研究

概要

QOLを重視する形成外科の取り扱う分野は多岐にわたり、研究対象も年々拡大している。Journal Citation Reportsの Impact Factor による刊行論文業績評価を、当該年度の教室自己点検、自己評価および今後の教室発展の指針のひとつとしています。

皮弁移植

新しい皮弁の開発や新たな応用を常に追求しています。基礎的には、皮弁血管解剖、超音波ドプラ検査による血行動態の解析など、皮弁による修復法を血行概念別に整理してきました。臨床的には、四肢、体幹、頭頚部など部位別、応用別特殊性を加味した各種皮弁を開発・応用しています。また低侵襲手術の概念を提唱し、主要血管を温存した皮弁や移植法の開発、必要構成成分のみの組織移動法の開発、Unit原理の皮弁外科への応用など、質の高い再建を行っています。

マイクロサージャリー

遊離皮弁移植による各種悪性腫瘍切除後再建、切断肢(指)再接着手術などを行うなかで、新しい再建法の開発、手技の工夫を行っています。超音波カラードプラを用いた皮弁栄養血管の評価、さらに内視鏡を導入した血行モニタリングや、2次元・3次元顕微鏡下でのマイクロサ-ジャリ-などの臨床応用への基礎的検討を重ねています。

頭蓋顎顔面外科

先天異常、悪性腫瘍切除後・外傷後変形、頭蓋底再建手術などに対し、ナビゲーションシステム導入による硬組織再建を行い、成績の向上を図っています。自家骨犠牲を軽減すべく、血管柄付骨膜弁・人工骨を用いた新しい再建法を開発し、臨床応用もふまえた基礎的研究を重ねています。陳旧性顔面神経麻痺に対し、新たな開発により笑いの一期的再建を行い、治療成績の向上を図り、神経再支配に関しても基礎的研究を行っています。眼瞼下垂症では、術後の肩こり等の身体症状改善に着目し、定量評価を行っています。顔面の再建では、機能・整容の両面を考慮したsubunit, miniunitを提唱、具現化しています。解剖学的知見に加え、コンピュータ解析、3次元実体モデルなどを駆使して形態の再現やシミュレ-ション評価を行い、機能面のみならず整容面での改善にも取り組んでいます。

先天異常

唇顎口蓋裂、手足の異常をはじめとする各種先天異常に対し、関連各科との協力体制のもとにチーム医療にあたり、実績を伸ばしています。その病因論的研究はもとより、unit理論を応用した新しい手術法の開発と患者生涯にわたる総合的治療を目指しています。

境界領域

漏斗胸、髄膜瘤、胸骨縦隔炎、各種悪性腫瘍切除後欠損等に対し、根治性と低侵襲のバランスを兼ね備えたより良い再建法を常に模索し、それらの長期フォローも多角的に行っています。また、関連学会等を通してチームアプローチの重要性に言及しその普及に努めています。近年、高齢化や生活習慣の変化により褥瘡、難治性潰瘍や下肢虚血症例が増加し、その治療が注目されています。当教室においても、フットケア外来の開設、チーム医療による下肢救済や、多血小板血漿療法の臨床応用および基礎的研究による集学的治療に取り組んでいます。

ケロイド、肥厚性瘢痕

ケロイド、肥厚性瘢痕の予防および治療はもとより、アポト-シス、マトリックス分解酵素発現性などにつき、免疫組織学的検討解析を介し、病態究明に関する研究を病院病理・病理学講座、医学研究科先端医科学研究センターと共同で行っています。分子レベルでの解明により、瘢痕組織の増殖拡大を人為的に制御する基礎的実験系の確立、さらにはその臨床応用が期待され、今後の発展が望まれます。

レーザー治療

Q-swアレキサンドライトレーザー、Q-swルビーレーザーなどによる皮膚良性色素性疾患(太田母斑、外傷性色素沈着、扁平母斑など)、Vbeam色素レーザーによる血管病変(単純性血管種、苺状血管種、毛細血管拡張症など)の治療とその臨床検討を行っています。

再生医学

骨膜弁とハイドロキシアパタイトによるcustom-madeハイブリット型人工骨の開発・臨床応用・基礎的研究を行っています。今後長期的な組織学的検討、新生骨の三次元的解析、強度の評価、骨新生に関する免疫組織学的・分子生物学的検討、遺伝子レベルでの解明、蛍光抗体法や、抗STRO-1抗体を用いた骨膜由来骨細胞の検出、証明などについての検討も念頭に開発を進めていく予定です。

美容

顔面のanti-aging、しわ、しみ、たるみ、眼瞼下垂などに対する評価と美容外科形成術を行っています。高齢化社会を控え、QOLの向上を目指すレーザー治療や、ケミカルピーリング、軟膏等による形成手技的anti-agingのみでなく、ロングパルスアレキサンドライトレ-ザ-(GentleLASE)による医療用脱毛も、年々需要が高まっています。また、高度肥満に対しての治療も需要が高くなり、行っています。

形成外科 教育・研究業績 データベース