医療関係者の方へ

はじめに

関節リウマチをはじめとした膠原病は、適切に治療されなければ生命予後、機能予後に深刻な影響を及ぼします。幸い近年のリウマチ学の発展は目覚しく、治療法も格段に進歩し、多くの膠原病患者さんの生命予後と機能予後は著明に改善しています。治療法の進歩に伴い治療開始時期、すなわち早期診断と早期治療がますます重要になっています。
当診療科では「膠原病をきれいに治す」を常に心がけています。そのためには地域の先生方と密に連携して早期診断と早期治療を実現すること、全身性疾患であることから他の様々な診療科と連携し、さらには慢性疾患であるためにリハビリテーション、メンタルケア、介護医療など広範な部門のスタッフとともに全人的なチーム医療を展開することに邁進しています。

関節リウマチ、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)の診療

当科では60カ所以上の関節部位の触診をルーチンで行っています。さらに日本の先駆けとして超音波検査機械を導入し、関節病変の精査を行っています。これにより関節滑膜炎・腱鞘滑膜炎の有無や程度、骨びらんや関節液貯留などを知ることができ、現在の関節の痛みが炎症によるものか、現在の治療が適切なのか、または強化すべきなのかを判断する上での重要な材料となります。
生物学的製剤治療において国内の指導的役割を果たしており、グローバル治験や臨床試験にも数多く参加しています。リウマチケア看護師による専門的で丁寧な自己注射指導も好評です。さらには整形外科との定期的なカンファレンスを通じて、機能向上を目指した手術も最適なタイミングで施行出来るように心がけています。診断未確定の関節炎や早期の関節リウマチの患者さんに限らず、難治性の患者さんも遠慮なくご紹介下さい。

全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎・多発性筋炎、血管炎の診療

これらの膠原病においては副腎皮質ステロイドが今でもほとんどの患者さんに使用されています。しかし当科では、「膠原病をきれいに治す」観点から、副腎皮質ステロイドの使用を最小限にとどめ、その代わりに初期治療から免疫抑制薬の併用を原則としています。その結果として、副腎皮質ステロイドの副作用の大幅な軽減のみならず、入院期間が半分に短縮、再発・再燃の減少につながっています。膠原病患者さんの生命予後にもっとも重要な臓器である肺に関しては医局を共にする呼吸器内科と密に連携して、間質性肺炎や肺感染症の克服に取り組んでいます。そして日本呼吸器学会から発行される診療の手引き・ガイドラインの策定にも日本リウマチ学会を代表する立場で参画しています。

入院診療の実際

診断確定と治療導入のための入院が約半数、その他は合併症の治療や治療の見直しなどです。従来は2ヶ月以上の入院が少なからずありましたが、現在は2-6週が多く、その最大の要因は副腎皮質ステロイドの可及的速やかな減量にあります。助教、2名以上のレジデント、研修医からなるチームを2つ編成してチーム診療を行っており、さらに週2回の診療科全体でのカンファレンスにおいて診断や治療方針を討議しています。