための適切な検査を選択・施行し、結果を評価できる。
- 鑑別診断と重症度の評価ができる。
- ◎初期治療を的確に行うことができる。
〔経験すべき診察法・検査・手技〕
- 小児科特有の問診法により簡潔かつ十分な情報を得ることができる。
- 小児特に乳児・幼児に対して必要以上の不安を与えずに十分な身体診察を行える。
- 尿、便、嘔吐物の評価ができる。
- 小児科特有の胸部レントゲン、超音波所見を評価できる。
- 典型的な心電図、脳波を理解できる。
- 乳児の計測、採尿、静脈・毛細管採血ができる。
- 鼓膜検査、眼底検査ができる。
- 予防接種における皮下注射が安全に行える。
- 乳幼児に点滴ラインがとれる。
- 喘息発作時の酸素吸入、エアゾール吸入ができる。
- ◎胃洗浄が行える。
- ◎腰椎穿刺が行える。
- 乳幼児に対する気道確保、バギング、人工呼吸、心臓マッサージ(小児は成人ほど気管内挿管の機会は多くないが方法は十分理解しておく)が行える。
〔経験すべき症状、病態、疾患〕
小児科一般重要疾患(common disease)に対応できる基本的な診察能力(態度、知識、技能)が修得されたかを評価する。病棟看護師長、診療チームメンバー、病棟医長、外来医長それぞれを対象とした評価表を使用する。
- 体重増加不良
- 発熱
- 下痢(白色下痢、粘血便、腐敗便)
- いつ乳、嘔吐
- 吸気性喘鳴(クループ症候群)
- 呼気性喘鳴(小児喘息)
- 大泉門膨隆
- けいれん(熱性けいれん、小児てんかん)
- 腹痛(虫垂炎を含む)、便秘症
- 発疹(アトピー性皮膚炎、ウイルス性発疹症)
- ◎リンパ節腫脹
- 発達遅滞
- 脳性麻痺
- 脱水(急性胃腸炎、アセトン血性嘔吐症)
- 異物誤飲(たばこ)
- ウイルス性感染症(麻疹、風疹、水痘、ムンプス、手足口病、伝染性紅斑、ヘルパンギーナ、突発性発疹、インフルエンザ、伝染性軟属腫、ウイルス性髄膜炎)
- 細菌感染症(肺炎、溶連菌感染症、伝染性膿痂疹、SSSS、化膿性中耳炎、亀頭包皮炎、化膿性髄膜炎)
- マイコプラズマ肺炎
- 川崎病
- ◎ダウン症候群
- ◎自閉症
- 乳幼児健診(保健所)
- 予防接種
- ◎へき地小児医療(希望者)
- ◎療育医療、遺伝相談(希望者)
小児科一般重要疾患(common disease)に対応できる基本的な診察能力(態度、知識、技能)が修得されたかを評価する。病棟看護師長、診療チームメンバー、病棟医長、外来医長それぞれを対象とした評価表を使用する。
勤務時間
研修期間中の勤務時間、休暇、当直に関しては東邦大学医療センター大橋病院の規定に従うが、勤務時間は原則的に午前8時50分から午後5時である。しかし症例検討会(Ground Round)、抄読会、朝処置番などは時間外にも行われる。上級医とともに小児病棟・救急外来の当直にあたり、小児救急疾患への対応を学ぶ。研修協力型病院における勤務時間は、各病院の規定に従う。
教育行事
- 総回診
毎週水曜日午後3時から。担当医として受け持ち患者の説明を行う。 - 症例検討会(GR)
毎週水曜日16:30~。主に研修医が先週からの入院患者の呈示と検討(文献的考察を含む)を行う。 - 抄読会
GR終了後より、海外研究論文や総説を中心に簡潔に報告・検討する。研修医に関しては受け持ち患者に関連したテーマやトピックス、また小児の発達についての課題を与え、文献的にまとめて発表する。 - 病棟入院症例検討会(チャート回診)
毎週月・火・木・金(午後4時30分~)、土(午後1時30分~)に入院症例について治療経過など検討する。 - 研修医症例発表会
ほぼ毎月1回。東邦大学医療センター大橋病院の研修医が、交代で自分の担当した症例を発表する。 - 講演会
年に2~3回(目黒区小児臨床懇話会、山の手小児臨床懇話会)院外講師による教育講演や症例検討を地域小児科医会の先生方と行う。
指導体制
本プログラムの最終的な指導責任は、東邦大学医療センター大橋病院小児科の指導責任者にある。研修医は診療チームに配属され、指導医のもとチームの一人として指導を受ける。チーム長以外のメンバーからも指導を受けるが直接的な指導責任は指導医にある。研修協力病院における指導体制は、各病院で決定する。