医療関係者の方へ

泌尿器がん

当科で重視しているのは、患者さんの身体にできるだけ負担をかけない「低侵襲」の治療です。
豊富な知識と熟練した技術をもつ医師が、患者様お一人お一人の状態に合わせた適切な治療を選択させて頂きます。

副腎腫瘍

低侵襲な腹腔鏡下副腎摘除術を実施しております。
高度な周術期管理を要する褐色細胞腫・パラガングリオーマの手術も他科連携の上で実施しております。

腎がん

低侵襲な腹腔鏡下根治的腎摘除術を実施しております。小径腎がんに対しては開腹腎部分切除術や腹腔鏡下腎部分切除術を実施しております。
また、大きな腎がんや下大静脈内に腫瘍栓を有するような難治症例も手術可能です。

膀胱がん

膀胱がんでは膀胱筋層までを切除するきちんとした経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を実施しています。高グレードの筋層非浸潤性膀胱がんに対してはセカンドTURBTも積極的に実施しています。

表在性膀胱がんに対する経尿道的膀胱腫瘍一塊切除

表在性膀胱がんに対する標準的治療は経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)です。内視鏡にて腫瘍を細かく切除して取り出す方法であり、病理診断を厳密に行うことが困難です。当院では表在性膀胱がんに対し、可能な限り経尿道的膀胱腫瘍一塊切除(TURBO : Transurethral Resection of Bladder Tumor in One-piece、通称ターボ)を行っております。腫瘍を一塊で切除可能であり、病理診断にて腫瘍深達度、腫瘍断端陰性かなどの評価が正確です。

Transurethral resection in one piece (TURBO) is an accurate tool for pathological staging of bladder tumor

膀胱がんに対するphotodynamic diagnosis (PDD)

5-アミノレブリン酸 (5-ALA)を用いた光線力学診断photodynamic diagnosis (PDD)の有用性が実証され、保険適用になりました。
膀胱がんの手術の際、これまでの内視鏡では確認することが困難であった小さながんを、赤色に蛍光発光させることで、見落しを減らし、より確実に切除することが可能となりました。膀胱がんに対する内視鏡による手術の際に、この光線力学診断を用いることにより、手術後のがんの再発を減少させることが期待されています。

筋層浸潤がんに対しては抗がん剤治療と膀胱全摘を組み合わせた治療のほか、がんが小径単発で水腎症や広範囲の上皮内がんを伴わない場合には患者様のご希望に応じて抗がん剤と放射線治療による膀胱温存療法も検討しております。

前立腺がん

前立腺がんの診断目的の前立腺針生検に際し、新病院ではMRI画像と超音波画像をフージョンして生検を行える最新機器を導入しております。早期前立腺がんの患者様に対しては開腹手術の他、大森病院泌尿器科の先生方のご協力を得ながらロボット支援下前立腺がん手術を大森病院で行なっております。また放射線治療として、新病院では最新のIMRT(強度変調放射線治療)が導入されております。

精巣がん

抗がん剤治療は勿論、抗がん剤治療後の後腹膜リンパ節郭清術など高度な手術も実施しております。

腎尿管結石

外来日帰り手術の体外式衝撃波結石破砕治療(ESWL)は最新式のStorz Medical社 (スイス) のモデュリスSLX-F2を導入しております。
内視鏡手術では最新の細径軟性尿管鏡(オリンパス社製URF-P7、UVF-V3)を用いた経尿道的結石砕石術 (f-TUL) が実施可能です。

また、都内で3病院目となる腎尿管結石治療用の最新のレーザー装置「Quanta Litho」を導入し結石治療がさらに安全確実に行えるようになっています。経皮的腎尿管結石砕石術 (PNL) やPNLとf-TULの同時手術も実施可能です。

前立腺肥大症

当院ではホルミウムレーザーを用いた経尿道的前立腺核出術 (HoLEP) を積極的に実施しており、100gを超える大きな前立腺肥大症でも取り残しなく安全に治療を行います。

前立腺肥大症に対するHOLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術)手術

この手術は内視鏡を尿道から挿入し、ホルミウムレーザーを前立腺の内腺と外腺の間に照射して剥離し、前立腺肥大結節を全て取り除きます。核出といいます。核出された組織は、膀胱内へ移動させモルセレーターという機器を使用して吸引して体外へ除去し手術を終了いたします。

従来からある、経尿道的前立腺切除術(TURP)手術は、前立腺肥大組織を電気メスで削りとる手術です。削る操作を繰り返す必要があり、大きな前立腺肥大では出血が多くなります。このHoLEPでは、TURPと比べて出血量を少なくすることが可能になります。

下部尿路機能障害(排尿機能障害)

排尿機能外来にてさせて頂きますので、病診経由でご紹介ください。

下部尿路機能検査(urodynamic study )

実際の排尿機能・蓄尿機能(下部尿路機能)を客観的に評価するために行われるのが尿流動態検査です。尿流量測定や残尿測定、膀胱内圧測定・内圧尿流検査があります。

神経因性膀胱

教授である関戸の専門分野であり、尿流動態検査に基づいた診断と治療を行います。新病院では最新式の尿流動態検査装置を導入しました。

過活動膀胱

難治性過活動膀胱に対する仙骨神経電気刺激療法が可能です。

難治性過活動膀胱に対する仙骨神経刺激療法(Sacral Neuromodulation:略称SNM)について

SNMとは、仙骨神経を電気的に刺激することにより尿失禁の症状改善を目的とした最新の療法です。海外では20年程前から実施されており、既に広く普及しております。本邦では2017年9月に難治性過活動膀胱の適応となりました。費用について 国民健康保険が適用されます。また高額療養費制度の対象となります。
手術について
手術は2回麻酔をかけて行います。最初の手術でリード線のみ挿入し 1~2週間、体外式の試験刺激装置をつないで治療の効果を確認します。 効果が認められた場合のみペースメーカのような小型の刺激装置をおしりに 植え込む手術を実施します。効果が認められないと判断された場合はリード 線を抜いて、手術前の状態に戻します。
効果について :米国臨床試験の結果では術後6ヶ月で50%以上の改善が見られました。

難治性過活動膀胱、神経因性膀胱に対するボツリヌス毒素(BoNT-A)膀胱壁注入療法

抗コリン薬や他のその他の治療法で効果が得られない難治性過活動膀胱に対するボツリヌス毒素膀胱壁内注射療法が保険適応となります。

この治療法は、膀胱鏡を用いて膀胱の筋層にボツリヌス毒素を注射します。麻酔は、脊椎麻酔、全身麻酔、膀胱局所麻酔のいずれかを行ないます。膀胱の筋肉にボツリヌス毒素を約20~30箇所注射します。手術時間は30分程度です。 一回の治療で治療効果は約6~12ヶ月持続すると考えられます。欧州と北米で行われた第皿相試験の結果(対象は尿失禁を伴うOAB)は尿禁制率は,プラセボ6.5%,BoNTA 22.9%であった(北米第皿相試験)。キング健康調査票,QoL上でもプラセボに比べ有意な改善効果が示されている。効果の持続は中央値で7.6ヵ月。6ヵ月未満が34%,6~12ヵ月が 37%,12ヵ月超が29%でした。

低活動膀胱

教授である関戸はこの領域のオピニオンリーダーの一人であり力を入れている分野です。

女性泌尿器疾患

女性医師(金野)による専門外来を設置しております。
Cine MRIなどを用いた正確な診断を心がけています。さらに、新病院では4-Dの経会陰式エコーが可能な最新式の機器を導入、診断や骨盤底筋訓練への応用を行っています。腹圧性尿失禁の治療ではTVT手術、骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱など)の治療ではTVM手術(経膣的ミニマルメッシュ手術)、LSC(腹腔鏡下仙骨膣固定術)を実施しています。

【TVT手術】
腹圧性尿失禁の治療の中部尿道スリング手術のことで腹圧がかかったときだけに尿道を締めるようにする手術です。尿失禁が重症な場合や骨盤底筋訓練の効果が得られない場合に行います。
TVT手術は細いメッシュのテープが中部尿道後面~恥骨後面~恥骨上皮下にU字型に留置される手術です。
開腹手術などの既往がありTVT手術が困難である場合は中部尿道~閉鎖孔~大内転筋直下の皮下にテープを留置するTOT手術を行います。

【骨盤臓器脱】
骨盤臓器脱とは女性特有の病気で、本来女性の骨盤内は骨盤底筋群(筋肉や靭帯)によって支えられています。この骨盤底筋群が出産、加齢、肥満や慢性の咳などの常に腹圧がかかる状況等で緩んでしまい骨盤内の臓器(膀胱、子宮、直腸、小腸)がだんだんと下がってきて、場合によっては膣から出てきてしまう状態です。脱出する臓器によって膀胱瘤、子宮脱、小腸瘤、直腸瘤と呼ばれ、骨盤臓器脱はその総称です。
症状としては骨盤臓器脱特有の症状(膣内にものがおちてくるような違和感や陰部になにか触れる)とそれに伴い排尿に関する症状(頻尿、排尿しづらいなど)や排便に関する症状(便秘など)が起こります。

診断
【cineMRI(動的MRI)】
骨盤臓器脱の診断のために撮像する安静時から腹圧をかけた状態までを動的に撮影するMRIです。骨盤内の下垂の状態(膀胱、子宮、直腸)を一元的に評価することができます。また骨盤臓器脱の原因となっている軟部組織(筋肉や靭帯)の評価にも有用といわれています。

【4D経会陰超音波】
会陰部から超音波プローベを軽く押し当てて画像を撮影する簡便で侵襲性が少ない検査です。
骨盤臓器脱における脱出臓器・脱出程度の診断や腹圧性尿失禁における膀胱頚部の可動性や開大度などを評価するために用います。
さらに4Dプローベを用いることにより骨盤臓器脱や腹圧性尿失禁の原因となっている骨盤底の損傷部位の同定に有用といわれています。

経会陰超音波による骨盤底の評価

治療
骨盤底筋訓練や膣内装具(ペッサリー)などの保存的治療と手術に大別されます。
骨盤臓器脱の重症度や症状、年齢や身体状況など総合的に考え治療を選択する必要があります。
当院では経腟的にメッシュを挿入するTVMと腹腔鏡を用いてメッシュを挿入するLSCを実施しています。
【TVM(経腟的メッシュ手術)】
経腟的にメッシュを挿入し下垂した臓器をハンモック状に補強する手術です。再発率が低く、子宮を摘出する必要がないため侵襲性も低く主に膀胱が下垂しているタイプの骨盤臓器脱が良い適応とされています。
近年欧米ではメッシュに関連した合併症が高いとの報告により実施されなくなりましたが、本邦での合併症の率は欧米と比較してかなり低く、一般的に実施されている術式です。
当院ではより侵襲が少なく合併症も少ない手術方法として改良型TVM手術(Uphold型)を実施しております。

【LSC(腹腔鏡下仙骨腟固定術)】
仙骨膣固定術は膣壁をプラスチックの一種であるポリプロピレンの糸を編んで作成した骨盤臓器脱手術専用のメッシュシートを用いて膀胱と直腸に挟まれた膣管をはさんで固定した後、仙骨(おしりの骨)に吊り上げて固定する方法です。腹腔鏡を用いて(お腹を開けずに大きさが5 mm~1.5cm程度の穴を4箇所あけ、そこからカメラで体内をテレビモニターに映し出し、モニターを見ながら行う手術方法です)行います。TVMに比べると手術時間は長くなりますが、再発率が低くどのようなタイプの骨盤臓器脱にも対応が可能で、開脚制限のため経腟手術が困難な方でも可能です。