AYA世代のがん患者さんの苦痛をやわらげ、治療後もその人らしい人生が送れるようにサポートすることを目的として、様々な医療者が集まったチームです。

AYA世代は、多くのライフイベントが控えており、がん治療と普段の日常生活を両立することはとても大切なことです。そこで、AYAサポートチームは、AYA世代がん患者さんの身体症状や心の悩みを緩和し、安心して、がん治療に向き合えるようにサポートします。加えて、AYA世代がん患者さん個々の背景を理解し、親や子どもなど周囲の方への伝え方、子どもを授かる可能性を残すことや性生活への影響、学校生活や仕事の悩み、脱毛や手術後の外見変化への対応、経済的支援や社会保障制度、遺伝にまつわる不安など、適切なメンバーから専門的支援が受けられるように調整します。また、必要時には、AYAサポートチーム以外の医療者や医療チームの支援を受けられるように調整します。

中村 陽一 （緩和医療専門医）、竹林 ちあき（血液・腫瘍科）、小林 秀行（泌尿器科）、梅村 なほみ（産婦人科）、齋藤 淳一 （精神神経科）

節原 光江 （がん看護専門看護師）、祖父江 由紀子 （がん看護専門看護師）、川又 里美（乳がん看護認定看護師）、永野 妙子（不妊症看護認定看護師） 、安宅 大輝 （不妊症看護認定看護師）

原田 香奈

近藤 亜紀子

主原 翠

総務課

AYA世代の患者さんは、学業や仕事、結婚、育児などAYA世代ならではのライフイベントと向き合いながらがんの治療をしていきます。安心して治療を続けるために、がん治療医の立場で治療の選択肢や副作用との付き合い方などを検討し、多職種によるチームメンバーと連携して一緒にサポートしていきます。

がん治療の内容によっては、将来の妊娠・出産が難しくなることがあります。そこで、将来的に挙児を希望するがん患者さんに対して、がん治療前に、自分の子どもを授かる可能性を残す「妊孕性温存」という方法があります。具体的には、カップルであれば胚（受精卵）、男性であれば精子、女性であれば卵子や卵巣組織を凍結保存するといった選択肢があります。AYA世代のがん患者さん1人1人に合った妊孕性温存の方法についてご提案させて頂きます。

AYA世代には特有のライフイベントがあり，多くの方がこころの悩みを抱えています。特に、がんと診断された患者さんは早い時期より治療に向き合っていく必要があり、こころの悩みを少しでも「緩和」して治療に専念できるようにしなければなりません。精神腫瘍医は患者さんやご家族の抱える悩みや問題を包括的にアセスメントしたうえで心理・社会的な介入を行い、必要に応じて薬物的な介入を提案させて頂きます。

　「身体症状に対する症状緩和」を主に担当していますが、緩和ケアの役割は「症状緩和」と「意思決定支援」にあり、病気が疑われる段階からさまざまな介入をおこなっています。病気の種類をとわず外来・病棟で診療をおこなっていますので、患者さん、ご家族がつらいことがあれば、つらさに焦点をあてた医療・ケアを提供させて頂きます。

悪性疾患に罹患したAYA世代のがん患者さんやご家族の「困りごと」の内容は、疾患や治療に関連したことだけではなく、就労や就学、家族や医療者とのコミュニケーション、外見のこと、妊孕性やセクシュアリティなど多岐に渡ります。何をどこへ相談したらよいか分からない方もおられますが、がん看護専門看護師が患者さんの「困りごと」の全体像を把握し、適切なメンバーから専門的支援が受けられるようコーディネータ—としての役割も果たしていきます。

がん治療により生じる外見の変化はさまざまで、脱毛や皮膚変化・術後の創部・体重減少などに直面します。特に、AYA世代にとっての身体的変化は友達や周囲の人の反応が不安といった気持ちに繋がり、自分を肯定的に捉えられずにいることがあります。乳がん患者さんをはじめとして、外見の変化を補完することに加え、外見変化に起因する気持ちの辛さを和らげることや、社会生活の中で、その方らしく過ごせるようにアピアランスケアについても支援させて頂きます。

患者さんは、妊娠の可能性を残す方法である「妊孕性温存」について考える中で、気持ちが多様に変化していきます。その気持ちに配慮して、具体的な方法や費用についての情報提供を行います。また、妊孕性温存後の妊娠・出産のタイミングや方法、性生活への影響についても分かりやすく説明していきます。AYA世代の患者さんがその人らしい選択ができるように、その人の生き方を尊重した支援をさせて頂きます。

MSWは社会福祉を専門とし、疾病により生じる様々な生活上の課題解消に向けて、患者さんや家族の支援を行います。そのため「患者さんは、多様な社会生活上の役割を担っている」という視点を大切にしています。AYA世代は社会保障制度の狭間で公的サービスの対象外になることも多いです。それでも、患者さんの気持ちに寄り添って、心理的な支援させて頂くこともMSWの役割の一つと考えています。患者さんが疾病を抱えながらも自分らしい生活が営めるよう、尽力致します。

思春期の患者さんに対しては、自分の考えや思いを聞きながら、医療者や親に言いづらいこと、聞けないことを仲介して、治療や闘病に主体的に取り組めるように支援いたします。また、AYA世代のがん患者さんのお子さんには、親の病気や治療、病状について子ども向けに理解できるように支援し、面会時や死別時のサポートなども行わせて頂きます。

がんの中には、生まれながらに特定のがんを発症しやすい体質から生じる遺伝性腫瘍があります。遺伝性腫瘍とわかると、将来の新たながん発症リスクを考慮した予防策を立てられるなどのメリットがあります。しかし、一方で兄弟姉妹や将来の子どもなど家族への影響が懸念されることがあります。遺伝にまつわる相談や遺伝カウンセリングにおいて、AYA世代のがん患者さんの希望に応じた遺伝医学的情報の提供や継続的な心理社会的サポートを行わせて頂きます。

なお、AYA世代がん患者さん（がんの既往がある方や、がんの可能性が少しでもある方も含む）には、苦痛や不安等に関する質問票（大森病院トータルペイン・スクリーニング票【AYA（15～19歳）】）をお渡しすることがあります。その結果を確認して、AYAサポートチームについて、こちらからご案内させて頂くこともあります。