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ハイブリッド手術室完成で、より精度の高い低侵襲外科治療の提供

 2018年3月に東邦大学医療センター大森病院にハイブリッド手術室が完成しました。
 ハイブリッド手術室とは高性能な透視装置と手術寝台を設置し、通常の定型的手術とカテーテル治療を統合して行うことができます。血管造影検査や3次元CT撮影などが可能な最新鋭のPhilips社製の天井吊り下げ型放射線透視装置とMaquet社製の万能手術台を採用しました。透視装置は高度な透視性能を備えたもので、体内の対象物を鮮明な画像で大きな液晶モニターに映し出します。万能手術台は多様な手術において、患者さんの体位を最適にします。両者を連動させることにより治療中の安全性と利便性を格段に向上させ、通常の定型的手術とカテーテル治療を統合して行うことができます。患者さんの病状にあわせて、ある部分は通常手術、ある部分はカテーテル治療といった、お互いの利点を存分に発揮しハイブリッド手術が、とても清潔な空間のなか、極めて高い精度で最新の医療技術に対応することが可能となります。
 心臓血管外科領域では、Endovasculer Surgeryの代表である胸部および腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術が、更に安全かつ迅速に高精度で実施可能となります。ステントグラフト内挿術とは人工血管と金属製の骨組み(ステンレス、ナイチノール)で構成され、これを鼠径部の小さな切開創から血管内から動脈瘤に留置するのがステントグラフト内挿術です。胸部であればTEVAR(thoracic endovascular aortic repair)、腹部であればEVAR(endovascular aortic repair)と呼ばれます。
 動脈瘤自体は体内に残りますが、ステントグラフトを留置することにより動脈瘤内への血液流入を防ぐことで動脈瘤に血圧がかからなくなるため動脈瘤の破裂を防ぐことができます。胸部あるいは腹部を切開しないため全身への負担は極めて小さく、高齢者や併存疾患(低心機能、腎障害、呼吸障害など)により従来の開胸もしくは開腹による人工血管置換術が困難な場合でも施行が可能でありますのでご相談ください。ステントグラフト内挿術の欠点は動脈瘤の位置および周囲の血管性状により施術不能な場合があること、長期成績が不明であることが挙げられます。近い将来、TAVI(カテーテル的大動脈弁置換術/大動脈弁をカテーテルで治療する侵襲度の低い術式)の開始を計画しており、ハイブリッド手術室の更なる活用が期待されます。

文責:心臓血管外科 医局長

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東邦大学医療センター
大森病院 循環器内科

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